パリのレストラン 1. ル・ジョンティ Le Gentil (26 rue Surcouf)
満腹とは、いいものだ。
パリに来て三年が経ったが、ときには気の滅入ることもある。そういうとき、ひとを文字通り「満腹」にさせてくれるお店がある。
Le Gentil ール・ジョンティー はパリの中心部、アンヴァリットから西を南北に走るシュルクフ通りにあるお店。
一昨年の10月にオープンして、もう1年半近くになる。もともとブルゴーニュ地方ボーヌ(Beaune)にあるロワゾー・デ・ヴィーニュでスーシェフをされていた熊谷文敏シェフが、マダムとふたりで切り盛りされている。
シェフの経歴とインタヴューはこのリンクがとても詳しい。 https://chefz.jp/magazine/2019/20190417.html
最初に季節の野菜を使ったスープ(Velouté)が出てくる。夏場は冷製、冬場はあったかく、野菜の旨味がたっぷり感じられる。この時はカボチャ(Potimarron)だったような。
スペシャリテはこの豚足(Pied de porc)。豚足といっても一般的にイメージするあの豚足ではなく、挽肉にした上で網脂で包まれ、肉汁を煮詰めた濃厚なソースでいただく。うまし。付け合わせはその時々で変わる。
他にも鯛のカルパッチョやタコ、季節によってはフォアグラや白アスパラガスなどもメニューにあがる。
メインは肉、魚とも抜群の火入れ。もちろん好みに合わせて調節してもらえる。写真は子羊(Carré d'agneau)。どれを注文しても外すことはない。
いつも料理にあわせてたっぷりワインも飲む。みんなでワイワイ楽しく食べて飲んだときには、言いようのない満足感にひたることができる。デザートも忘れずに。ふんわり、時に濃厚なチーズケーキや、ガトーショコラ、またとろっとろの杏仁豆腐(!)が頂ける。
お昼は23ユーロの前菜+メイン+デザートのランチ、夜はアラカルトでの注文になる。
毎度、たくさん食べて、飲んでから帰ると、サン=ドミニク通りを曲がったところでエッフェル塔が現れる。友人たちとはここでよく別れることになり、ひとり夜道を帰っていくが、時にはエッフェル塔がシャンパン・フラッシュで瞬く。ル・ジョンティに集う人々の温かみと、一人で暮らす日々のあいだで、エッフェル塔がきらめく。しかしそんな瞬間も束の間、酔った頭でどのように家に帰ればいいかを考えないといけないのだが。
またパリが活気を取り戻すことを願って。