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学歴詐称と母

自分は子供の頃、まったく勉強しませんでした。

当然、成績はボロクソでした。

クラスメイトからは

「お前、リアルのび太だな」

「未来からドラえもんが救済に来ても不思議はないぞ」

などなど言われ、バカにされる毎日でした。

ある日、僕は母から大説教されました。

「なんでアンタはこんなバカな点ばかり取るんだい? バカな漫画よんだり、バカなテレビばかり見てるから、バカになるんだよ! このバカ!」

母はバカを山ほど連発しました。

たしかにバカだけど、ここまでいう事ないじゃないか。

カチンときた僕は、「じゃあ、おかあさんは頭よかったの?」と聞きました。

すると母は「当然よ。おかあさんは百点しかとった事ないよ」と言いました。

「ほんとう?」と僕が疑念のトーンで聞くと、母はこう言い放ちました。

「ほんとうだよ。おかあさんはね、東大に行ったんだから」

・・・・とうだい?

自分はその頃、東大が何なのかも知らないほどのバカでした。

だから「東大ってなあに?」と聞きました。

すると母は、「かしこい人しか行けない学校。つまり、おかあさんのような人が集まる場所ね」と答えました。

・・・・おかあさんのような人が集まる場所・・?

こんなガミガミうるさい人間が、山ほどおる場所かあ。

東大は地獄だな、と思いました。

さて、その翌日のこと。

僕は学校で、またヒドイ点を取り、クラスメイトから、「バーカバーカ」と、いじられていました。

しかし、僕はこの日、彼らにこう言い返しました。

「僕はバカだけど、うちのおかあさんは東大に行ったんだよ」

するとどうでしょう。

みんなは一瞬止まった後、目を丸くして、「すげー!」と大声をあげて、驚いたのです。

そして、彼らの目には「こ、こいつ、ただのバカだと思っていたが、こいつの血には東大生の血が流れているのか!?めちゃくちゃエリートじゃねえか!」という尊敬の光が、ありありと浮かんだのです。

自分はうれしくなりました。

ずっと僕をバカにしていた連中に、一矢報いた気分になりました。

爽快でした。

なので、僕はこの日、ほうぼうで「うちのおかあさんは東大生だったんだよ」と自慢しました。

みんな必ず「すげー!」と驚いてくれます。

うれしくてたまりませんでした。

さて、それから何日か後。

学校から帰宅すると、顔を紅潮させた母が僕を待っていました。

そして開口一番、「おかあさんが東大生だったことを、おそとでしゃべっちゃいけません!」と怒鳴りました。

どうやら、ご近所さんに「奥様、東大生だったんですってえ。すごいですわあ」と言われたそうです。

僕は「どうして言っちゃいけないの?みんな『すごい』と驚いているのに」と聞きました。

しかし、母は「どうしてもよ!」と言って、理由を教えてくれません。

らちが明かないので、父に聞きました。

すると父は、

「実はおかあさんは東大どころか、高校もろくに出てないんだよ。担任の先生の車を勝手に運転して、ぶつけて退学になったんだよ」

と、真実を教えてくれました。

翌日、学校で僕は、みんなに謝り、本当のことをしゃべりました。

そしたらみんな「そっちの方がすげー!」と驚きました。

(追伸)
新社会人のみなさん。

自分を東大卒と偽ったり、人の車を勝手に運転してぶつけるのだけはやめましょう。(わかっとるわそんな事)

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