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ショートショート 百人一首15番 君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪はふりつつ 光孝天皇

この物語は三羽烏様の百人一首で百人百色の企画小説です
三羽様よろしくお願いします

社長の息子の孝一は、人柄もおおらかで、誰にでも優しく、
女性社員は、だれが彼の心を射止めるか
戦々恐々としていた。

幸一はは今は広報部の係長で
もちろんまだ独身だ。

かれには二つ下に弟があり
名は健史といい、すでに企画部の部長だった。
彼は仕事は出来たが、人にも厳しいので
企部部は彼を怒らせないように、
こちらも戦々恐々としていた。

幸一は出世願望もなく
皆が楽しく仕事ができるのが一番だと考えていたので
広報部では新宴会を兼ねてキャンプをすることになった。

この寒いのにと男子社員には不評だったが
幸一は
「僕の軽井沢の別荘では星が奇麗に見るんだ」と、
それは嬉しそうに言うし
土曜日には
あの豪華で有名な別荘に泊まれるというので
12名全員で三台の車に載って出かけた
タイヤはもちろんスノータイヤである。
これも幸一が手配してくれた

キャンプと言っても
別荘の庭に雨よけの屋根テントを貼り
その中でバーべキューをして
地下室のワイナリーから年代物のワインを出し
全て幸一持ちの豪華なバーべキューだった

酔っているからか東京より遥かに大きく星が見え
女子社員は幸一を取り囲み
しばらくうっとりと星を眺めていたが
日付けが変わるころみなそれぞれの部屋に入り
キャンプを味わうため寝袋に入って眠った

次の朝、うっすらと雪が積もっていた
みなが起きるころに合わせて、幸一なずなやオオバコを採りに
辺りの林を歩き回り、足もとを濡らして帰ってきてた。
それから買ってきた大根とカブも小さく刻んで
粥を炊いた
お酒を飲んだ後は粥に限る
みな、幸一の行き届いたもてなしに満足し
その後も広報部は揉め事もなく、良い仕事をしてきた。

幸一が部長に昇格するころには
弟の建史は常務になっていた。
銀行関係のお嬢様と結婚し2人の子どもにも恵まれていた。

その頃になって、次期社長は健史だと誰もが認めるようになった。
が、幸一の人柄からか、
彼の周りんはいつも人が集まり
彼は男も女もみんなが好きなので、身を固めることもなかった。

社長が75歳で会長になり、
健史が社長となり
幸一はその補佐として専務になった。
幸一が人間関係をすべて補佐するおかげで
ワンマンな健史の経営もそれなりに上手く運んでいた。

ところが健史が50歳を過ぎた頃、膵癌が見つかった。
余命半年と告げられた。
「兄さんが、経営者になりたくないのは分かっていますが、
どうか壮太が一人前になるまで、一時でいいので社長になってください」
と懇願された。

こうして幸一は55歳にしてはじめて会社のトップとなった。
自分はお飾りで、あとは建史の子飼いの社員が上手くやってくれた。
そして壮太が30歳の年にその職を譲り、
壮太のたっての願いで会長職に着いた。

だが、会長などすることもない。
1月7日の日には社員食堂で必ず七草粥を炊き
ちいさなお椀一杯分、食堂を利用する社員に振舞っている。

もう長靴やカッパの袖をぬらすこともないなあと
少し寂しく思いながら・・・

壮太も「おじさんおのお粥美味いよ」と笑う。
建史によく似てきたが、性格は随分とおおらかだ。
あつより上手くやるかもしれないなと幸一は目を細めた。

だが、そろそろ誰かと結婚しなければならない年齢になった。
幸一は高校時代にカミングアウトしていたから
家族から何の期待もされなかったが、
壮太は会社を守るための結婚をしなくてはならいのだろうと
少し可哀そうにも思った。

また幸一は自分の人生も少し哀れに思うのであった。
好きな人はいたが、立場を考えて1度も告白はしなかった。
それが会社に残れる条件だったから・・・


へだーはsato様のイラストです
どうもありがおりがとうございました<(_ _)>

娘の部屋から百人一首の本を探しだして
一から勉強しています
光孝天皇のことも書いてありました



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のり
この度はサポートいただきありがとうございました これからも頑張りますのでよろしくお願いします

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