信州佐久で”発酵食品の魅力と免疫力向上効果について”の講座を開催
3月13日(土)にワークテラス佐久で開催された標記講座と座談会の模様をレポートします。
イベントページ:https://peatix.com/event/create2/1797574/edit#/advanced
講座の中で印象に残ったこと
家庭で作る漬物など発酵食品が生み出す乳酸菌は、家庭の味となり健康を支える!
講座を企画した背景
・佐久は日本でも有数の「発酵食の街」。日本酒についてはこの狭いエリアに13蔵もあり、味噌蔵も9蔵あります。佐久市安原にある安養寺は鎌倉時代、覚心(かくしん)上人が中国から味噌作りを伝えたといわれ、「信州味噌発祥の地」として知られています。
・かつては野沢菜漬け、梅漬け、たくあん、奈良漬け、味噌漬け、白菜漬けなど多様な漬物が各家庭によって作れられてきましたが、漬物を各家庭で漬ける食文化は年々少なくなっています。
©2021 Sachi Tanaka
・日本酒は各蔵および総合的なPR活動が盛んで認知度は高まっていますが、味噌を中心とした佐久の伝統的な発酵食品の生産状況や入手情報は十分でなく、認知度がかならずしも高くない状況にあります。
・発酵食品の免疫機能に関する科学的知見を学ぶニーズは高いのでないかと考えています。特にウィズコロナで免疫の重要性が高まっている中においては。
◦ このため発酵と発酵食品の基礎知識(野沢菜漬けの免疫調節機能とそのメカニズムなど)を学ぶ講座と佐久の発酵食品の現状と魅力を共有する座談会を企画しました。
◦ 講師は信州大学農学部食品免疫機能学研究室准教授田中沙智先生にお願いしました。講座のファシリテーターは私が努め、座談会は空つなぐ~佐久食べごと、暮らしごと~の臼田美穂さんがファシリテーターを務めました。
参加者
オンライン7名(うち東京と群馬県在住者が1名ずつ)、リアル3名。
講座の概要
田中先生のスライドを用いた講演は、難しい免疫機能のメカニズム等についてとにかくわかりやすく解説していただきました。食の健康面の作用についての情報はネットではたくさんの情報が溢れており、どれが正しい情報かの判断が難しい中、大学の先生から研究成果に基づき直接、お聞きし、質問できる機会は貴重だと改めて実感しました。
講義のポイントは以下のとおりです。
・長野県は2018年に「発酵・長野県宣言」をしている
・発酵とは微生物が栄養素として取り込んだ物質を代謝して、人間に有益な有機物を生成すること
・免疫とは病原体などの外来の異物を排除しようとする生体防御機構(疫から免れる)
・講演の構成は以下のとおり
1.発酵食品と乳酸菌
2.野沢菜漬けに含まれる乳酸菌
3.野沢菜と免疫の関係
4.野沢菜の腸内細菌に対する影響
・乳酸菌の主な生理機能は、整腸作用、免疫活性化、免疫抑制、感染防御
脂質代謝改善作用
・乳酸菌は有害菌を排除し、整腸効果もある
・免疫系には自然免疫と獲得免疫がある
・免疫機能が低下すると新型コロナウィルスの増殖によりサイトカインストームを引き起こし、重症化につながる
・免疫機能低下の原因は、加齢、食生活の乱れ、ストレス、運動不足、肥満、喫煙、睡眠
・免疫機能に関して、49の野菜を試験。アブラナ科、ユリ科、セリ科、葉菜類が免疫機能が高い(←IFN-γ多い)。野沢菜(生)でもIFN-γが高いが、野沢菜漬け(特に古漬け)はさらに乳酸菌が多くなりIFN-γが大幅増。
・野沢菜漬けは腸内細菌叢の変化、酪酸酸性菌の増加、酪酸の増加により腸内環境が改善
座談会
©2021 Miho Usuda
佐久の発酵食品の現状について説明後、参加者に①発酵食品のイメージ、②摂取状況、③発酵食品の普及方法について伺った。
発酵食品についてはカラダに良さそうというイメージはあるが、正確にはなぜいいのか?がよくわからないと回答する人がほとんどであった。
発酵食品として思い浮かべるのは乳製品という意見もあり。
味噌を買うのはスーパーで購入する人が多かったが、味噌作りをしている人もいた。特定の銘柄、減塩のものを選ぶ人もいた。
摂取状況についても毎日、味噌汁とヨーグルトを取っている人もいた。
発酵食品の普及方法については、味噌などの作り方のきっかけを作る、イベントや講座の開催、伝統的な発酵食品に加えてドレッシング、ソースなどの機能性食品の開発を進める、などの意見が出された。
佐久のような発酵食の街であっても、その消費拡大のためには発酵食品について学ぶ場(講座、セミナー)、作る場(イベント)が必要と感じられた。
文責:ワークテラス佐久 食とヘルスケアコーディネーター 加藤信夫