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モードとシンプルの哲学

三菱一号館美術館で開催されている『ガブリエル・シャネル展』に行ってきました。

シャネルという女性の考え方とか感性がとても好きで、その世界観に浸れて本当に幸せだった。

シャネルというと派手な芸能人やお金持ちのマダムが持っているというイメージがあるかもしれません。

「エレガンス」というイメージはあっても「シンプル」というイメージなんてないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

でも彼女はこの世で最初にシンプルな美しさを追求した女性と言っても過言ではありません。

もう、本当に良すぎて展覧会図録も買ってきました。
こちらも引用しながら、展覧会に行ってきて色んなことを再確認したので、今回はそのことについてまとめてみようと思います。

ガブリエル・シャネル展図録(発行:三菱一号館美術館)



私も最初はシャネルを誤解していました。
トップブランドの中でも一際ゴテゴテ感があるというか。
バブリー感があるというか。

キルティングのバッグにツイードのジャケット、香水N°5の香り。

ブランドの歴史を知らない私はその良さが全くわかっていませんでした。


そんな私がシャネルに興味を持つようになったきっかけは、ファッションの専門学校に通っていたときにシャネルのコレクションの裏側ドキュメンタリーを授業で見たことです。

裏側での色々な人の努力を見て、シャネルってこんなにいろんなことが考えられていて計算されているんだってことを知りました。

(それはシャネルだけでなくどこのブランドも考え計算され尽くされているんだろうけど、その当時の私はそんなことも知らなかったのです。)

そして、時のシャネルのヘッドデザイナーはモードの帝王カール・ラガーフェルド。

奇抜ではない。でも圧倒的なセンスであることはわかる最先端のデザイン。私にはカールのデザインの説明をする語彙力がないんだけど、上品で洗練されている彼の服は本当に美しいと思いました。
(ぜひ検索して観てほしいです。)

そうやって、カールのデザインに夢中になって色々調べているとやっぱりシャネルの創業者ガブリエル・シャネルに行き着くわけです。



ガブリエル・シャネルの凄さを理解するには当時の時代背景を理解する必要があります。

彼女が活躍し始めた20世紀初頭、まだヨーロッパ貴族の女性たちはコルセットで身体を締め付け、その上から華美な装飾がされたドレスを着て、これでもかというほどのアクセサリーを身につけていました。

そこらへんの時代背景については映画の
●『ココ・シャネル』(シャーリー・マクレーン主演)
●『ココ・アヴァン・シャネル』(オドレイ・トトゥ主演)
を観るとよくわかります。

もちろん私はどちらも映画館に観に行きました。

ちなみに「ココ」とはガブリエル・シャネルの愛称です。

どちらの映画でも、飾り立てすぎている貴族女性たちの装飾を減らし、シンプルにしていくほうがエレガンスであり魅力的であることを提案していく場面が出てきます。

過度な装飾を減らし、シンプルな美しさを追求する。
それがシャネルのファッションの真髄だからです。

でもそれが時代的にどれほど凄い革新的なことだったか。
きっと今を生きる私たちには想像もつかないぐらい新しいことであり、実際「地味だ」などと賛否両論あったそうです。

余分な装飾を取り除くと、シャネルは、飾り気のなさを強調したシンプルな形態に加えて、何よりもまず、女性の身体を尊重した柔らかく滑らかな衣服を提案し、女性たちがゆとりを持って動けるようにしたのである。簡潔さと正確さの見事な融合を特徴とするこうした構想が、彼女がそのキャリアを通じて大切にし続けた、新しい上品さの基礎となった。〜新しいエレガンスに向けて〜

ガブリエル・シャネル展図録p17より引用


女性たちを色々な意味で縛り付ける余計な装飾を取り除き、当時は男性服に使われていた柔らかい素材のジャージー生地などを取り入れたり、コルセットがなくても女性が綺麗に見えるパターンをひくことで、女性の動きやすさと社会進出を促したと言われています。

