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気持ちをモノに替えた
病院で仕事をしていると、時々患者さんからお心付けを頂くことがある。
基本的にはお断りしているのだけど、こちらに渡す時もものすごく気を遣って(周りには決してそれとわからないように)して『頼むから受け取って』と拝むように⁈渡してくださる。
お気持ちを無下にするのもな、と私は有り難く頂くことが多い。
明日ピアノの発表会があるんだと話していた私の担当している患者のSさんが
『お手紙がある』
と私が部屋を訪問した際仰る。
手紙、手紙と仰るので一緒に探し、見つけたのが何やら書かれたポチ袋🧧
小さな字でびっしりと書かれた文字。
てっきりSさんがどなたかから貰った手紙なのかと思ったら、表書きに『発表会の花代』としたためてある。
『本当だったらお花を贈りたかったのだけど私にはそれが出来ないから、せめてこれを貰って🙏』
『お願いします。生きたお金を使わせて🙏』
とSさん。
私は有り難く押し戴いた。
子供さんに何か美味しいものを食べさせて、などと言われていただいたこともあるが、何か美味しいモノを買おうと私のお財布に収まった途端、それは私の生活費になってしまい、その方からいただいたものがちゃんと目的のものに変わったか怪しかった。
(美味しいモノという患者さんの気持ちなのに、日常の食事に変わってしまった)
今回はSさんの気持ちはちゃんと形に変えたいと思った。
明日の発表会のお花代だから花屋でブーケなど買うのが妥当かもしれないけど、仕事帰りに前々から欲しかったコロンを買った。
Sさんからいただいたお札を出した。
でないと、Sさんからいただいたものが手元にあると(私のクレジットカードで買うと)何だか私のお金で買ったような気がするから。
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いいお値段のものなので、お心付けだけではこれは買えないのだけど、これを見るとSさんのことを間違いなくこれからも思い出す。
お花代が素敵な香りのするコロンに変わった。
明日はこの香りを纏って発表会に臨もう。