渡る中国にも鬼はなし(42/67)
第5章 中国第4日目 昆明
中国のデパート
再び現れた彼女はそれまでのシックなホテルの制服ではなく、洗い晒しのジーンズと上着を腰に巻き付けた若者がよくするような格好でした。まさに女子大生風でした。午前10時半からら午後2時までという約束と、なにがしかの謝礼をお支払いするということで、その少し垂れ目のかわいいお嬢さんをゲットしたのです。
急いでタクシーを続けてゲットします。しかし、いざ乗り込もうとして困ってしまいました。トランクなどというものがこのタクシーにないのです。というか、軽自動車をタクシーとして使っているのです。母と私とそのお嬢さんと車イスそして運転手が乗り込むにはその自動車はあまりに小さすぎたのです。しかし、とにかくやってみようということで、後部座席に3人が乗り、助手席に車イスを乗せることにしましたが、このタクシーというのが後部座席のすき間も狭いのです。
私は立つと身長186センチと背が高いのですが、介助してくれた運転手はずいぶんと小柄で、さして頑健ではありません。したがって後部座席に私を座らせること自体も大変で、彼独自の介助方法を見いださねばなりません。その運転手は私の脇を後ろから抱え上げ、まず自分が後部座席に乗り込み、そのまま私を引っ張り込んだのです。まぁ誘拐されるような体勢で私はなんとか車に押し込まれました。背が高い私は座高も人並み以上にあります。その小型車に座ると首を横に曲げないと頭が天井についてしまいます。この格好のまま目的地まで行かねばなりません。
私の積み込みはできましたが、今度は車イスの積み込みがありました。その運転手はたとえライオンを乗せた経験はあったにしろ、車イスの人間をタクシーに乗せた経験はなさそうです。車イスの扱いも知らないようです。それでも助手席に車イスを入れようとしましたが、狭いので、ハンドル横のシフトレバーに当たってしまいます。運転手は「これはあきまへんなぁ」みたいな顔をします。しかし、今日は運が悪いと諦めきったのか、再度車イスの位置をがたがた動かしてくれます。そしてなんとかうまく収まったのです。