国立教育政策研究所が出している指導資料・事例集の中に「学習評価の在り方ハンドブック」という資料があります。
そこに「主体的に学習に取り組む態度」を評価する際の観点として「粘り強さ」と「自己調整力」があげられていて、両者の関係について以下のようなグラフが提示されています。
山梨県教育庁の会議に出席するにあたって、PDFで送られてきた資料を読み込ませつつ、ChatGPTを相手に予習をしていた時に、ひょんなことからこの資料についてかねてから疑問を感じていたことをぶつけてみました。
グラフの画像を添付したうえでやりとりをしてみたら、こんな対話になりました。
この説明は、グラフの中核部(湾曲している中心部)に焦点を当てて説明していますが、漸近線に収束する部分(X軸Y軸にそれぞれ近づく末端部)に注目すると、自らの学習を調整しようとしすぎると粘り強さが低下したり、粘り強くやり過ぎると自らの学習を調整することができなくなるという話になります。これは、どう考えてもおかしな理屈です。
このグラフにおける「自らの学習を調整しようとする側面」とは、自己抑制(勉強しすぎない)だということになってしまっているのではないでしょうか?
ChatGPT と私の理解が妥当であるなら、このグラフは修正されるべきです。
さて、こうした話にいたる対話の焦点は「自由進度学習」でした。
そして「自由進度学習」の中で発揮される「粘り強さ」について考える中で、「自己調整力」についての気づきがありました。
それは、「自己調整力」というのは、「自分で自分を調整する力」であるというより、「自分で自分の学習環境を調整する力」であると考えるべきだという気づきでした。
こうした気づきを経て考えたのは、「学習者のウエルビーイング」という観点です。
学習者が「粘り強さ」や「自己調整力」を発揮するためには、「ウエルビーイング」が重要です。
ウエルビーイングとは、心身ともに健康であることを基盤に、安心・安全で快適な学習空間、学び合える仲間、サポートしてくれる存在、自由に使える情報端末、そしてさまざまなリソースへのアクセスなど、学習者がより良い状態にあることを指します。
こうした環境が整って初めて、学習者は学習環境を調整する「自己調整力」を発揮し、粘り強く学びに取り組むことができるようになります。
教員のウエルビーイングも重要ですが、第一義的には学習者のウエルビーイングを確保することこそが、学校教育の目標です。
教員のウエルビーイングが重要なのも、それが学習者のウエルビーイングに直接的に、より大きな影響を与えるからです。