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地方創生2.0は、首都圏と地方の関係で課題を持つ人の、笑い声を作るために。

突然だけれど、Mr.Childrenで一番好きな曲は?と聞かれれば、迷わず「彩り」と答えるだろう。
中でも、好きなフレーズは?と聞かれれば、これである。

なんてことのない作業が この世界を回り回って どこの誰かも知らない人の 笑い声を作ってゆく

Mr.Children「彩り」より

自分の単純作業に意味を見出せたのは、ミスチルのおかげだった。「どこの誰かも知らない人の笑い声をつくる」ことは「課題解決」に他ならない。
いま、ビジネスシーンで問われているのも「課題解決」。どんなビジネスも、誰かの、何かの課題を解決することを、念頭に置かなければいけない。

ところで、政府の地方創生2.0は、誰の、どんな課題を解決するのか?
1月6日に発表された、次世代政策デザイン研究所「二地域居住・多地域居住に関する意識調査 報告書」をナナメ読みして、少し考察してみたい。


ちなみに地方創生2.0とは

 2014年にはじまった地方創生1.0は「人口減少や、東京圏への一極集中の流れを変えるまでには至らなかった」として、2024年12月24日、クリスマスイブに政府から発表されたのが、「地方創生2.0の基本的な考え方」

「都市」対「地方」という二項対立ではなく、都市に住む人も、地方に住む人も、相互につながり、高め合うことで、すべての人に安心と安全を保障し、希望と幸せを実感する社会を実現する

「地方創生2.0の基本的な考え方」より

当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小し ても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく

「地方創生2.0の基本的な考え方」より

 「5本の柱に沿った政策体系を検討し、2025年夏に、今後10年間集中的に取り組む基本構想を取りまとめる」とも。その柱の1つが「東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散」。

(考えられる施策)
・ 二地域居住の推進方策の具体化などによる関係人口の拡大

「地方創生2.0の基本的な考え方」より

こうしたこともあって、次世代政策デザイン研究所が「二地域居住・多地域居住に関する意識調査」を行ったのだ。

定性回答にこそ、真実がある

優れたアンケート作成者であれば、当然、仮説を立てて設計する。
質問項目には、ある程度そうした意図が入るし、当然結果は、「そうだよねえ」が多くて、「えっ、そうなの!?」はあまりないものだ。

そういう意味で、優れたアンケートほど、定性的な回答、自由回答をよく見てみたい。そこにこそ、真実が表れている(と思う)。

例えば、こんなとこ(↓)

「二地域居住・多地域居住に関する意識調査報告書」に赤線を引いてみた

二地域居住、否定的な意見もちらほら。

なぜ二地域居住が必要なのか分からない
やりたい人、受け入れたい地域だけがやるべきで、広く支援する必要はない

「二地域居住・多地域居住に関する意識調査 報告書」より

そうなのである。二地域居住で自分の課題を解決できなければ、それはあっという間に他人事で、それ以上、深まりようがないのだ。
だから、「やりたい人、受け入れたい地域だけがやるべきだ」というのは至極まっとうな意見だとも思う。

それじゃあ、二地域居住は、誰の、どんな課題を解決するのか?

「二地域居住・多地域居住に関する意識調査報告書」に赤線を引いてみた

二地域居住は、誰の、どんな課題を解決するのか?

家族の介護の問題で地元と首都圏、または全国各地を行き来している人に沢山出会う。

「二地域居住・多地域居住に関する意識調査 報告書」より

「家族の介護の問題で地元と首都圏、または全国各地を行き来する」。一番は、これなんじゃないかなあと思う。
「新しい人々との出会いが増える」「都市と地方の良いところを両方享受できる」「自然環境のよい地域で生活ができる」。
アンケートでは、二地域居住のメリットが挙げられているけれど、それはやってみての副次的な効果で、課題を解決していない。

やっぱりビジネスは、誰かの、何かの課題を解決するものでなければならない。そういう意味では、二地域居住でキラキラ生活を送るというよりも、もっと深刻な、喫緊の課題が、そこにはあると思うのだ。

