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実はみんな気になる!?スタートアップの基本の「き」を知ろう!

はじめに

みなさん、こんにちは。札幌でスタートアップへ投資する仕事(ベンチャーキャピタル)をしている株式会社POLAR SHORTCUT(ポーラー・ショートカット)の大久保です。

先日、このnoteのタイトルと同じ内容のイベントを開催したところ、大変多くの方から反響をいただきまして、これは記事としてちゃんとまとめる価値がありそうだな!と思い、久しぶりにnoteを執筆しました。

本noteは、主に「スタートアップ関係者とお仕事することになったけど、何をどこから理解すればいいの?」「起業には興味あるけどスタートアップって、なんだか難しそう」というライト層の方に向けたコンテンツです。
とはいえ、ある程度知識がある方が読んでも、なるほど〜と思えるような内容に仕上げましたので、ぜひ幅広い方に目を通していただければと思っています!


なぜこのテーマでイベントをやったのか?

岸田政権の後押しもあり、多くのメディアで「スタートアップ」という言葉を聞くようになりました。
行政の方や、金融機関の方、メディアの方、果ては教育関係者の方まで、私が住む北海道でも、多くの方が「スタートアップ」に興味を持つようになり、私が業界に飛び込んだ2015年と比べると、隔世の感があります。
一方で、スタートアップの実態や意味合いについては、人によりイメージにバラツキがあり、正しく理解がされていないと感じる瞬間も増えてきました。

地方でもスタートアップに関するイベントは徐々に増えてきていますが、その多くが「スタートアップ関係者によるトークセッション」や「起業志望者向けの事業創出プログラム」のどちらか。
興味を持ち始めのライト層に向けた「スタートアップそのものの特徴を知る機会」というものは、あまりないんですよね。
ならば自分たちでやってしまえ!ということで、実現したというのが、開催の経緯です。

当日はたくさんの方にお越しいただきました!企画いただいたDRIVEコミュマネの中野さん、ありがとうございました!

そもそも「スタートアップ」とは?

まず一番重要な考え方は、「起業 = スタートアップ ではない!」ということです。

"スケーラブル"で、 "再現性のある利益を生み出すビジネスモデル"を探索する"一時的な組織"

スティーブ・ブランクによる定義

リーンスタートアップの生みの親であるスティーブ・ブランク氏によると、スタートアップはこのように定義されています。
つまり、スタートアップは単なる「新しい企業」ではなく、「スケールすることを運命付けられた取り組み」なんです。

スタートアップ基本の「き」のイベント資料より

スタートアップかどうかを評価するにあたり、難しいポイントは「スケール志向であるかどうか?」の判断です。

例1:ベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けている
→ 資金調達以降は、外部株主であるVCから継続的な成長を求められるので、間違いなくスタートアップであると言えます。

例2:新しい取り組みをしているが、創業者が「会社の成長」は必ずしも重要だと考えておらず、ワークライフバランスを重視している
→ スタートアップとは言えません。ただし、そのような経営スタイルの企業があっても良いと思います。そこに優劣はありません。

例3:外部からの資金調達をせず、自己資金のみの経営で、事業の急成長を目指している
→ スタートアップであると言えます。珍しいケースではありますが、国内では成長期のChatworkなどがこのケースに該当します。

スケール志向かどうかは経営スタンスの問題なので、実のところ外部から客観的に計測することが難しいです。それがそのまま「スタートアップかどうか?」を判断する難しさに繋がっているように思います。

ベンチャーとスタートアップは何が違う?

