失恋図書館
失恋してしょんぼりしてる皆さんに、立ち直る勇気や元気をくれた本をシェアします。
失恋のパターンも様々ですし、役に立つのかわかりません。ですが、今思い起こしても、あの一言の眩しさに、勇気をもらったなと言う本はあって、出会えなければ本の魔法も効力を奏さない訳で、かたっぱしから立ち直る本を探した私が面白かった本を紹介します。
眠れぬ夜の雨の野原で、今宵のぼんぼりは数多の本になっております。どうかどうかごゆるりとお過ごし下さいませ
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1.恋の独り相撲
〜エッセイ編〜
当たって砕けてその先に道なんかないのが恋の道。迷子達への諸先輩の名コラムをお勧めします。
夢みるころを過ぎても(角川文庫)/林真理子より「寝ないが勝ち」
尊敬していた先輩とふとしたはずみで結ばれ、その後避けられたと言う悲しーい一編です。失恋に泣く中、結ばれた事の「虚しさを知ってしまった」と言う表現はこれ以上ないくらい的確に当時の私の心を射抜きました。今でも主観で突っ走ってドカーンと失敗した時に真っ直ぐこの言葉が降りてきます。
マムシのanan(マガジンハウス)/リリーフランキーより「ディテール」
全ての報われない夜を優しく抱いてくれる一編。リリーフランキーさんはセクシーな物、爆笑物、シリアスな物、色々なエッセイを書かれますが、涙を拭う春風みたいな得体の知れない優しさを醸すコチラ。。。きっとモなテモテに違いないリリーさんのセンスが光りまくり、若かった頃胸に刺さりまくりました。
女たちよ!(新潮文庫)/伊丹十三より「死に至る病」
映画「マルサの女」で有名な伊丹十三監督のエッセイです。パスタの食べ方や、洒脱で粋な大人のマナーを語ったもので、伊丹監督の知性と上品さが光ります。さて、この中でわたしが推したい一編「死に至る病」ですが、あちこちの女の子が気になる浮気な男の子を諫めたお話です。きちんと目の前の女の子を大切にしないと後悔するよ、と言った内容ですが、この当たり前のことを諫める男の人のエッセイって中々なくて、なんでしょうねえ、いじめっこが先生にきちんと叱られたぞ!と言う爽快感がありました。それで本を読んでたらやはり伊丹監督はモテそうなんですね。文章が博識、知的、優しい。そんな人がそんな素朴で大切な事を言うって言うのがね、胸を打ちました。
〜小説編〜
どんな両思いも、両思いを理解し安寧に抱かれなければ一人ぼっち。1人で恋して1人になって、あの夏を思い出せば全てが愛しい。そんな小説を集めました。
ツ、イ、ラ、ク(角川文庫)/姫野カオルコ
カオルコさんの恋愛物の代表作です。教師と生徒であり、全く噛み合わないバラバラな二人がエアポケットにはまったかのように、互いに求め合うお話。互いの愛情を認識しきれず、自己の衝動の赴くがまま突っ走るけど、背水の陣で少女を守る先生の愛情が岩間に光る宝石のようでとても綺麗。人を好きになるって、こんなにめちゃくちゃででたらめでなんだけど、ただ振り返るとキラキラした瞬間があって、それが自分のあり方に大きな影響を与えてたんだなって思います。
ハチ公の最後の恋人(中公文庫)/吉本ばなな
複雑な生まれ育ちのハチとマオが、もはや必然的に偶然知り合い、愛を深め、深めたままにその道を分かつ話。恋が持つウエットな情感が二人の恋愛を背景に自分の心の中にも蘇ります。恋の喜びや悲しみをリアルに思い出す、思い出せることが心を癒す一冊です。
女人源氏物語(集英社文庫)/瀬戸内寂聴
源氏物語を女君からの視点で切り取った、短編小説集。読めば読むほど、自分勝手も行き過ぎ、もはやサイコパスな光源氏の存在の異様さが際立ちます。え、どうしてそんな風に思うの?その時どうしてあの人のこと考えてあげないの?と、光源氏は美しくて捉え所がない化物のようです。化物源氏に怯える一方で、なぜでしょう?その心内を聞けば、素っ気なかった葵上も、嫉妬魔だった六条の御息所も、なすがままに流されっぱなしの女三の宮も、親しみを感じる好きなキャラクターになってしまうから不思議です。
熱く切ない胸の内を口々に述べる女君の姿は寄り添いたくなるようでもあり、それでいて光源氏へきちんと意思表示する姿に希望を見出せるようでもあり。。。たぎる恋情と生命力に力をもらえる一冊です。
2.恋の薬
失恋したとき読んだらなんでだか、なんでだか元気が出た小説です。魔法使いの薬みたいな小説です。
