紫のトルコ桔梗
もう祖母がいなくなってからかなりの時が経つ
本来はとても優しい人であるのに家族がいるのに孤独だった
わたしはその当時は幼くてばあちゃんのさみしさを分からなかった
ばあちゃんにワガママばかりを言っていた
今日はばあちゃんの月命日だ
夫であるじいちゃんの月命日と続いている
ばあちゃんにさみしい思いを沢山させたくせにじいちゃんはばあちゃんがいなくなってからばあちゃんを求めていた
じいちゃんも孤独だったに違いない
昔気質の男の性なのだろうか、強がりだったのだろうか
そして母も父が旅立ち孤独を味わう
口には絶対に出さなかった…
母の矜持か
夫婦という片割れがいなくなることを思いやる
私には分からない
ただずっと心を同じ方を向き、生きて来た相方がいなくなることだけは分かる気がする
「みんな家族がいていいよな」と人を羨むわたしがいる
本当は誰しもが孤独を抱えている筈なのに
闇は深い
ばあちゃんはとても孤独だった
じいちゃんは浮気男だし
一緒に暮らす伯母夫婦とも上手く行かない
不思議なことにお金には困らない
でも心はいつもさみしさでいっぱいだった
しかも一番当てにしている二女の母は遠くに嫁いでいる
優しい母はいつもいつもばあちゃんと電話で話しをしていた
優しいはずの両親なのに伯母は夫の味方をして伯父に巻かれていただけだった
わたしは大体のことのあらましが分かって来て伯父が大嫌いになる
伯父はプライドだけが高く、伯母の財産目当てにして一緒にいるだけである
祖父母の残したものを全て湯水の如くに使い切る
父はかつて伯母を育てたのはばあちゃんだから原因はばあちゃんにあると冷静に言い放つ
それは因果応報なのか
今は伯母夫婦もいない
商売も潰し一文無し
伯母はまだ祖父母の眠る墓にも入れない
心を病んでいる従姉が伯母の遺骨を抱えている
もう十年以上経つのに
何故かわたしは伯母に似ているらしく
わたしは伯母のようにはなりたくないと意固地になり夫とはサヨナラをする
そう言えばこの他人と暮らし始めた頃に一緒にいる筈なのにとても孤独を感じたことがある
最初から心はすれ違いのまま
寄り添うことは出来なかった
それが分かってしまったのか
別に夫なんていなくても生きてゆける
母がいるから
同じ心の道を学び
一緒に歩いて来た
母だってばあちゃんの子供
ばあちゃんにもやさしさはあるはず
本来はやさしい心根の人
母が旅立ち
わたしは孤独を味わう
そう、ばあちゃんと同じように
月命日に紫のトルコ桔梗をばあちゃんとじいちゃんの遺影の前に飾る
紫は高貴な色と言われている
ばあちゃんにはお似合いだ
母が旅立って
初めてまじまじとばあちゃんの写真と母の写真を見比べて、二男が言った
「ばあちゃんは(自分の)お母さんに似ているんだね」