憧れが足枷になる瞬間
私には憧れの人がいる。
ダンスが上手い憧れの人。
歌が上手い憧れの人。
お芝居が上手い憧れの人。
みな、プロのミュージカル女優やテレビで活躍されている俳優さんだ。
この世に生まれ、小学生の頃まではそのような憧れを抱くことはなかったが、
中学生になり、ミュージカルというものに関わるようになってからは、気付けば憧れというものを抱いてきたような気がする。
憧れの人を理想とし、目標とし、今日まで生きてきたが、残念ながら自分には芸の才能がないことを知っている。
私は元々器用な人間ではなく、何においても人以上の努力をしないと追いつくことはできないし、それは芸事でも同じだ。
先日、ある人にこう言われた。
「あなたは、経歴と技術が比例していない。
だからこのままではプロとしてやっていけないよ」
と。
自分では分かっているつもりではいたが、やはり直球を投げられるとくるものがある。
もちろんこの道を選んだのは自分自身だ。
紛れもなく自分から進んだ道だ。
でも一般的な"就職"というものとは真逆の方向に行っているため、周りからは理解されないこともある。
それは家族でさえ然りだ。
親にも全然理解されていない。
それゆえ、何で私は憧れなんか抱いてしまったのだろう、と思う瞬間も少なくない。
憧れの人がいなければ、この道に進むことはなかったかもしれない。
でも今更違う道に進むことも出来ない。
中学生の頃から「舞台」に捧げてきた愛を、その存在を裏切ることは出来ないのだ。
なんて生きにくい生き物なのだろうと、
つくづく思う。