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高峰秀子を観て語る〜女だらけの夜「浮雲」 ゲスト:二階堂ふみ

好きな女優は高峰秀子さん。高峰秀子さんの映画や著書、そしてあの丸顔と佇まいの美しさ、抜群のセンスのよさと品格、器の大きい人間的魅力、その生き様にあの文才!惹きつけられて、私の高峰秀子さん推し歴も長くなってきた(何十年と高峰秀子さんを好きな方も大勢いらしての)。
第二次世界大戦で戦地に行く若者が、高峰秀子さんのプロマイドを携えて彼の地で戦死して、そのプロマイドが遺品になって高峰秀子さんの元に返ってきたというエピソードもある、戦前の子役時代からの大スターであり大女優、
高峰秀子。

今年は高峰秀子生誕100年ということで、様々なイベントが催される。1月には池袋の新文芸坐で「生誕100年記念特集 高峰秀子と名作たち」の中で、「山河あり」(1962年 監督:松山善三)を観てきた。春には日本橋三越の呉服売り場で「高峰秀子が愛したきもの」と題して、高峰秀子さんご自身の、渋ーい取り合わせの着物(紬多し)を間近で見られた。夏には、東京タワー大特別展「逆境を乗り越えた大女優 高峰秀子の美学」や、真夏に偶然通りかかった麻布十番のギャラリーの「高峰秀子の言葉展」でも高峰秀子さんの存在を感じられた。これから年末に向けて、映画の上映も肖像画展、写真展もあるそう。

https://www.takamine-hideko.jp/

女性よる女性だけの映画鑑賞&トークを、松山善三・高峰秀子の養女であり文筆家の、斎藤明美氏がゲストと共に痛快トークという企画があり応募。で当選。このイベントの第5回目は10月2日の渋谷のユーロライブで、「浮雲」(1955年 監督: 成瀬巳喜男 )上映後に、斉藤明美さんと二階堂ふみさんのトークが目玉というもの。お客さんは女性だけ。今回は二階堂ふみさんがゲストということで、高峰秀子さんのファンというよりも30代前後の二階堂ふみさんのファンらしき方々が多かった(ちなみに今までのゲストは、中井美穂さん、名取裕子さん、IKKOさん、雑誌リンネルや天然生活の編集長や編集者さんの方々)。とてもいい企画だ!個人的に「浮雲」への思い入れが強すぎて好きすぎて、30代の頃に映画館で3、4回は観ている、はず(パリに住んでいた20代〜30代の頃。パリの名画座では繰り返し繰り返し世界中の名画を各名画座で上映していて、池袋の新文芸坐でも「浮雲」の上映率が高いと言っていたけれど、パリでも昔の日本映画の中で、黒澤溝口小津に並び、成瀬の浮雲もよくよく上映していたように思う)。

30代で観ていた「浮雲」と、その約20年後!に観る「浮雲」への目の行きどころは全く違っていた。30代の頃は、成瀬巳喜男監督の大ファンで(今も)、ダメ女とダメ男のお話「浮雲」で大泣きしたくて観ていたけれど、今回は、高峰秀子演じるゆき子が、森雅之演じる富岡からどうしても別れられない様子が(男と女だからね)、あんなに不実な男なのに、、別れられない、どこまでも富岡を追ってしまうゆき子から目が離せなかった。強がりで弱く、擦れた純粋な心を持て余し、もうどうしようもなくなってしまう姿が、高峰秀子はゆき子に乗り移り演じていた。森雅之もそれに堂々受けて立って富岡という男になっていた。成瀬巳喜男監督の、世界中の名だたる恋愛映画の中でも、最高峰の映画だと思う。しびれた(泣かなかった)。

「浮雲」上映後のトークでは、実物の二階堂ふみさんがすぐそこに。お顔は小さく、大きめのパンツを履いたラフな服装で、華奢なサイズはうかがえるものの存在感は大きく美しく、自分の言葉で真摯に話せる人の印象。おふたりのトークは映画の内容よりは、主に高峰秀子さんその人と各人の仕事のお話。ホストの斉藤明美さんが話過ぎの感があり(私には)、もっと二階堂ふみさんから話を引き出して欲しかった。とりわけ映画「浮雲」の不実な男と別れられない女についてのトークをもっと聞いてみたかった。  

二階堂ふみさんは会場までひとりでやって来て、その飾らない佇まいにスタッフのひとりははじめ、二階堂ふみさんとは気が付かなかったそう。そして二階堂ふみさんの好きな女優さんが高峰秀子さんだと知って、とても嬉しく誇らしく思った。小学校1、2年生の時に同じクラスだった友人を誘いこのイベントへ。月日も思いも様々に重なり、自分にとって特別な「浮雲」の上映となった。



斉藤明美さんの、高峰秀子さんに関する数あるご著書の一冊
1月の池袋の新文芸坐で高峰秀子特集の映画上演時に、
斉藤明美さんのトークショーがあり、サインをいただいた

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