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北京入院物語(77)

 もう当の昔に考えなくなったことが急に起こると、実感がなかなかついて来ないというこの感覚は、いうなれば、探し疲れて諦めていた探し物が、ずーーと後になって出て来たようなものです。
 すがるような思いで、薄ピンクの錠剤(プレドニン)を飲んでいた頃に、筋肉が回復していたら天にも昇るくらいうれしかったでしょう。

 そうは言っても、上体が前にかがめると、いろいろと便利なことがわかりました。
以前ですと、手は手首から先しか動きませんので、腕を持ち上げて、箸を口元まで運べません。
ところが、前かがみになることにより口が手元に近づき、手首を動かす範囲に口がくると、何とか自分でご飯が食べられるようになりました。

 全面介助を受けている人は食事のとき、おかずとご飯の順番が介助者任せになる場合があります。
また、おかずを食べたいのにご飯、ご飯を食べたいのにおかず、もっとほおばりたいのに小さくすくわれたり、あるいはその逆という具合に。
もちろん、次はこれということを介助者に伝えるということは出来ますが、これは結構面倒なもので、だんだんとなんでもいいや、おなかさえ大きくなればいいやというふうになります。

 それが、なんと自分で食べたいものが食べたい順番で食べれるようになりました。
それは健常者にとっては当たり前のことですが、私のように全面介助のものにとっては、うれしいことだったのです。
北京入院物語(78)


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