「分からないことは何でも聞いて」と言われても、何を聞いたらいいかすら分からない現象
私は、冒頭からいきなり偉そうなことを書くが、小学生中学生時代に、相当なレベルの優等生だったので、お勉強に関して分からないことがあれば聞いてすぐ理解できたし、そもそも聞く必要もそんなになかった。
周りの友達に算数などの問題を聞かれて教えていても、何でそれが分からないのかなあと友達のことが不思議で仕方なかった。私の教え方が悪かったのかも知れないけど、ある所までいくと、全く分からないという状態になって行き止まってしまう人もいるらしいことを何となく知った。
授業で先生が教えていることを、1回聞いてすぐに分かる人と分からない人がいて、分からない人の中には何回伝えても分からない人がいたり、何が分かっていないかも分からなくて、何を聞いたらいいかすら分からないという人がいることは私も理解していたが、どうしてそんなことになるのかが分からなかった。生意気なガキだ。
進学校の高校に入って、一気に成績は急降下し、私の神童伝説はそこであっけなく終焉したのだが、それでも、時間をかければある程度理解できた。
恋愛に夢中で集中できないとか、遊びたいとか、勉強が嫌という理由(言い訳)でお勉強が分からないことが多くなっていたが、少なくとも自分の理解できていないことは分かっていたし、分からないことを質問する要点は持てていた。と思う。そして遊びに夢中で質問する暇もあまりなかった。
社会人になってからは、専門的な知識は使っているうちに頭に入るし、調べれば何でも分かる世の中になっているので調べさえすれば答えを導け出せる自信はある。
今の自分の「分からない」は、ただ単に無知なだけか、興味がない、忘れている、覚えられないという点からきているから、思い出したり、質問したり、調べれば「分かる」のだと思って生きていた。
例外として人間の心は分からないことだらけで、よく分からん人たちの集まりだと思って割り切って生きているし、そのことがそれほど支障がない程度に他人に興味がない。そして、自分自身のこともよく分からないままご機嫌に生きている。それはいいとして。
しかし、先週、初めて、「分からないことは何でも聞いて」と言われて、分からないことだらけなのに、絶対分からないといけないことなのに、何を聞いたらいいのかすら全く分からないという状態に陥ってしまったのである。
これは生まれて初めてレベルである。
衝撃だった。
先月から、住宅ローンの説明や申込、契約が続いているが、これが全く分からないのである(笑)。
大丈夫かコイツと思われないように「(笑)」を文末につけてポップな感じにしてみたが、余計にバカっぽくて逆効果かもしれない。
まず、「金利」が分からない。
私の得意な科目は数学だったのに、たくさんの並んだ数字が全く分からない。漫画ウシジマくんを読んで、風俗堕ちして借金を返すとか海に沈められるとか悪徳な金利の行く末はある程度学んで理解していたが、一般的な金利の仕組みのことについては何も知らないに等しかった。
ローンの説明をしている、なんちゃらコミュニケーションという会社の山寺宏一(仮名、顔も声も髪質もよく似ている)が明るく「何でも聞いてください」と言うが、何を聞けと言うのか。
まず、山寺宏一よ、お前の会社は何をする会社なのだ?
家主の仲介の不動産会社から「ローンについてはこちらで」と突然紹介されて現れたなんちゃらコミュニケーションという会社の山寺宏一。
君は私の何を担当するの?
山寺宏一のスピードある仕事さばきにより、よく分からないまま話は進む。
私は、色んな契約や説明を受ける際、担当者に質問攻撃を徹底的にする嫌なお客さんである。
この前も、父親のガラケーをスマホに変える契約について行って、「ここの値段はどうしてこうなるんですか?」「初めてスマホ割というのと、その他の割引とどれくらい差が出るか見積もりを出してもらえますか?」「この割引が終わるのは何年何月ですか?」「このオプションは外してもらえますか?」「MNPは自由にできますよね。解約金も最近1000円くらいになりましたよね。他にau独自の縛りとか違約金はありますか?(auを辞める気満々なことを隠さない)」などなど、店員さんを困らせてしまうくらい、色々調べてのぞむし、質問してかみ砕いて理解しながら進めたい派である。
最初に提示された金額が毎月7000円だったのに最終的に2000円台になったから、携帯屋さんと保険屋さんとインド人の最初の金額提示は信用しないのが私のモットーである。
住宅ローンとなると金額がもっと大金になるので、油断せずにのぞみたい。なのになのに、ちょっと自力で調べてみたら意味不明過ぎて、説明してもらう日にいっぱい質問しようと決心しのぞんだのに、なのに…。
さっそく「この数字は何ですか?」と聞いたら、「店頭表示価格から常にこの%がマイナスされます」と言われた。
どこのお店に表示されるのだろうとぽかーんとなった。
また、別の話題の時に、
「23年ローンと聞きましたが、どうして30年になっているのですか?」
「もう少し、月々の返済額を増やせるから額を上げて早く返したいんですけど」
と言うと、
「この額にしておいて繰り上げ返済をした方が、かくかくしかじかでお得なんですよ。」と山寺宏一の重要なかくかくしかじかの部分が頭をすり抜けていった。
「…という訳で、住宅ローンの方は0.82%、諸費用ローンの方は0.72%となっています」
「住宅控除の適用されない物件となっていて…」
「団信は女性特有の方がお得で…」
「収入印紙か電信扱いか…」
ちょちょちょっちょっと待ていー!
何もかも分からん。
心の中の千鳥の「ちょっと待てい!!」ボタンを連打して、ノブが鳴りっぱなしである。
諸費用ローンを頼んだ覚えはないぞ。
住宅控除って何?
適用されないのはなぜ?
耐震なんちゃらって?
分からなくて聞いてみたら、もっと分からない言葉で説明されて余計に迷路だったから何も聞けなくなってしまった。
そして、そのうち何を聞いたらいいのか分からなくなり、私はすっかり無口で内気なキャラになり、ドラえもんが生まれた。
ドラえもんを書いて現実逃避をしていたが、これじゃまずいと思って、1回目の説明会を終えてから、家でPCで最低限のワードをいくつも調べたが、やはりそれを説明するために聞きなれないワードがたくさん並びまくって何がなんやら。
そもそも仕組み自体が分からん。
脳が拒否反応を示し始めている。
そもそもこの手の話題が好きじゃない。興味ない。
いや、これから私が借りるお金の利息に対して興味ないはないぞ。興味を持たねば。責任を持たねば。理解せねばー!
あぁ、誰?私に催眠術をかけているのは…眠い…あなたはだんだん眠くなるー…。チーン。
しっかりと睡眠がとれてお肌の調子は良いが、ローンの仕組みについては分からない日々が続いた。
中学生の時の友達の顔が浮かぶ。
塾の講師のバイトをしていた時のBクラスのやんちゃな中学生たちを思い出す。
みんなに謝るよー、あるよねー、分からん過ぎて何聞いたらいいかも分からんこと。
阿部寛よ、出てきてくれ。そして東大に行けるレベルの頭にしてくれ。私をやる気にさせてくれ。
目覚めてくれ、中学の頃の、かつて天才だった俺。
どうやったって興味が持てず、調べる気も起こらず、さっぱり分からない世界に迷い込んで抜け出せないまま、私は大きな借金を抱える事になるのだろうか。
大阪湾に沈められるのだろうか。
しっかり学べとか、オススメの本の紹介とかやめて。読む気もない。
何とか分からないまま安全に事を終えたい。その方向で考えており、実は、すでにこれを脱却する裏の手を見出せたのだが、それはまた今度に。
とりあえず今の私は、大阪湾に沈んでいない(笑)。