事実、ガブリエル・シャネル自身も当時の圧倒的な男性社会の中で活躍し続けた女性です。

彼女は男性のドレスコードから着想を得ると、ダンディーたちの上品さと似た、女性的な上品さの構想にいくつかの点で関係する、シンプルかつ洗練されたシルエットを作り上げた。彼らダンディーたちと同じように、シャネルにとっても、上品さとは、服の着こなし方以上に一つの生き方であり、細部に宿るものである。〜現代性とシック〜

ガブリエル・シャネル展図録p41より引用


これまで私は色々なところで「シンプルが好き」と言ってきたのですが、それはまさしく2つの映画で観た、ココ・シャネルが鋭い視線で余分な装飾を取り除いていくシーンに大きく影響を受けています。


飾り立てられすぎているのは好きじゃない。
でも、ただ味気のないシンプルも好きじゃない。
エレガントであり、ソフィスケートであり、シックであるためのシンプルが好きです。


二つの劇中のココ・シャネルの鋭い視線と感性が、私のシンプルの指標となっています。



ガブリエル・シャネルのデザインは常に計算され尽くしています。

例えば、バイカラー・シューズ。
全体はベージュでつま先だけ黒でデザインされています。

これはベージュによって脚を長く見せ、汚れやすいつま先は黒にしたそうです。


「靴が4足あれば、世界一周できる」といシャネルの言葉。

彼女が生きた時代背景を考えれば、これはかなりミニマリズムな発想だと思います。

それができるのは計算された実用的なデザインを彼女がしているからです。

「靴が4足あれば、世界一周できる」。レイモン・マサロが伝える、このシャネルの発言に従えば、以下の各状況に応じた靴というものが存在している。つまり、日中のあらゆる場面にはつま先部分が黒い一足、夏の日にはマリンブルーの一足、より〈スポーティ〉な格好には栗色の一足、夜には金色の一足が適している。これは、服飾品とは上品でありながらも実用的で、女性の暮らしに寄り添ったものであるべきだとすることの革新性の表れである。

ガブリエル・シャネル展p168より引用


これを読んで「そう、そう、そう、そう!」って思いました笑。


持っていて気分が上がるようなデザイン性でありながら、でもTPOに合わせられる実用性も兼ね備えている物。こういう物選びをすれば、無駄な物は増えないよなぁと。


この文章も今後の私の買い物・物選びの指標になると思います。



私は手帳好きなのでちょっとだけ手帳の話を混ぜると、手帳デコをするとき、ページ全面をギチギチに埋めたデコのほうがバランスとか考えなくて楽です。

でもそこで余白を作って絶妙なバランスを探しながらシンプルな手帳デコをするほうが私は洗練されているようで好きです。


シンプルな手帳デコってどういうこと?
そもそもデコらないほうがシンプルじゃない?

そう思うかもしれませんね。


シャネルの服はシンプルです。
そしてそこにエッセンスとしてアクセサリーを足していきます。
あくまで過剰になりすぎないようバランスを取りながら。

今回のガブリエル・シャネル展でも、シャネルのシンプルな服に合わせられた豪華なアクセサリーたちが並んでいました。


引き算、引き算のシャネルのデザインだけど、ちゃんと足し算もするのです。


私は今主に使っている手帳がロイヒトトゥルムとトリンコなんだけど、2冊とも余計な装飾を省きながら機能的で実用的でシンプル。
だけど、どこか洗練さがあります。


そこにアクセサリーを足すようにシールを貼ったりして楽しむ。
シンプルな中にもモード感を取り入れながら。


手帳を実用的にもファッショナブルにも使いたい。これが私の手帳使いのバランスです。


最近の手帳の中身



まだまだ語ろうと思えばキリがないんだけど、こんな感じで私はシャネルという女性の思考とか感性が本当に大好きです。


シャネルは本当に奥深くて、このnoteではほんの表層しか語れていません。


三菱一号館美術館で開催されている『ガブリエル・シャネル展』。


当時の本当に彼女が触れたであろう展示物、美しい解説文、当時がリアルにわかる映像。そして会場がとても良い香りで三菱一号館美術館の美しい建物と相まって空間自体が幸せでした。


