スマートウォッチ。技術者が正直に言うと
【Microsoftのスマートウォッチってあったんだよ】
実はスマホよりも古い時代、Microsoft社が出したスマートウォッチを買って使ったことがあった。Bluetoothなんかまず考えていない、USBケーブルでその頃のPCとつなげた。その時代と今の時代を同一視するのは、間違っている。が、そういうモノ好きでねぇ、というしかない。それを付けて人混みの中を歩くのは、まー、なんというかー、ビミョー、と言いますか、やっぱやめたほうがいいよな、という感じではあった。当時も。ネットで調べると、なんと、2004年だそうだ。実際、仕上げもおもちゃっぽかったなぁ(失礼)、という感じのものだ。先日、部屋の整理をしていて、ホコリにまみれ、電池も当然使えないそれを発掘したが、さすがに、今さらつける気にはならんよなぁ、画面も白黒液晶だし、みたいな、そういう感じが。。。
【2021年からのスマートウォッチ】
2021年に私が「(コロナでの重症化がわかる)血中酸素飽和濃度の常時監視に必要だから」と買ったAppleWatch/Series6は、この記事書いている2022年9月には、既に世代を2つ重ねている。しかも、世界的には最大のスマートフォンブランドとして君臨しているSAMSUNGも、Galaxy Watchも第5世代、Galaxy Watch 5が既に発表されている(2022年9月)。さらに、中国では大メーカーから弱小メーカーまで、価格・品質などを競っていて、どれもこれも日本のAmazonなどの通販で買う事ができる。千円台、という価格のものから、現状は最高級と言われるGARMIN(米国で航空業界向けGPSウォッチから始まった)などは10万円以上のものまで、様々なものがある。既にデザイン、機能として血中酸素飽和濃度計測もついていて、これで問題ないよなぁ、というものがAmazonでは5千円くらいからある。
【「腕時計(ウォッチ)」として考えると】
実際、ウォッチとして考えると、数万円、という「スマートウォッチの中級~高級品」というのは、宝飾時計などの超高級品から比べても、またバブル時代の恋人へのプレゼントという、数十万円のウォッチから見るにしても、一段から二段下、という感じがする。あくまで価格だけ見ると、だけどね。かといって、クルマと同じ価格の高価なウォッチを持っていてもなんともしっくり来ない、という「現代」という時代の流れってのもないわけでもなく。盗難などがあった場合とか、色々物騒な時代でもあるしね。
【スマートウォッチは「電池の持ち」で選ぶ時代】
この2年くらいのスマートウォッチの「低価格化」「多機能化」などの流れはすごい。特に、スマートウォッチは「見せびらかす」のは目的ではなく、あくまで「小さなコンピュータ」であって「ウエアラブル」が特徴だから、まず差がつく機能として重要なのは「電池の持ち」だ。その他の機能は似たりよったりだ。その観点から見ると、最近の中国製のスマートウォッチでも、特に数万円の上位モデルでは「必要な機能を常時働かせた上で2週間の電池持ち」が当たり前になっている。これはAppleWatchでも今のところ、追いついていない。これは大きな電池を積んでいる、ということではなく「ハードウエア」「ソフトウエア」の両方で協調したトータルの技術力の高さが現れている、と私は思う。実は電子機器は機能を詰め込むと消費電力が上がる。それをうまく制御するだけではなく、根本的に使われているチップの設計を「違う」ようにしないと、とてもじゃないがここまでの電池の持ちは得られない。電子技術者として「ローパワー(低消費電力)」は「永遠の課題で」そこに技術力の高低が如実に現れる、と言われている。
【実際に使ってみると】
実際に「2週間電池が持つ」スマートウォッチを先日手に入れた。数日使っているが、なんと3日間で電池は90%。まだまだ持つ、というのが実感できる。しかも、寝ているときも付けていて、睡眠の質なども測っているだけではなく、常時監視(もちろん、10分毎などを「常時」と言うのだが)の血中酸素飽和濃度、常時監視の心拍、などの機能も働かせたままだ。無理してこの電池の持ちが実現できる、というわけでもない。「難なくクリア」しているのは流石だ。
【技術者として見てみる】
技術者としてはこういった極低消費電力の電子機器の実現は不思議でも何でもなく「こういう作り方をしているんだろうな」という大方の予想がつくものだ。しかし、それを実現するには、これとこれが必要で。。。しかし、よくそれを揃えて実現したよな、という、そういうことになる。ここまでの低消費電力を実現するには、すばらしいチームワークと役割の明確な分割統治、など、組織の作り方まで含めた、ありったけのノウハウを詰め込んだ技術者集団が必要だ。低消費電力で名高いスマートウォッチのほとんどは既存のOSを使っていない。独自開発。そして、ハードウエアのチップも独自開発のものもあるだろう。つまりハードウエアもOSも作れる技量がある、ってことだ。あるいは、既存のハードウエアとOSでもそれを十分に使いこなすだけの熟練がありカンの優れた技術者もいるだろうし、タイムリミットも考慮したコスト計算もできる。それをクリアした人に会いたい、と思う。そういう技術者は「会社の宝」だろう、とは思うけれども。実は、「低消費電力技術」をちゃんと持つには、かなりのお金がかかるし、その環境にいて、かつ、多くの時間を使って熟練を必要とする。けっこう面倒な技術の一つでもある。技術者を雇う企業は資金潤沢である必要があるし、技術者を育てるのも時間がかかる。結果は地味ではあるが、高度な技術の1つなのだ。
そして、その技術者集団はそのノウハウを詰め込んだ新しいチップとOSの標準化と供給を始める可能性がある。そうなれば一企業ではなく、国や地域やネット上のコミュニティが束になって出現する。そうなると、他の会社の技術者集団では追いつけないほどの勢力にさえなることだろう。
【「日本の技術」を示せ】
今や、デジタル化で、壁掛けの数千円の時計から、数十万円のデザイナーズウォッチまで、デジタルで動いているのが当たり前だ。デジタルウォッチでは日本は先を行っていた時代もあったが、今は違う、というのをどうしても感じる。技術のトレンドも時代とともに変わる。それに合わせて、企業も技術者も変わって行かないと生き残りは難しい、というのは、ある意味、当たり前のことだ。願わくば、日本のウォッチ文化をこのデジタルの時代に新たに突出させて欲しい、と思うのは、私だけではないだろう。そして、それがどの地域であるにせよ、常に最先端を超えるところをウォッチしていたい、と思うのだ。