とはいえ活躍してほしいのは「若者・女性」

とはいえ、である。親の介護で首都圏と地方を行き来する人たちにフォーカスしても、(まあこれ、自分もそういう境遇だから言うわけですが)全然前向きな話にならないのだ。

「地方創生2.0の基本的な考え方」にも、こうある。

魅力ある働き方、職場づくり、人づくりを起点にした社会の変革により、楽しく働き、楽しく暮らせる場所として、 「若者・女性にも選ば れる地方(=楽しい地方)」をつくる。

「地方創生2.0の基本的な考え方」より

活躍するのは「若者や女性」であってほしい。
じゃあ、私たちや、私たちの親世代は彼ら・彼女たちが活躍するために、どんなことを提供できるのか?

消費の中心は引き続き「団塊&団塊ジュニア」

人口減少で消費が減っていくという中長期的なシナリオは間違いないと思うけれど、なにも明日からご飯を食べなくなるわけじゃあない。たとえ仕事はしなくても、消費は当面続いていく。

これまで日本の消費の中心は、人口ボリュームの大きい団塊世代だった。次の支え手が団塊ジュニア。懐メロに人気漫画の続編、懐かしのお菓子やビールの復活。あらゆる復刻消費のターゲットは団塊ジュニアである。

親の介護で二地域居住の団塊ジュニアが、首都圏で消費する分を地元で消費すれば、立派な地方創生ではないだろうか。団塊世代も、子ども(団塊ジュニア)のサポートを得て、まだまだ元気に長生きしてくれれば、その分、消費は継続していく。

若者や女性の活躍を消費で支えるのが、団塊世代と団塊ジュニアの務めだともいえる。

増えているらしい「高齢女性」の首都圏流出

「住民基本台帳人口移動報告」をご覧になったことがあるだろうか。
「その県の人たちがどれだけ他県(主に首都圏)に流出しているか」も分かる。

基本的には、若い女性(20-24歳)が地方から流出しているのだけれど、最近は、地方の70歳以降の女性の流出も増えている。
...これって、もしかすると、夫(男性)の方が早く亡くなるから、一人になったお母さんを首都圏の子供が引き取るパターンなんじゃないか、とも思ったりするわけで...

二地域居住を進めないと、若者どころか、高齢者すら首都圏に吸い取られていく事態になるのではと危惧したりもするわけだ。

地方創生2.0は、首都圏と地方の関係で課題を持つ人の、笑い声をつくるために。

改めて、アンケートの自由回答を見てみたい。

「二地域居住・多地域居住に関する意識調査報告書」に赤線を引いてみた

自らの希望として異なる二つの環境のなかで生活したいと考える人と、そうせざるを得ない人で、思いも求めるものも違う。
二地域居住を決断するまでのプロセスに、複数課題や優先順位があるので、解決を促す仕組みを丁寧にデザインする仕組みが必要。

「二地域居住・多地域居住に関する意識調査 報告書」より

この回答こそ、複雑、多様化した現代社会を表していると思うのだ。
仕事と生活、時間とお金、家族と親。アンケートにも「二項対立」のいろんな問題が指摘されていた。二地域居住は何かと何かが、トレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係にあるのかもしれない。

多様化する一人ひとりの課題の「解決を促す仕組みを丁寧にデザインする」ことで、トレードオフの関係が和らぎ、二地域居住、ひいては地方創生が進むと想うのだ。

とりわけ首都圏一極集中が、流出した張本人、一人ひとりに与えた課題で切迫感があるのは、故郷で暮らす親の介護をどうするか。

政府は、地方創生2.0を「都市 対 地方という二項対立ではなく、都市に住む人も、地方に住む人も、相互につながり、高め合う」と言ったけれど、それってつまり、「首都圏と地方の関係で課題を持つ人の、笑い声を作る」ということではないだろうか。
そこまで分解してようやく、地方創生が一人ひとりの自分事になるんじゃないだろうか。そう想って、スマホを閉じました。


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NORICON@中小企業診断士
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