見出し画像

本屋についての個人的考察

今日、長野から知人が東京に来て、短い滞在時間でおすすめの本屋さんは?と尋ねられた。
 心あるその方に、良い時間と本との素晴らしい出会をもたらしたい!と思ったけれど、あいにく連休明けの今日は臨休だらけ。さらに火曜日定休多め。どこもご紹介することができず悔しい思いをした。

 そんなわけで、今日は本屋について考えてみる。昨日までの3連休で私は青森に帰省していた。以前から気になっていた青森市にある「古書らせん堂」さんを弾丸で訪れた。思っていたより奥に広い店内に、詩・哲学・民藝・民俗など私の好きな分野の、しかも良書の古書がぎゅうぎゅうに詰まっていた。さらにお手頃価格なのもありがたい。店舗前面には、これまた私好みの新書も。高円寺の友である画家の市村柚芽さんが、えほんやるすばんばんするかいしゃさんから出版した画集も飾られていた。なんだかとても嬉しい。

古書らせん堂さん外観


市村柚芽さんの画集


 私が青森に住んでいた頃は、ちゃんと本を探すときは成田本店、都会の文化に触れたい時はヴィレッジバンガードで本を探した。(今ではそこここにあり、イメージも変わってきたけれど、青森に初めてヴィレバンがきた時はカルチャーショックを受けた。)
 とにかく青森にらせん堂さんのような本屋さんがあるということにいたく感激した。私が訪れた午前11時頃には、すでに数名のお客様がいらして、老若男女しみじみと本との出会を楽しんでおられた。ここは地域の文化形成に必要な場所であり、世代を問わず心が豊かになる場所なのだ。その光景にも深く感動した。らせん堂さんは朝10時オープンなのも嬉しい。(都会の本屋も見習ってほしい。)

私は少し前まで、いわゆる都会のおしゃれな本屋に夢中だった。一時期、SPBSに毎日のように通っていた。そこは、雑貨や古着、POPUPの民芸品やヴィンテージ雑貨を売っていたり、個性的な展示やイベントも多く開催していて楽しかった。今では東京でも地方でも本屋で「展示」と「雑貨販売」はすっかり当たり前の光景になってきたが、THE書店を思えば最初はすごく斬新で新鮮だった。
 好みの本屋のハシゴをすると割とどこも本のラインナップが一緒であることに気づいた。驚くことにSNSでフォローしている地方の個人書店でも同じ現象が起きていた。
 くどうれいんさんの「桃を煮るひと」が発売された時、私がフォローしている本屋さんが一斉にその宣伝をしたため、私のTLは桃を煮るひとで溢れかえった。これを「桃煮事件」と呼んでいる。私好みの本屋とは、青木真兵さんの言う「彼岸」の本屋と思われる店たちだ。だとしてもこんなにみんな金太郎飴みたいだとギョッとする。(本が悪いのではなく、みんなが同じことを言うことに違和感を覚えたという意。)
 
 話は変わって、駒沢にあるSnowShoveringの中村さん、盛岡のBookNerdの早坂さんに、ものすごく傾倒し、その影響を大いに受けてノルドベイクを始めた。そっち側にいきたいと思ってふるまったけれど、結局行けなかった。センスのいいおしゃれカルチャーおじさんにはなれなかった。(憧れと尊敬を込めて)西荻窪Fallの三品さん、パドラーズコーヒーの松島さん、岡本仁さんなどなど。私に言わせるとセンスおばけである。20代、30代の子が彼らに夢中になるのはわかるけれど、私はもういいおっさんだ。(あえておっさんと言おう。)彼らの薦めるもの、発言、そして生き様を、自分の咀嚼なしに「いい」と思いこみ、すっかり表層の価値観になってしまていた。ノルドベイクの終焉とともに、その表層はボロボロと剥がれ、擦り傷だらけ血だらけになった。
 そんな時に私の心を照らしてくれたのは、若松英輔さんだ。若松さんは、私にとって「本物おじさん」である。(怒られるね)しっかりと自分の心を深く深く知ること、うちなる言葉を聞くことを教えてくださった。たくさんのことを知るのではなく深く知ること。
 眩しかったおしゃれ本屋、おしゃれおじさんたちをSNSでフォローするのをやめた。私は誰かの価値観を模倣するのではなく、自分の価値観を確立したい。納得したい。好きなものを深めたい。幅ではなく深さ。そう思い始めてから、本物の本の凄まじさに気づいたりもする。
かと思えば、気を抜くと私はすぐまた表層おじさんになってしまう。不甲斐ない自分の尻を毎日叩いては、実現できずに落ち込む日々である。
 最後に私が好きな本屋さんたちを少しご紹介。高円寺えほんやるすばんばんするかいしゃさん、高円寺そぞろ書房さん、代田エトセトラブックスさん。私なんぞが言うのもおこがましいですけれど、個性がすごいですね。他のどこともラインナップが違う。(よく考えたら出版もされてます。本に対する気概が違います。)あとは、井の頭公園近くのブックスオブスキュラさん、台東区の古書ほうろうさん、青森市古書らせん堂さん、島根県出雲市の句読点さん、富山県南砺市のコメ書房さん。どこもまたゆっくり訪れたいお店ばかり。

らせん堂さんで買った本。めちゃくちゃ面白い。


#本屋 #書店 #えほんやるすばんばんするかいしゃ さん
 #そぞろ書房 さん  #エトセトラブックス さん  #古書らせん堂 さん  #若松英輔 さん #ブックス句読点 さん  #ブックスオブスキュラ さん  #コメ書房 さん

いいなと思ったら応援しよう!