没頭する学習者におとずれる眼精疲労
2022年夏、「学びを変えるICT・いちむら事例報告会」に登壇した高校1年生2人組のプレゼンテーションはじつに見事だった。
ICT先進校であるということを知った上で入学し、4ヶ月足らずのあいだに体験したワクワクする学びに、中学校時代にはなかった充実感にひたっていることが、直前まで共同編集で作成し続けていたというプレゼンテーションの端々から感じられた。
そして、愛知県内のみならず全国から参加していた教員や視察に来ていた県会議員の先生方を前に、かけあいを交えながらにこやかに発表を展開した高校1年生2人組が最後に持ち出したフレーズが「眼精疲労」だった。
最後にクスッと笑ってもらうためのユーモア精神であるという側面が多分に感じられるわけだが、聞いていた大人たちのあいだに「だよね〜」という慨嘆と安堵(?)の空気が流れたのを覚えている。
「生徒の健康をそこなう恐れがあるから、やっぱりICTの推進はほどほどにしなければならない」「あんまりガツガツICTを推進しちゃダメだな。これまでやってきたアナログの授業も大切にしなくては」というわけだ。
短絡的な思考に陥っていると思われる会場の空気を察知した私は、手を上げてふたりに質問した。
「昭和時代に高校生だった私は、県内有数の進学校に通っていましたが、多くの級友と同様に、授業中はしばしば居眠りをしていました。居眠りをしても、試験前になったら誰かにノートを借りて教科書や参考書を読みながら勉強すれば、何とかなっていたからです。眼精疲労を起こすほど学習に没頭することなど、あり得ませんでした。そこでお二人に聞いてみたいのですが、眼精疲労を起こさない中学校時代のような学校生活と、眼精疲労を起こすけれど楽しく学べているという現在の学校生活と、どちらにするのかを2学期から選べるとしたら、どちらを選びますか?」
誘導尋問じみていたが、言うまでもなく、答えは後者であった。
未
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