バンコク・ウォーキング【タイランド#3】
長旅の始まりは割と忙しい日々の連続だった。
旅に出て早くも1週間が経ち、何となくペースが掴めてきたし、旅の勘も戻ってきた。
この1週間で、宿の鍵を3回失くしかけて、3回とも思いもよらぬ場所から出てきたりした。
1回目はロッカーの鍵をベッドの下に落としていて、2回目はカードキーの宿に移ってそれに慣れなくてなぜかコンセントプラグのミニジップ袋の中に綺麗に収納していて(危うくおしっこを漏らしそうなタイミングで見つかった)、3回目はスコータイのバイクの鍵を絶対失くしてはいけないと思い過ぎて油断して部屋の鍵をまたどこかへやって、同室の無口なイタリアーノを巻き込んで大捜索して、お風呂グッズのポーチの中から見つかった。
何かを失くしては探して見つけている。
「I found!」がこの旅で今のところ一番自然と出る英語となっている。
3つの宿に泊まってそれぞれで毎回鍵を失くしかけているから、そろそろ打ち止めにしたい。
鍵はカラビナで繋いでチャトチャックで買ったiPhoneやカメラを入れる紫のポシェットに繋いでおくこと。
カードタイプは全てiPhoneカバーのポケットに入れておくこと。
この2点を決定した。
私の旅はこういうルールが増えていくことである。
iPhoneは何がなんでも絶対失くさない。
旅の勘が戻ってきたというのは、元来私は常に物を失くしては探しているようなどんくさい人間であり、日本ではそれがうまく誤魔化せているのだが、誤魔化せないくらいになっているのが戻ってきている証拠。あまり歓迎したくはないが、私とはそういう人間だったのだと改めて感じられている。
スペインを800km歩いたカミーノの旅に出て以来だろうか。
旅では基本的にやたらと歩くようになった。
4kmなら1時間歩けば行けるな、と考える頭になってしまっている。
バンコクは電車もバスもそこら中を走っているというのに、時間が限られている場合と暑すぎる場合、夜道が危険そうな場合以外は基本的には歩くことにした。
バンコクに着いて翌日は、寝坊して宿の朝ごはんを食べ損ねて、狂犬病等の予防接種も午前の部も受け損ねた。
損ね過ぎて笑ったが、朝は弱いので仕方ない、と鏡に写っている顔がパンパンに浮腫んでいる知らない日本人らしき女を見て嘆いた。
適当なところで朝昼兼用のご飯を食べて、午後から狂犬病と破傷風などのワクチンを「イタイ?」「イタクナイヨ、コワクナイ!」と日本語ペラペラのタイ人に打ってもらい、その後歩いてエラワンの祠というパワースポットへ行った。
今まで知らなかったが、エラワンという場所はやたらとすごいパワースポットらしい。
かなりの確率で願い事が叶う場所で、叶ったら必ずお礼をしに行かないとバチが当たるらしくお礼をしにきている人が多いとのこと。
旅の間の健康と安全をお願いに来てみた。
花と線香を買って見よう見まねで右回りに4回お願いして回った。ヒンズー教の神、ブラフマーが祀られている。ブラフマーはキン肉マンでいうところのアシュラマンみたいに顔が4つある。
あまりに金ピカのブラフマーが眩し過ぎて、あ、これもお願いしておこう、と思いつきそちらのお願いも長めに時間を割いた。
「退職金がたくさん入りますように。」
この神聖なる場所で、退職金のお願いをする旅人は今までどれくらいいただろうか。
珍しい願いだろうから、ぜひとも私の願いを優先に叶えてほしい。
ブラフマーには具体的な金額と念のためバーツ換算もして伝え、それ次第で旅の安全とか充実度が変わってきますんで、とも伝えた。
叶いますように。
それから有吉の番組でチェックしていたjodd fairsというナイトマーケットにナイトなのに16時過ぎに到着してしまい、あまりお店が開いてない中、少し待ってフライドチキンとクリスピー豚を食べた。