これもよくある質問です。
実は「ベンチャー企業」という言葉は和製英語で、海外では「ベンチャー企業」に該当する言葉はありません。
一般的に、海外で革新的な取り組みをしている企業は「Startup」と表現されます。
※調べたところ、融資を中心に経営しているベンチャーを「small business venture」と表現することはあるようです。

一方で、日本国内において一般に「ベンチャー企業」というと、新しい取り組みをする新興企業全般を指すと思ってください。

スタートアップ基本の「き」のイベント資料より

スタートアップは、ベンチャー企業の中の「ジャンルの一つ」という言い方が感覚的にもしっくりきます。

スタートアップ企業の「ステージ」

続いて、ライト層が話についていきにくくなるポイントである「ステージ」について説明しておきます。
※出典により若干用語や区切りが異なるので、あくまでも私が一番しっくり感じている区分けです。

スタートアップの「ステージ」について。基本の「き」のイベント資料より

まず、スタートアップ企業のフェイズは大きく、シード・アーリー・グロース(ミドル・レイターと呼ぶこともあります)の3つに分かれ、IPOに向けて向かっていくという流れになります。

Phase1:シード(Seed)
スタートアップは「シード」と呼ばれる「試行錯誤する時期」が結構長く、最近ではこのシード期を、創業前後のPreシード、一般的なシード期、シードの後半であるPreシリーズAの3つに分けるケースも多いです。
シード期は、顧客の明確化・ソリューションの決定・プロトタイプの作成など「サービスが顧客に必要とされるか?」を証明していく時期です。
実際に顧客に使われることが証明できた段階を「PMF(Product Market Fit)」と呼びます。顧客に使われる…と言うと当たり前のように聞こえますが、実際にPMFを達成できるスタートアップは一握りです。

Phase2:アーリー(Early)
無事にPMFを達成できたスタートアップは、アーリーステージへ進みます。後ほど補足説明をしますが、"シリーズA"と呼ばれる優先株式による資金調達を行なうことが、一つのマイルストーンになります。
アーリーステージはわかりやすく言えば、既にPMFしている(売れる)サービス・プロダクトがあり、資金調達したお金で拡販・マーケティングを仕掛けていくフェイズです。
採用活動などが積極的になり、いわゆる会社としての形が整っていくのもアーリーステージですね。

Phase3:グロース(Growth)
アーリーとの対比でミドルやレイターとも呼ばれるステージです。どこからがミドルでどこからがレイターか曖昧なので、私はグロースステージとしてまとめてしまう方がわかりやすいと思ってます。
ここまで来ると、会社の主軸となる「一つ目の事業」が売上数億円規模まで成長し、第二・第三の事業の立ち上げをしている段階です。
これを事業の複層化と言いますが、その先に会社が上場(IPO)できる水準まで成長するために、必要となってくる取り組みです。
グロースステージでは、他にも上場に向けて、会社の在り方が色々と変わってくる時期ですが… 今回のnoteでは割愛します。

補足:シリーズA/B/C…とは?
スタートアップがベンチャーキャピタル(VC)から資金調達を行う際に、優先株式(有利な条件のついた株式)というものが用いられるのですが、1度目に発行する優先株式をA種優先株式、2度目に発行する優先株式をB種優先株式(C種以下も同様)と言います。
シリーズAとは、A種優先株式を発行した資金調達ラウンドのことです。なので、アルファベットが後ろになるほど、資金調達回数が多いということになります。専門的な話なので、詳細は割愛します。

北海道内のスタートアップはどのステージにいる?

まず、前提となる情報ですが、北海道のスタートアップに関する全体像については、私が過去に執筆しているnoteをご覧いただければと思います!笑

このスタートアップ地図をぼんやりと眺めてみると、北海道内のスタートアップの多くは、シード期のスタートアップだなという印象です。
つい先日、ふるさと納税NFTの「あるやうむ」がプレシリーズA(シード後半)での資金調達を発表していましたが、だいたい調達額が「1億円」を超えてくると、シリーズA(アーリーステージ)に入ってくるイメージです(最近はシードで1億円以上集めたニュースも多いですが、一般的な目安として)。

