サンティアゴ・デイ【ポルトガルの道 休息日#2】
カミーノ・デ・サンティアゴの巡礼路、ポルトガルの道280㎞を無事歩き終え、サンティアゴ・デ・コンポステーラにあるサンティアゴ大聖堂に到着。
まだまだ歩き足りない私は、さらにボーナスステージとしてフィステーラまで90kmまた歩くことにしたが、サンティアゴの町で休息日を2日間とることにした。いろいろとやりたい用事が15個。1日目にいくつかミッションをクリアしたが、残りすべてのミッションを1日でやり切れるかどうか、二日酔いのフラフラの朝寝坊からスタート。
とにかく昨夜は飲み過ぎた。
9時くらいに起きて、シャワーを浴びて、フェデリコとセミナリオの近くにあるアバストス市場で軽く朝ごはん。フェデリコもボーナスステージを明日から一緒に歩き始めるので、今日はのんびりと過ごすらしい。私はたくさんのミッションがあるので、本日のやりたい予定をお伝えして、「Enjoy your rest day!」と言い合って別れた。
メルカドで久しぶりに平べったい桃を見かけたので購入。これまで春にスペインに来るたびによく見かけて食べていたのだが、美味しいのなんの。ヨーロッパで食べるフルーツの中で1番好き。
「蟠桃」と言って日本では高級品にあたる桃の種類らしいが(日本で食べたことはない)、スペインや他のヨーロッパで安くで売っているので見かけるたびに買ってしまう美味いやつ。次のボーナスステージの旅のお供にしようと思う。
それから、意気揚々と、徒歩片道30分の距離にあるショッピングモールに向かう。ちょっとこういう都市の楽しみから離れた旅をしていると、ショッピングモールに行きたくなって仕方ない、大阪のシティーガールの習性。何を買うという訳でなくても、モールで洋服やコスメや雑貨を見るだけで満たされる。今回の世界多分一周旅の中で、インドやヨーロッパのあちこちで、どうしようもなく煌びやかな都市感を求めてムズムズしてくる欲求が自分の中にあること、それをショッピングモールでのウィンドウショッピングが満たしてくれるという、自分の知らなかった一面を知った。いろんな国に行ってはショッピングモールにこの後も訪ねまくることになるのだが、とりあえずキリスト教の聖地、サンティアゴでショッピングモール。
心が躍りまくった。
メリノウールのタイツレギンスを数日前にまたなくしたので(干したまま出発してしまった。この後も続くけど何回やれば気が済むのかという過ち…)、H&Mで安いレギンスを買おうと思っていたが、出た!ヨーロッパの聖地PRIMARK!激安ショップがあった。PRIMARKでレギンスと、涼しげなよそ行きのトップスまでなぜか買った。レギンス5€(750円)でさすがです、我らの味方PRIMARK様。ミッション⑦はクリア。
それからサンティアゴ中心部に戻り、ブラブラお土産物屋さんを見て⑥もクリアし、次のミッション、郵便局へ向かった。
↑このお店がサンティアゴで1番センスが良くてオリジナルの物を置いていてお手頃価格だったと思う。おすすめです。
マドリードから郵便局留めで送った荷物をいったん受け取りに行く。(荷物が多かったので、サンティアゴの郵便局預かりでマドリードから荷物を送っていた。荷物の多い旅人にはおすすめ。でもまあまあの値段が必要。)
それから、またその荷物と宿から持ってきていた荷物とを合わせて、今度は巡礼事務所へ向かう。ダンボール箱を持ってウロウロしていたら、顔見知りの巡礼仲間に声をかけられて、「そんなに買い物したのかい?」など冷やかされたが、これは3〜4日の次のボーナスステージを歩くのに不要なものたちである。フィステーラの道は相当ハードで山をかなり登って進む道らしいので、荷物は更にもっと少なくしておこうとクリスティーナと確認しあっていたため、着替えやシャンプー類も極限まで減らし、3〜4日分以外は全て、巡礼事務所1階のロッカーへ詰め込んだ。
靴下も下着も4日過ごすのに、1枚ずつに減らした。(洗濯して乾く想定。パンツは2枚。)そこまで減らして何とか7kgにしたので、明日からの歩き旅は、さらに身軽に歩けるはずだ。そして、明日からの3泊する宿はクリスティーナが予約していた宿と同じ場所をネットで予約したので、これでミッション⑨,⑩,⑪もクリアである。
さあ、急いで次のミッションへ。
フォルクが待っている素敵なカフェへと向かう。
ドイツ人のフォルクは本当にいい人ですごい人で変な人なのだが、とにかくカミーノを愛しているのである。フォルクはジョージクルーニーに似ているということでジョージと呼んでいたし、私のことはアンジー(全く似ていないがアンジェリーナジョリーが由来)と呼んでくれていた。
彼は銀行員というお堅い仕事をしている50代の普通の男性だが、長めの休暇では必ずカミーノの道を歩いている。
そもそもの始まりは2005年。
カミーノデサンティアゴを歩きたい、サンティアゴデコンポステーラまで歩きたいという気持ちを抱くところまでは、私やその他大勢の巡礼者と同じである。
ところが、その次が違う。
ドイツ、ケムニッツにある自宅から歩いて行きたいと思ったこと。
