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「教育データ」の利活用に関する覚書(1)


学習履歴(スタディ・ログ)の利活用

GIGAスクール構想によって一人一台環境が整備され、クラウドバイデフォルトの原則が一般化すると、必然的に学習履歴(スタディ・ログ)が蓄積されていくことになります。

保存するために別途特別なコストをかけなくても、G Suite for Educationのようなクラウド型の学習支援システムによって学校教育をおこなうだけで、児童生徒一人ひとりの学習履歴がデータ化され、学校単位、地方公共団体単位のビッグデータが構築されることになります。

文房具と化した情報端末は、授業だけではなく、課外活動や家庭学習などでも使われることになるので、学習履歴のみならず、言わば児童生徒ひとりひとりのライフログがビッグデータの中に組み込まれることになります。

これをディストピアへの序章と受け止めることもできますが、標準的な生徒を育てるための標準的な授業を一律にほどこし、避けがたく落ちこぼれや吹きこぼれを生み出し続けてきたこれまでの教育を考えれば、「公正に個別最適化された学び」というスローガンにかなうものに教育を進化させる可能性があるという楽観論にも相応のリアリティが感じられます。

ひとまず、児童生徒一人ひとりが、自分にとって最適の学習環境や学習材を手に入れるための手段として、学習履歴を活用することが可能です。

教員の指導・児童生徒の学習のプロセスの可視化

学習履歴は、時々刻々と蓄積され続けていく動的なものなので、「説明責任としての評価」としてだけではなく、いや、「説明責任としての評価」としてよりもむしろ、「改善のための評価」に資するものだと言えます。

それはもちろん、学びを改善するために児童や生徒自らが利活用できるものであり、児童や生徒一人ひとりにとって「公正に個別最適化された学び」を提供するためにも有益なものです。ただし、児童や生徒一人ひとりのとっての利活用というだけではなく、授業とカリキュラムの質を高めるために教員が利活用することによってその価値はさらに高まるということも忘れてはなりません。学習履歴は、個人の学びのログであると同時に、クラスや学校という単位でのふるまいのログでもあります。一人ひとりに対する働きかけの総和として、クラスや学校全体の学習がどのような状態になっているのかを教師が知ることは、授業やカリキュラムの質を高めることに役立ちます。

児童や生徒一人ひとりの学習等のサポートと、授業やカリキュラムのあり方の改善が、教育ビッグデータの利活用によって可能になるのです。

また、世代による違い、地域による違い、国による違いなどについても、教育ビッグデータによる分析が可能になるはずです。

さらに言えば、ベテラン教員の暗黙知でしかなかったものを、経験の浅い教員にも理解可能な「経験知」として共有する可能性が開けるかもしれません。もしかすると、蓄積された教育ビッグデータを分析することで、教授法・学習法などの新たな知見が創出されることすら、ありえないことではないのです。

(つづく)

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