ちなみに北海道で有名どころのスタートアップで言うと、ロケット開発のインターステラテクノロジズがシリーズD、エッジAIカメラのAWLがシリーズB、酪農IOTのファームノートもシリーズB〜Cくらいでしょうか。
このあたりのスタートアップは、先ほどの図でいうと、グロースステージの企業と考えて良いと思います。

北海道のスタートアップの数は、ここ数年でかなり増えてきました。それはシード期のスタートアップを増やすための取り組みが花開きつつあることの証明だと思います。

今年で6期目となるアクセラレータープログラム「Onlab北海道」などが、シード期のスタートアップ創出に大きく貢献

一方で、スタートアップは、シリーズAからが本当の意味で市場に受け入れられていくフェイズ。
これからスタートアップという存在が、地域に根付き、本当の意味でのインパクトを残していくには、「シリーズAに到達し、アーリーからグロースステージへ移行していくスタートアップ」の数を増やしていく必要があると思っています。

スタートアップが増えると、何がいいの?

スタートアップを増やそう!という掛け声は大きくなってきたものの、実際のところ、スタートアップが増えると、何がいいのでしょうか?
この点については、地域でスタートアップ支援を行なっている我々自身も、改めて言語化できている必要がありますよね。

観点①:日本の経済成長
下の図を見るとわかるように、日本と米国の直近10年間の株式市場を比較してみると、GAFAMを除くと日米企業の成長に大きく差はありません。
つまり、日米の経済成長の差は「GAFAMのような市場を牽引する新興企業を生み出せたかどうか」なのです。
そのため、国内の経済政策として、GAFAMのようなインパクトのある「スタートアップ」を産み出すことが至上命題となっています。
国策で最近やけにスタートアップを推しているのも、これが理由です。

経産省「スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する」より抜粋

観点②:雇用創出
もう一つが、雇用創出の観点です。下の左側の図を見るとわかるように「日本企業の雇用を産み出しているのは、設立9年以下の新興企業」です。
つまり、スタートアップのような新興企業を継続的に生み出していくことが、日本国内の雇用創出に繋がっていくのです。

経産省「スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する」より抜粋

さらに言えば、スタートアップというビジネスは「スケーラビリティ(拡大可能性)が大きく、持続的な高収益構造を比較的保ちやすい」事業形態であり、「良質な雇用を創出できる(可能性がある)存在」です。

北海道に住んでいると、頻繁に「地方から人が流出してしまう」という課題を耳にするのですが、言葉を選ばずに言えば、それは「地元企業の給与水準が低いから」という側面が大きいと思っています。

北海道でも地方都市から札幌へ人材が流れ、さらに札幌から首都圏へ人が流出している。
北海道新聞「札幌集中のリアル」より(https://www.hokkaido-np.co.jp/article/466577)

極論、年収が東京より高くなるような企業がたくさんあれば、大幅な人材の流出は起こらないはず。
東京ではスタートアップの年収は既に大手企業の年収を超えているという話もあります。
シンプルに、地方にスタートアップがあることで、良質な雇用(年収が高く、自己成長に繋がり、やりがいがある仕事)が産まれ、それが地方の活性化にも繋がっていくのではないでしょうか。

さいごに

以上、スタートアップ基本の「き」のお話でした!
最近スタートアップに興味を持ったばかりの方も、そうでない方も、初めて目にする内容も多かったのではないでしょうか。

スタートアップは、わかりやすい情報があまり表に出てこないことも多く、一般の方からすると少しとっつきにくい部分もあると思います。
せっかく興味を持ってくれた人が、ハードルの高さを感じて距離を取ってしまうなんてもったいない!
少しでもこのnoteをきっかけに、その距離を詰められたと感じていただけたなら幸いです。

本記事を読んで、スタートアップに興味を持っていただけた方、起業したい方、起業かはわからないけど業界のこういうところに課題感を感じている…という方、ぜひご連絡ください!それがスタートアップ創業のきっかけになるかもしれません!
Mail:info@polarshortcut.jp
Twitter:@OkbNori

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