不倫と南米(幻冬舎文庫)/吉本ばなな
デッドエンドの思い出(文春文庫)/吉本ばなな
体は全部知っている(文春文庫)/吉本ばなな
と、いう訳で吉本ばななさんの短編小説集三作品です。私が失恋して泣いてばかりいた頃繰り返し読んでいました。。。野暮なんですが不倫なんてしたことなくて、ただ離れたりくっついたりしてメソメソしてただけですけどね。えーと、それでどうしてこの三つか。。。えーと思い起こすと、私は私の気持ちを知らないばかりかずっと無視していたんだと思います。私自身を。人を好きになって尚更、相手を高めた分自分を卑下してしまい疲れちゃってたんだなあと。だからあの短編集でたまにきらっと主人公が自分自身の本音に触れるところで多分自分が癒されたんだと思います。水を飲むみたく心地良くてつらい現実からしばし離れて、本で得たものが勝手にわたしを治してくれていました。魔法みたいな三冊です。
3.両思いに泣く話
あなたはわたしが好きでわたしはあなたが好き、これを確認した恋と言うのは片思いをこじらせるのとは違う多幸感がありますよね。そう言う経験が泣かせる涙のための本です。
錦繍(新潮文庫)/宮本輝
離婚した元夫婦が偶然出会い、往復書簡が始まります。手紙を通じて分かっていく、2人の歴史、互いへの想い。手紙での交流を通じて止まった時間が流れ出し、2人の人生が再び動き出す。。。
泣くリハビリですか?と言う位たくさん泣いた本です。互いを思いやる心の美しさが胸を打ちます。とにかく真心で真摯に相手に向き合う気持ちと、それによって好転していく互いの人生が素晴らしい。あなたはわたしが好きでわたしはあなたが好き。なんだか永遠みたいなのに、なかなか長く均衡は保てないから、この話は本当にキラキラして読んだことそのものが宝物になるような、そんな一冊です。
4.人生相談
自分と同じ悩みを探そう!
人生って?(幻冬舎文庫)/吉本ばなな
今回吉本ばななさんのご著書が多くてすみません。お悩み相談のベテランのばななさんが、たくさん聞いた悩みを集約して簡潔に悩みをまとめて答えています。特に、失恋してから適当な恋愛しかしてません、の回答は全ての失恋した人に一度読んでほしいです。
女の一生(岩波新書)/伊藤比呂美
最後の一冊はこちらになります。こちらは著名な詩人である伊藤比呂美さんの女性の悩みに特化してまとめた悩み相談集です。詩人と書くと格調高いですが、海千山千百戦錬磨の山姥みたいな人です。あけすけで開けっぴろげで本当に優しい、泥まみれで血まみれで本当に強い、伊藤さんの質問への寄り添いに身を委ねてみてはいかがでしょうか?
以上、私の分身の如く大切な本を紹介しました。私の愛しい小さな魔法使いがあなたのもとにも訪れますように。おやすみ、みんな。よい夢を
失恋図書館2号館
昔に書いた失恋図書館に今でも時々お客様がいらっしゃいます。この言葉に導かれてここに来る人が、何かいい一冊に出会ってくれたらいいなと思って2号館も作りました。
泣きたい人は泣けたらいいし、思い出したい人は思い出せたらいいし、少しすっきりして眠ったりできたらいいねと思っています。
様々恋模様があると思いますが、恋について深く深く考えるのは一人だけじゃないから寂しくないよってここで思ってます。
その手をにぎりたい/柚木麻子
寿司職人さんのお寿司とその腕前に恋をした女性が10年という年月を通じて寿司屋に通いその恋と自らを成長させる話。
カウンター越しの店員さん、教卓越しの先生、ステージ越しの演者。。。この人たちに恋をする事は、何がいいって、いいお客でいたらずっと恋がし続けられるって事だと思います。逆に辛いのはあの人と私のカウンターを越えようとしたらもう元には戻れないと、そう言うことですよ。孕んだ恋心をずっと抱えて、でもずっと無視して、仲良くして。でもやっぱり不自然だから割れて壊れて。。。壊したことに後悔はないけれど、このお話のようにただただ、ずっと抱えたドロドロした恋情がクリスタルになるまで持っていられたら素敵だったなあと思う一作です。
主人公の失恋なんだけど成就なんだよなあって思う。
カウンター越しの幸せが維持できるとしたら、こんな感じだったんだろうなと思いをはせる一冊です。
花伽藍(角川文庫)/中山可穂
失恋にメソメソしていた時、あまりにショックだったので普段だったら読めないものも読めるかもと女性同士の恋愛を描いたものを読みました。
