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自治会改革は行政改革から始まる〜あるいは「行政の地域依存/地域の行政依存」構造からの脱却

某自治体の職員研修で、自治会の改革、再編に関するレクチャーを依頼された。その内容をもとに再録する。


「自治会の改革、再編が必要」という主張は多いが

コミュニティ政策の議論においては、しばしば自治会の弱体化が問題となる。この問題は、自治会の改革、再編が必要だという主張につながる場合が多い。しかし、果たして本当にそうなのだろうか。

前提として町内会に関する概論は以下の記事を参照されたい。

総務省 地域コミュニティに関する研究会、2022「地域コミュニティに関する研究会報告書」という報告書がある。おそらく、今日の全国の自治会に関する網羅的な調査報告として最新かつ最も信頼できるものの1つだろう。ここから現在の自治会の置かれている状況を見ていくと、やや違う風景が見えてくる。

自治会の負担が重くなる理由を本報告は以下のように整理する。

自治会は、組織運営の効率化を図るため、会議が一回で済むようにするとか、役の引受をお願いして回るコストを節約しようとして、特定の人が複数の役職を引き受けることになり、その個人に属人的な運営をしがちになる。それゆえ「その人だからできる」という状況が発生し、ますます他の人にワークシェアすることが難しくなる。結果、個人としても組織としても負担が重く感じられるようになる。

「自治会の自治体依存」とは「自治体の自治会依存」の裏面

では、自治会はなぜそんなにたくさんの役割を引き受けてしまっているのだろう。これには、市区町村すなわち自治体側の事情がある。自治体はこれまで、自治会の存在を前提として様々な行政サービスを展開してきた。自治体と住民個人との間をつなぐラストワンマイルを担う組織体として自治会は期待されてきた。

ところが21世紀に入り、共働き世帯の増加、単身世帯の増加、労働高齢者の増加といった社会情勢の変化が進行して、自治会運営に時間や労力と言ったリソースを割ける人口は減っている。にもかかわらず、自治体は従来の業務依頼の範囲・方法を維持してきた。

では、自治体行政は自治会に何を依頼してきたのか。主要なものとして、多くの市区町村が、特定の委員会の委員選出を、(本来その委員会ですべきところ)自治会に推薦依頼を行っている。例えば民生委員、スポーツ推進委員、行政相談委員、保護司、地域交通安全活動推進委員、統計調査員などがそうである。さらに、法律に基づき行政機関が委嘱する委員だけでなく、その他法定外で委嘱する委員についても推薦依頼を行っている。

あまつさえ、「行政協力業務」は全般に増加傾向にあることもわかっている。本報告では2008年時点での調査と、2020年時点での調査を比較している。

まず、この間あまり変わっていないものとしては、非定期や緊急の情報伝達、寄付金や募金集め、地区要望の取次ぎ、定期広報物の配布という行政とのパイプ役(共通してほぼ全ての市区で実施)がある。

加えて、この間に増えたものは以下の通りである。

委員推薦(67.8%→83.5%)
緊急時の連絡網や告知(56.1%→67.4%)
防災対策(62.6%→75.3%)
高齢者見守り(46.9%→62.3%)
子育て支援(42.3%→52.1%)

減ったものは以下の通りである。

住民窓口業務の取次ぎ(5.6%→4.0%)
ごみ分別・資源物回収(69.3%→60.5%)
防犯活動(60.2%→57.9%)
地球温暖化対策(11.7%→5.4%)

社会情勢の変化に伴って担い手不足に悩む自治会では。こうした推薦依頼に応える負担が大きくなっている。結果、先に示したように一部の「動ける」人が複数の役を担うことになり、役員一人当たりの負担が増大していく。そのことが、継承者のますますの尻込みを招き、承継が遅れ、さらに役職者の高齢化を招くというサイクルに陥ってしまう。

公共サービスのラストワンマイルを任される自治会

さらに、自治会を当てにしているのは市区町村だけではない。市区町村のみならず、様々な団体から、バラバラに、頼まれごとを「放り込まれて」いる。これは自治会が公共サービスのラストワンマイルを担うポジションにはからずも存在してしまっており、その役割を様々な依頼元が当然のように期待しているからだ。


都道府県
警察
消防
学校
社会福祉協議会
etc・・・

これらの依頼元は、当然ながら別々の組織体ゆえに統一的なマネジメントがされていないので、業務が重複、分散、屋上屋化し、組織の非効率が生じやすい。その非効率に伴う損失を自治会が被る構造になっているのである。

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