道は繋がっているし、ヨーロッパは陸で繋がっているから、歩き続ければいつか辿り着くだろうと考えたフォルクは、2005年に自宅からサンティアゴに向けて歩き始めたのである。有給休暇で20日間くらいずつ、毎年歩く。行けるところまで行って、続きは翌年にそこからまた歩くという、私と同じように、区間を分けて毎年少しずつ歩くスタイルをなんと2017年まで13年続け、サンティアゴに辿り着いたという、本当にすごくて変な人である。ちなみに銀行員は辞めていない。
その長い期間をかけて歩いてきた道のりの一部であるスペインの中央部で、2016年に私の道と重なって、楽しい仲間と出会って一緒に過ごした。
2017年にゴールしてからも、私と同じように、別のルートを休みのたびに歩きに来ていて、2023年の同じタイミングでフォルクも私もサンティアゴにいる。面白い偶然により、私とフォルクの道がまた重なったというわけである。
偉大なる巡礼者であり、リスペクトに値する社会人有給休暇旅人界の神でもある。
これまでの旅の話などに盛り上がる。
フォルクのすごいところは、「今ルピュイの道のここら辺にいるよ」と伝えたら、「近くに君の好きな店があるよ」と案内してくれて、それがボリューム満点のケーキのある素敵なカフェだったことがある。ピンポイントで、道の情報と私の好みとを考えた上でのアドバイスを即座にくれた。
最高のペレグリノ(巡礼者)、最高の社会人バックパッカーである。
今回さらにフォルクを好きになったところがあるのだが、手作りスタンプを作っていることである。
カミーノの巡礼は行く先々でスタンプを集めて進むのだが、なんとフォルクは自分で自分のスタンプをオーダーメイドで作っていたのである。
「Falk
Chemniz-Santiago de compostela
2005-2017
3465km」
ちゃんと貝殻のモチーフまで。
手作りするのが好きな私のツボをつきまくる作品に、感動した。「こういうことする人、大好き!」と褒めちぎりまくり、私のクレデンシャル(巡礼手帳、いわゆるスタンプ帳)の、サンティアゴ大聖堂のスタンプの横に押させてもらった。
今回はイギリス人の道というルートを妻のエリカと歩いてたらしく、エリカにとっては初めてのカミーノだったらしい。1人で納得いくまで好きなことをしたので、これからは時々(時々というのがポイント)、妻と一緒に歩こうかなと思ったらしい。エリカも素敵な女性だった。
フォルクは、私が最も理想とする旅人かも知れない。突拍子もないようなアイデアをやり遂げるところとか、自分だけが楽しむアイテムを作っちゃうところとか、憧れてしまう。日頃ドイツの銀行で真面目に働いているというところもいい。
いっぱい刺激をもらって、すごくパワーをもらった。とってもいい時間になって良かった。
そんな訳で、⑫⑬の両方をクリア。
あとは、歩いているといつものイタリアーノおじさんズに会ってワインを奢ってもらったり、大聖堂前でコリアン夫婦に会って、一緒に喋って記念撮影をして、また会おうねと言って別れたり、割と忙しい。道端でヘビの宿で一緒だったマリア・アントニエッタ・アンドレファットに会ってフルネーム言ってあげて大笑いしたり、トルティージャをくれたアメリカ人のジェーンにも会ったし、もう顔見知り全員に会ったかも。
その合間に、フィステーラを歩いた後にアンダルシアに行くことにしていたので、その飛行機だけをとりあえず予約した。その後のことはまた考えればいいか。⑭は諦めて⑮だけクリア。
なんだか1人でゆっくりしたかったので、1人でバルに入ってみた。
ガリシア州名物のRaxo(ラショ)を食べることにした。ニンニク味の豚肉とニンニクポテトフライで、好きな物に好きな物を足して大好きな物になってる料理。
しかし、二日酔いの体に色々と用事を詰め込んだので疲れてしまい、半分くらいテイクアウトして宿に帰ることにした。
明日から始まるボーナスステージ、フィステーラの道は、初日から山道で30km超えで、普通の人のスピードでも9時間くらいかかるらしい。荷物を13kgから半分ほどの7kgまでに減らしたから、だいぶ歩くのは楽になると思うが、珍しく少し不安である。大丈夫かなぁ。なぜかすごく心配になっている。
ルピュイの道、ポルトガルの道と、5月の初めからずっと歩き旅をしてきたが、5月最後の3日間、最後のカミーノ、歩き旅になる。
気合いを入れつつ楽しみたい。靴下とかブラジャー、服など全て1着ずつに荷物を減らしたが、天気は割と雨模様なようで、洗濯物が乾かない可能性が出てきた。何だか落ち着かなくて眠れず、ベッドで横になりながら、クリスティーナとメッセージのやり取りをする。
「私、かなり荷物を減らしたよ」
「私も」
「私、明日から3日間、走ることにしたから。走りたいの。やりたいことをやると決めたから。」
「私は今まで通り、あちこちで食べたり休憩したりしながらゆっくり進むよ。」
「お互いに最後だし、やりたいカミーノにしよう。楽しもうね。明日宿で待ってるね。宿でいっぱい喋ろう。」
「いいね。ブエンカミーノ!」
「Buen camino」
不安は消えた。
さあ、また新しい旅の始まりであり、最後の3日間の歩き旅。
楽しめますように。
ボーナスステージ、フィステーラの道に続く…