恋をした太鼓打の女性の話「鶴」は恋の熱さと寂しさが美しく静かに描かれています。ラストシーンの思い出に抱かれ、しみじみと孤独に浸る主人公は失恋同盟の盟友のようであなたみたいな人もいるなら私も寂しいけど寂しくないねと思えます。
「偽アマント」は人を愛した事で、過去の想い人に愛されていたことに気付く、過去の失恋を再構築する一編です。
振られてしまった私にとって、あの人が考えている事は本当にわからなくて、あの時ああしたこと、こうした事色々な事がただただ私の空回りでご迷惑で嫌な思い出だったのかな、と思うとすごく申し訳ない気持ちになるのですが、もしかしたらもしかしたらそうじゃない、ちょっとは楽しいとか好きだとか思った一瞬が相手にあったのかな、もしそうなら救われるな、と。もし私が見た失恋の裏側がこんななら、少し温かくて優しいものがあったかもと思うのは、生きる希望だなあと思う次第です。
トラッシュ(文春文庫)/山田詠美
どうしても好きだけど上手くいかない。愛しているけど添えない人との運命がこうであったら、恋を失った側は最高だなっと思える一冊です。
愛したい気持ちも、愛されたい気持ちも満たされて自分が思いいれした男の人の永遠の存在になれたら。。。失恋ロマンの最上級です。失恋と言う他人から与えられる不幸な出来事のはずが、1つずつ選択して失恋を糧にしていく主人公。その人柄故の神展開なのでしょうけれど、こんな風に思った人の心に残れたらいいなと、思う、ある意味御伽噺みたいな失恋者に甘い本だと思います。
A2Z(講談社)/山田詠美
続いても山田詠美さんの著作の紹介となります。トラッシュより、本の厚さも内容もライトな大人の女性の家庭も仕事も壊さない、爽やかな恋愛模様を描きます。変に罪悪感に囚われない、自分を持って選べる人はこんな恋愛ができるのねって言うすごいな、私には無理だなって思いはあるのです。ですが、目の前の相手を好きになる気持ちのきれいさは一見の価値があると思う。特に指輪をプレゼントされるシーンが美しいので皆さんもぜひ。
失恋しても、きれいな思い出は刹那の永遠で消えないし、それは恋の全てだと黄金色の指輪の輝きが教えてくれる、そんなお話です。
ハチミツとクローバー(全10巻)(白泉社)/羽海野チカ
美大に通う5人を中心とした、自分とは?将来とは?を問う姿が柔らかく可愛く、ギャグ折り込みまくりに描かれたマンガ作品です。
大好きな仲間たちが故に愛情の量と種類が釣り合わずあちこちで片思いしたり、失恋したりする様子はなんだかじぶんもヒリヒリして、ヒリヒリしながら見る彼らの思い人はキラキラ輝いて見えます。その美しさをぜひ見てほしい。真山が観覧車で変な顔して乗っているのが4巻の表紙なんだけどさ。ああ、あれが恋なんだよってね。思う。
変な顔しながら私と観覧車に乗ってくれた男の人が忘れられないってのがさ、それを細密に描いて表紙にするってのがさ、恋なんだよね。思いなんだよねと。思う。知らんけど。勝手に思ってる。
叶わない恋が目の前にあるとして、じゃあどうしたら?の穏やかで真っ直ぐな落とし所を見出した傷だらけできれいな場所に行けた人々のお話です。
実際の失恋はなかなかきれいなところに行けないからね。ユートピア的なのかもしれないがでも遠くに見える灯台の灯りはいつだって恋の船乗りの希望を明るく照らすよと思う次第です。
南瓜とマヨネーズ (TOKYO NEWS BOOKS)/魚喃キリコ
失恋マンガと言えばそうだそうだ、これもあったなあと思った一作。交際が長くなり同棲ヒモっぽくなってしまったセイちゃんがありながら、お金のために放埒な選択肢を選び生活を続けているツチダさんが、ものすごく未練があるハギオに再会する話。
あの時フラれてしまった人にもう一度会えたら今度は上手くできるかなって心の奥にある欲望をそのままにしたらこんな感じかなあと思います。
体の価値観が大切にしてるように見えない主人公に共感できない人は多いと思います。主人公ツチダさんはそもそも見ないように考えないようにしていることがあって、だからそれは語られないのです。
怒ったり泣き叫んだりしないで淡々と行動する彼女は、痩せててきれいでそもそも別世界な人の感じもするのですが、ハギオが忘れられないことへの生々しさだけは伝わってきます。ハギオの部屋にいた時の記憶が今でも虚しい景色と愛されなかった自分が想起されるような思い出であること、どうなってもいいからハギオともう一度かかわりたいこと。
ハギオによってモノトーンになった世界を取り返したかったのかな?
