シェア
カラダ のり太郎
2020年12月2日 17:30
『地獄おっさん』○ 千葉県・国道・昼山に囲まれた国道を、運転席のマサキ(20)と、助手席のコウジ(20)の二人は車で進む。マサキ「つーか、もうどこら辺で曲がればいいのか、全然わかんねーよ」コウジ「やっぱナビが無い車はダメだね」マサキ「お前、人に車出してもらってて、スゲー態度だなー」呆れた顔のマサキ。右ポケットから携帯を取り出すコウジ。コウジの右手人差し指には、大きめの指輪がはめてある
2020年12月3日 20:58
白いセダンの中に、ハゲて小太りの中年の男が確認できる。相手の女の素顔は全く見えないが、長い髪をくるくるに巻いた、今時の若い女性の様に見える。中年のおっさんが女の頭を両手でさわり、自分の顔に近づけると、ペロペロと顔を舐め回し、少し経つと自分の顔から離し、少し見つめ合うと、また自分の顔に近づけペロペロと顔を舐め回す。マサキ達には薄っすらとだが、白いセダンの車内はこう見えている。コウジ「あの二人、
2020年12月4日 15:50
マサキ・コウジ、目も完全に慣れ、その光景がはっきりと見える。二人は涙目になり、硬直する。体を窓から離し、白いセダンから自分達が見つからない様に、リクライニングシートを倒し、隠れる。マサキ「な、なぁ…」コウジ「あ、あぁ…あれは、完璧に生首だよな…」マサキ「…でも…でも違うかもしんねーよ。見間違いとか…」マサキは体を少し起こし、運転席の窓ギリギリところに目をやり、白いセダンを除く。白いセダ
2020年12月7日 16:38
○千葉県・ファミレス・駐車場車を駐車場に入れる。マサキ、車を降りる。コウジ、車を降りる際、自分の携帯を見る。電波のマークが、かろうじて一本たっている。小さい笑みがこぼれるコウジ。その時、震えた小声でマサキ、マサキ「な、な、なーコウジ、あの車、おっさんのじゃねーよな?」コウジは持っていた携帯を助手席に置くと、すぐにマサキが顔を向けている方を見る。そこには白い四駆車が止まっている。コウジ
2020年12月13日 18:23
コウジ、くわえていたタバコをテーブルに落とす。マサキ、振り返りコウジの視線の先を見る。マサキ「(呟き)は?…な、なんで?」マサキ、視線をコウジに戻す。コウジは落ちたタバコを拾い、火を消している。体は小刻みに震えている。マサキも、体振るわせ、震えて声で口を開く。マサキ「コ、コウジ。どうする? どうするよ? なぁー、なぁー」白いセダンのおっさんは、隣の隣のテーブルに座る。席に着
2020年12月15日 16:37
コウジ「ん? なんだ! なんだ!」マサキ「え? どうしたの? あのおっさん!」二人は、外に出て行ったおっさんを、ガラス越しに視線で追う。おっさん、自分の車のところで一度運転席をあけると、またスグに閉め、駐車場の中のマサキとは違う車に向かう。その車に、丁度会計を終えた老夫婦が近づいてくると、おっさんはきびすを返し、もう一台のマサキの車に近寄っていく。そしてマサキの車の周りを、ゆっくりと回っ
2020年12月18日 09:48
マサキ「え?ガム?」コウジ「あぁ。さっきおっさんが、やってたんだよ…」マサキ「マジかよ…だめだ! もう逃げよう!」コウジ「落ち着けって! もう車が使えねーんだ! 外へ出たって、ガムとってる時にぜってーやられる」二人は異常なまでに体を小さくし、小声でこそこそ話しているが、おっさんは気にも止めず、淡々とタバコを吸っている。マサキ「じゃーどうする?」コウジ「店員に言って、助けてもらおう