見出し画像

また一つ、特別な場所が増えた旅 【山ごもりの夏休み⑧】

ソロキャンプを終えて、山を降りました。


行きは35kgの荷物でへばりながら下ったキャンプ場への道のりも、帰りは食料がお腹に入って背負うものは軽くなっているせいか、自分が自然に溶け込め逞しくなったせいか、予想以上に楽に、1時間ちょっとかけて登ってターミナルまで帰ることができた。
なんなら、ホテル立山のレストランでうな重をほおばり元気がみなぎった後、帰りのバスの時間まで待つのが嫌になり、下るだけだし天狗平まで歩いてみようか、と思いついてしまってバスに乗らずバスの駅を1つ分、徒歩で下りることにした。
巨大なバックパックを背負い、40分程、山を見ながら緑あふれる道を歩いて下った。その道でもまた最後に雷鳥が挨拶をしに来てくれた。

画像14

画像1

画像2

画像3

この道中からは剱岳が見えるスポットがあるよ、と室堂で道を聞いたおじさんに教えてもらって楽しみにしていたが、やはりツルギくんだけが霧で隠されるという意地悪にあった。まあいい、また来るねツルギくん。
(↓真ん中のちょうど隠れてるところに剱岳…)

画像4


ソロキャンプの6日間を思い出しながら歩いていると、楽しかった気持ちしか湧いてこない。寂しいとかは全くなかった。
あの女、40過ぎてソロキャンプしてるぞ、という痛い視線を感じたら過ごしにくいなぁ…と始める前は少し思っていたはずだが、やってみると全くそんなことは感じなかった。人の目を気にし過ぎると生き辛いし、やりたいことをやるなら人の目なんて無視するに限る。
そもそも山では、人とそんなに会わなかったし、ソーシャルディスタンスはめちゃくちゃとれていて、パーソナルスペースも何十メートルもとれていた。
(↓真ん中の小さな青いテントが我が家。マジでソーシャルディスタンシング過ぎる)

画像6


短パンが乾かなくて山用のタイツだけで過ごしていてそのままトイレに行ったり、気分は欧米人、見た目は江頭2:50で過ごすくらい私の気持ちは開放されていた。
山小屋でアルバイトをしているお姉さんが、私がテントを撤収しているところへ来て、おしゃべりできたこともいい思い出になった。「あの雷雨の夜も本当にここで寝たの?」と驚いていた。ええ、寝たどころか12時間くらい熟睡しましたよ。
また、私の帰りのバックパックを見て、「こんな小さい荷物で来たの?テントが入ってるとは思えないね」と言われたのには笑った。35kgもあったんだけど、荷造りも私と同じく着痩せするタイプで小さく見せれるのだった。

画像11

画像5


毎日、飯作りに結構忙しかったし、熟睡できたし、思ったほど本は読めなかったが、登山系の映画を何本か、山に囲まれたテントの中で見る、という素晴らしいシチュエーションで見ることができた。映画のストーリーよりも、現地での撮影の大変さや俳優たちのしんどさばかりに目が向いてしまったけど。


夜行バスに乗り、電車に乗り、バスに乗り、山を上り下りして辿り着いたテント場でも、孤独はなく、いつもと同じ、一人暮らしの家での私とあまり変わらないくらい(テントの中は自分の部屋と同じくらい散らかっていたし)、心地よいマイペースの時間だった。
(↓荷物をひっくり返した直後のテント内。まだパンが6つある)

画像12


違うのは圧倒的な自然。マスクをしていなくても思い切り吸える空気。と言っても、現実は、ちょっと歩くと、下界でマスクをしている時よりも呼吸しづらいくらい空気が薄いし、地獄谷から噴き出ている火山ガスで時々目が痛い。それでも気持ち良いのだった。
室堂に来たのは2回目だが、着いた日は、立山の山並みを見ても「わぁ、きれい!」と言いつつ、どれも同じただの「山」だった。写真を撮ってもどれがなんという山なのかは分からなかった。
今回、別山を経由して剱御前まで登り、大日岳経由で下ったり、また別の日に一ノ越まで登り、雄山の手前で引き返したものの、立山の山並みの左端と右端を間近にこの目で見た。そのおかげで、ただの同じ山ではなく、知った山、知った場所になった。初日に撮った写真を見ても、どの山かある程度、区別がつけられる。右端と左端くらいだけど。

画像8


画像7


帰り際に何度も振り返り、立山連峰を見たら、それはもう私の知っている場所になり、あそこに立ったんだ、という愛着がわいた。
こうやって私には、世界にまた一つ、特別な場所ができた。
たった6日間だけど、前回、観光で来た時とは、見える世界が違った。
私の旅は、歩くこと、滞在することが自分にあっているんだと思う。歩くことでその地を記憶できるし、滞在することで通り過ぎるだけでは感じられないものを感じられる。
雨雲レーダーをチェックし、しょっちゅう空を見て、風向きや風の強さを考えて生活していた。雷が光ってから音が聞こえる時間を数えて距離を出す小学校で習った式を思い出して測ったりもした。実際よく分かってはいなかったけど。
素人なりに自然を観察するのが日課だった。これは大阪育ちの人間にとっては、まるで別の惑星のようでもあった。

画像9

画像13


あの山の麓で山に抱かれて眠った日々。
どこへ行こうと私は私のペースで過ごせるのだということをまた思い知ってしまった。
壇蜜が、「1人で生きていける自信ができたから結婚した」とこの前話しているのを読んだが、私もまた1人で生きていける自信がさらにできたし、旅人としてのステージが1ランク、アップしたような気がする。
これからもどこへだって行けるし、どこでだって、どんなことがあったって私は私でいられるんだと思えた旅だった。
ありがとう、立山、そして雷鳥たち。
また近いうちに必ず会いに来ます。

画像10

ソロキャンプデビューではあったけど、普通のゆるいソロキャンよりも登山キャンプに近く、ジャンルとしては全く別物のような気もしたので、それについてはまた書こうと思います。
とりあえず、久しぶりに寝袋で縮こまって寝るのではなく、思う存分ベッドの上で大の字になって寝相悪く眠れるのがとても幸せを感じる富山のホテルの夜。






この記事が参加している募集

いいなと思ったら、よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは、世界2周目の旅の費用に使わせていただきます!いつか1周目で残した宿題をしにいきます。