セイちゃんとも色々あるんですが常軌を逸さないし。ハギオとも表向きは大人同士のお付き合いなんだけどさあ。ハギオに関わろうとするぶっ飛び感?が際立つんですよね。それ故に。
でね、ハギオはハギオであるって以外にいいところ何もないんだよ。
でもハギオだから絶対に執着しちゃうの。それがツチダさんの選んだ恋でね。辛いよねって言う。
想いが釣り合わず、淋しくなるような失恋模様を垣間見る一冊です。
太陽の塔(新潮文庫)/森見登美彦
こちらは小説です。男の人の失恋でこんな感じなんだ〜って思った一冊です。
前出のハギオじゃない、ごく普通の男の子達はこんな風に失恋してるんですかね。
満開の桜の花が散るような散りぶり(失恋)が鮮やかでした。男子ってよくわからんけど振られたら悲しくて、女子より致命的な感じする〜と思いました。
陰日向に咲く(幻冬舎文庫)/劇団ひとり
表題作「陰日向に咲く」も男子の失恋を描いています。なんだか可哀想すぎて、男子のピュアさがせつないです。アイドルに恋慕する主人公がその恋のシステムのどうにもならなさをずばり言い表していて胸に刺さりました。
女子は振られても次行こうぜ!な感じはありますが、男子の恋愛ってなんかいちいち人生終わっちゃいそうで、お母さん心配だわ〜って思ってしまいました。
リバーズ•エッジ(Wonderland comics)/岡崎京子
失恋の話ではないのですが、たとえ恋が叶ってもこの虚しさはこの悲しみはなんだろうって思う気持ちを全部、表しているようなマンガです。
体のポカンってなる感じとかね。耐えられないよねって言うあの寂しさとか、体が大人になり大人として扱われることは私の思いとは連動してなくて、置いてかれますよねって感じとか。
恋の先にある体のしんどさとか悲しさとかを、言葉以外の全てで訴えているような、登場人物達の醒めた目線が印象的な作品です。
オール・アバウト・セックス(文春文庫)/鹿島茂
失恋は体の悲しみでもあると思います。私は何十年も前にとても好きな人がいてその頃たくさんの本を読みました。恋をして実らなかった事も辛かったけど、体を伴い人と関わる事の不安定さやはかなさがとてもしんどかったです。
本作は体方面にまつわるブックレビュー集で、多分セクシーな方面もあったかと思うんですが、性にまつわる文学を縦横無尽、これでもかと蒐集した仏文学者の鹿島先生が軽く瀟洒に語り尽くしています。Amazonの見出しほど下品じゃないような。下品と言えるような事象も、書き手のテンションが下品ではないから面白くて物悲しいよね、人間って、、と言う受け止めをした一冊です。
失恋図書館として、あちらの図書館への矢印も是非立てておきたかった次第です。あれ一冊読めば体方面の書籍はかなり把握できると思われます。ちょっと出版されて年月経つのが残念なのですが。
レンタル(不倫)(角川文庫)/姫野カオルコ
こちらは、前出の鹿島先生の著作で取り上げられていた一冊です。どんなにタイトルや不倫と言う内容がセクシーに聞こえても、書く人に品があったら軽くて面白い文学になるのだよと言う内容です。
彼氏からの謝罪の手紙を赤鉛筆で添削するところは最高に面白いので是非読んで欲しいです。
何かこの彼氏の霞雅樹さんが仏文学の蓮實重彦さんぽくてすげー可笑しいから、重ねて読んでみても面白いです。
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野原のように伸び伸びと、いきいきと、好き勝手に書いています。
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失恋図書館2号館|ノノハラ