テレビで見るよりサイズは小さく、そんなにめちゃくちゃ美味しいわけでもなかったがまあ達成できて良かった。
次の日もまたその次の日もやたらと歩いた。カオサンロード付近の宿から、小さい川沿いの店で49バーツ(200円)のパッタイを食べていたら、目の前をワニが泳いで行った。
それから、チャオプラヤ川まで行き川沿いをてくてく歩いた。川沿いと言っても町中を歩いて時々川に出るような道。
途中、大学に入って、大学の食堂のウォーターサーバーで水を補給した。
バンコクのどちらの宿にもホットもアイスも出る飲料水のサーバーがあったので、1リットル入れて街歩きに出ている。30℃を超える暑さなので水も減ってきたタイミングだったので助かった。
タダの水を飲んで歩きまくって、とんだ貧乏バックパッカーだなと思いつつ、シャレたレストランに入って、えらく高いオシャレな飲み物を注文した。
ナイスビュー席である。
このワットアルンの景色もドリンク代に含まれているから納得の175バーツ(700円)。
クーラーも効いておりWi-Fiも抜群だったので、のんびりさせてもらった。
それからまた更に歩いて、よく分からない小さい川沿いのマーケットみたいなのがあったから立ち寄って焼き飯を食べた。
結局こういう店のフライドライスは間違いない。
あとで調べたら、そこは中華街とインド人街の近くで、中華料理とインド料理とタイ料理のストリートだったようだ。
それでインド料理屋が多かったのねと後から納得した。
日も暮れたので先程のワットアルンの絶景ポイントに戻ってみたら、昼間は絶景を邪魔していた網が、日が暮れたおかげで見えなくなって本当に絶景ポイントとなっていた。
2日後、私の好きなクレイジージャーニーで有名な写真家の佐藤健寿氏が私と同じ場所で写真を撮っていた。
ああ、出会いたかったよ健寿に。
昨日も健寿の撮った写真を見て行きたい場所を見つけていたのに。
佐藤健寿氏の写真の方が断然かっこいいので、そちらも貼り付けておきます。
(この表紙の佐藤健寿の写真を見てため息をついていたところである。)
それから次の日はバスでチャトチャックマーケットへ行きカメラとiPhoneと小銭入れを入れるポシェットを買った。
バスはGoogleによると5分おきに来ると書いてあるのに、歩いて23分の距離を乗るため40分待った。なるほど。こういう感じね、と把握した。バスは時間通りに来ないのは当然だが、本数もだいぶ減っているらしい。やっぱり私は歩く方が性に合っている。
チャトチャックを歩いて今度は電車に乗って戻ってきて繁華街を歩いた。
クリスマスマーケットに立ち寄り、誰だか分からない人のライブを見た。そして、夜のエラワンの祠があまりに煌びやか過ぎたので、再度、退職金の件を念押ししておいた。
そんな感じで毎日2万歩以上歩いて過ごしたバンコク。
今はスコータイに移動して2泊し、1日にラーメン(名物のスコータイヌードル)を3杯食べて、自転車とバイクを借りて民生を口ずさみながら走り回って、更に今はほぼ友達のほぼ子さんの住む町へ移動している。
なかなかバタバタと移動を続けているが、ラオスのルアンパバーンまではこんな感じで通り抜けていくような旅である。移動する旅も好きだが、ルアンパバーンでは1週間ほど腰を据える予定。
睡眠時間は平均8時間を超えていて体調も問題なし。なんなら年中便秘ガールが毎朝快便。やたらと歩いて、寝る前はストレッチとスクワット30〜50回。若くない旅人は体のメンテナンスにも時間を使う。
いつものように夜中にお菓子を食べてゴロゴロはしていないが、昨夜はポテチを食べながら、宿の人たちとタイVSフィリピンのサッカーを見た。
タイがボロ勝ちしていた。
旅の方が人間らしい生活を送っている。
それではまた。