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十日に一度

十日に一度
いつもより朝早い電車に乗って
御魂みたま祭りに向かう

家を出る時は肌寒く
電車に乗ると汗ばんで
もうすぐ十月なのに
電車の中は皆さん半袖

家の花水木は少し紅葉こうようが始まっているのに

西へ向かう電車に乗り、今日は珍しく本を読む
友達が教えてくれた「青嵐の庭にすわる」森下典子著
「日日是好日」の映画製作に著者が携わった話しである

母と読んでいた「日日是好日」はお茶のお稽古のお話しで、著者は映画ではお茶監修となる

自分がお茶と関わり出したら今までとは違い、身近な気持ちになっている

電車の中から外の景色なんて見る暇もない
大山も富士山も探さない
面白くてページをめくる手ももどかしく読み進む
やめられない、止まらない

ふと気づくと電車は終点に着いている
流石に歩きながらは読めないのでリュックに本を仕舞う

乗り換えのためJRのホームに向かうと
そこにはお笛を持ったわたしのお茶のお師匠のすずさんが電車を待っていた

ええ⁇彼女はもう湯河原にいるはずの時間なのに…
「電車に乗り遅れて…」
「これも神様ごと、意味がある。偶然はない」平然と言い放つ

そう言うことか、私は今まで読んで来た本を彼女に見せる
「へぇ、面白そうね」と興味を示す
彼女は「貸して」と言おうとして裏を返すと図書館のシールが貼ってある
「なんだ〜、借りた本か…」

「お茶を始めると見方も変わってくるでしょう」

お茶の話しをして、私を育てようとしてくれているすずさんの本気の気持ちを聞かされる
「これからゆっくり進むと二十年は掛かるから」
いつからなんちゃってではなくなったのか…
お茶は嫌いじゃないからいいけれど
二十年後、わたしは偉いばあさんになっている
そこまで生きるのか?

彼女は初めて来るお友達を連れて行くと約束をしていた
「うぅ〜ん、湯河原駅で待っていると思う」
ちょっと緩いところがあるけど、そこも彼女の性格と認めてしまう

「私はお笛の演奏があるから、カナちゃん後は頼んだよ」
そう彼女は御魂祭でお笛の仲間と演奏をする
ええ〜、初対面の人じゃん
仕方ないなぁ、まぁいいけれど…偶然はないからね

案の定、初めましての彼女のお友達が電車を降りると駅前で待っていた
駅で出会った知人と四人でタクシーで神様の元へ向かう

私の十日に一度の日は始まった



なんてこった
でも縁がある人だった

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ノリかな
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