ニンニクマシマシ
ぼくは魔法がつかえる。
「ニンニクマシマシ」。
この呪文をおぼえたのはいつごろだっただろうか。
たぶん10年以上前、大学生のときだ。
はじめて行ったラーメン二郎は、
食べることに必死であんまり味はおぼえていない。
お店を出るころにはおなかははち切れんばかり。
ぼくもご多分にもれず「こんな豚のエサもう食えるか」なんて宣っていたと思う。
それからどうしたことか。
1週間も経つとあのブリブリの太麺と塩味がキリリと効いたスープ、
拳くらい厚みのある豚、たくさんのニンニクとアブラ。
口内にすべてがマリアージュされてまるで覚醒剤でもキメたような(さすがに薬はやったことないです)うまみの応酬。
これが忘れられなくなった。
それ以来、ぼくはラーメン二郎やインスパイア系のとりことなって、いまでもなお1、2週間に一度は通っている。
なぜこの時間にこんな食にまつわる文章を書いているのかと問われれば、
絶賛空腹感に襲われているから。
おなかが空いたし、ダイエット中といえども、たまにはジャンキーなものがたべたい。
いま行くことが憚れる身分なので、空想でたべてみようと思う。
よく行くのは近所にあるインスパイア系有名チェーン。
注文は醤油かまぜそばのいずれか。
これにアブラマシマシの食券を買って、ラーメンのコールを聞かれるまでにお冷を組んで、これからの戦いの備える。
「ご注文は?」。
「ヤサイスクナメ、ニンニクマシマシ、アブラマシマシ」。
すこし経つとぶっきらぼうな店員さんがどどんとカウンターに置く。
ぼくは恐るおそる自分のテーブルにおろして、いざ実食。
といきたいところだが、ラーメン二郎系を食べるにあたって、
ぼくなりのスタイルがある。
まずは卓上にあるタレ(要はスープのもととなるカエシ)これを山盛りのもやしに満遍なくかける。
そこで、一口。
瞬く間に脳内の快楽物質が分泌されるのを感じる。
「うまい!しあわせ!!」。
ぼくは辛いのが好きなので、卓上の一味を丼全体が真っ赤になるほどかけ、
添えられたニンニクをすこしずつスープに溶かして、一口すする。
「これこれ、これが求めていたジャンクフード」。
あとは一心不乱にたべ進めていくだけだ。
といっても、たべるにあたって順番は大切。
うまく守らないと後半公開することになるから。
ぼくの順番はこうである。
前半でカエシとアブラの力をつかって、もやしの山を平らげ、後半ニンニクをスープにとかして、これでもかと啜っていく(合間に豚も忘れずに。終盤だと後悔するので)。
最後はスープに混ざっているニンニクをかき集めてスープとともに味わう(このときのニンニクのピリリとした食感がたまらない)。
想像すればなんとかなるかと思ったが、逆におなかが空いてしょうがない。
だれかぼくをいますぐラーメン二郎へ連れ出してくれ。ぐぬぬぬぬ。
PS いまいちばんたべたいラーメン二郎は亀戸店の汁なし。
卓上調味料が豊富だし、ここ限定のトッピング・ニラキムチがすばらしいのだ。もし来訪される機会があれば、ぜひお試しあれ。