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ショートショート「ハチミツは甘い幻」

この小説は小牧さんの企画小説です
「ハチミツは」で始まる小品です
小牧幸助さんどうぞよろしくお願いします


ハチミツはぬるめのお湯でしばらく湯煎して
柔らくなったものを使うのが良いよ
実はねオリーブオイルでも高級なゴマ油でもいいんだけど
やはり口の中での舌辺りが甘い方が良いでしょう

カウンターに座った三輪社長はママとそんな
ひそひそ話をしていた

三輪社長が連れてきた若い連中は
他の女の子たちと腕など組んで
カラオケのジュエット曲に興じていた。

そのうち、ちょっと歳が上の2人の女の子が
にやにやしながらやってきて
「社長~あやしいぞ!ママさんとハチミツの話なんかして」
「おい!聞いていたのか?お前たち」
ふたりは顔を見合わせて笑いながら
「だってねえ、ハチミツを湯煎して、中指に付けて入れるんでしょう」
「なんだか不穏な匂いがするじゃない」
「そうよね。ただ事じゃないわよね」
2人は声を揃えて馬鹿笑いした。

そこまで聞いて、三輪社長とママは目を合わせ
「ママがさ、最近疲れのせいか口内炎が治りにくいっていうからさ
ハチミツには抗菌作用や
細胞を活性化する働きがあるっていう話をしてただけさ」

「な~んだ。てっきりねえ。あっちの話かと思ったのに、つまらないわ」
と、一気に興味が失せた様子なので、三輪社長は強引に二人の手を取り
「お前たちもちょっと座って聞けよ、いい話してやるから」
「えー!どんなお話しかしら」

「ハチミツには美容効果もあるんだぜ。
オリーブオイルに湯煎したハチミツを適量垂らして
風呂上がりの体に伸ばしながら、丁寧に塗ると
次の朝はお肌がるつるになるんだぞ。続けると宇野千代みたいに
90歳になってもつるつるさ。
背中なんか自分でできないなら僕が手伝うよ」
そういうと、
「なんだ社長~やっぱり下ネタじゃないの」
ふたりは楽しそうに笑って、また若い者たちの席に戻って行った。

ママがすまなさそうに
「ごめんなさいね。あの子たち悪気はないんです」
「いやいや大丈夫ですよ。僕だって男だから
ママさんが背中を塗って欲しいって言ったら
どこにでも飛んでいきますよ」
「あら、社長さんこんなおばさんの背中なんか見たって
いやになるのがおちですよ」
「いや~僕は62歳だから、ママさんはまだまだお若い」
そうですかと、ママは愛想笑いをした。

何度も仕事を変わり、一向に落ち着かい前夫と分かれて10年
子供を母親に預けて
この店を預かって8年になる。
息子が大学を卒業するまであと7年は続けるつもりだ
自分も52歳になってしまう。
客に好きとか感情移入したことはないが
40代の体がたまに人肌を欲する

「じゃあ、頼もうかしらハチミツマッサージ」
酔ったふりをして言ってみた
今まで握っていた三輪社長の手が急に外れて、驚いた。

「そろそろみんなのところに戻ってお開きにするか。
お勘定はツケで頼むよママ。
1カ月まとめて請求書おくってくれたら
指定の口座に振り込むから
また来た時に領収書渡してよ」

「今日も楽しかったよ
ありがとう
ママごちそうさま」
そう言って三輪社長はエレベーターに乗り込んだ

ママは自分の馬鹿さ加減を笑いながら
泣いた。。。。


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のり
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