この展覧会は9月25日まで開催されているので、ぜひ東京近郊の方は行ってみてほしいな。


ちなみに展覧会に行ったタイミングがちょうど良くて先着順で配布されていた香水N°5のサンプルをもらえました!
(かなり人気だから無くなるの早い気がする!本当に運が良かった!)

展覧会で貰ったN°5のサンプル


マリリン・モンローがベッドでは何を着ていますか?という質問に対し「寝る時はシャネルの5番を数滴だけ」(つまり何も着ていないの意)と言ったのは有名すぎる話ですよね。


まぁ、正直私はまだまだ未熟なので爽やかで軽い香りのほうが好みなのですが、それでもやっぱりN°5は憧れで嬉しいです!笑。



ついでですので、ここからはちょっとモードやトレンドについて書いていきます。


インスタを見てると20代の若い子たちにとってはどうやら今、財布はセリーヌがおしゃれらしいですね。
立て続けにセリーヌの財布の購入紹介を見ます。
それもインフルエンサーたちも含めて。


もうね、悲しいけど30代の私にはセリーヌの財布を選ぶという感性がなかったのよ。
一体何が起こっているの?!と思ってとりあえずセリーヌのクリエイティブディレクターを調べると、なんとエディ・スリマン。


このエディ・スリマンはディオール オム、サンローランのクリエイティブディレクターを歴任してきたトップデザイナーです。


最初のほうで私がシャネルに興味を持ったきっかけがカール・ラガーフェルドと書きましたが、カールは13ヶ月で42kgの減量に成功したことがあります。


その減量理由は「エディ・スリマンのディオール・オムを着たかったから」。モードの帝王がそれほどまでに認めるデザイナーです。


私が福岡に住んでいた頃、百貨店の岩田屋にディオール オムが入っていたんだけど、販売員さんが本当に全員カッコよかったんですよ。


全員黒髪で背が高くてシュッとしていて、全身黒でコーディネートされていて、スタイルとかオーラの全てがカッコよかった。


入る勇気はなかったのですが、よく友達と「ディオール オムの前を通ろうよ!」って言ってキャッキャしてました笑


たぶん当時の福岡で1番かっこいい男性が集まっていたのがディオール オムだったと思います。(異論は認める。)
そしてそれを手がけていたのがエディ・スリマンだったのです。


そこから時は流れ。


なんか最近ファッション誌で「サンローラン」って見かけるな。おしゃれだな。イブ・サンローランに名前が似ているけど妹ブランドかな。どういうこどだろ?って思っていたんですよ。


それをよくよく調べたらエディ・スリマンがクリエイティブディレクターになりイブ・サンローランからイブを取っちゃったと。
ロゴも変えたと。


「あのディオール オムのエディ・スリマンか!やること大胆すぎるでしょ!」って驚きましたね。


でも、イブ・サンローランの頃は確かにちょっと古くてバブリーなイメージでしたが、サンローランパリになってからは現代のおしゃれなブランドってイメージになった気がします。


もしかしたら記憶にないだけかもしれないけど、あんまり(VogueとかELLEではなく一般的な)ファッション誌のページでイブ・サンローランを見た記憶がないんですけど、今普通にサンローランはたくさん見ます。


「あ、これもサンローランか、可愛い。」って気づくようになるだけでもすごいと思うのです。



そしてまた時は流れて今、なんで若い子たちの間でセリーヌの財布が流行っているんだろうと調べたらまたエディ・スリマンが出てきたわけです。


彼の感性って本当に凄いんだなぁと思ったと同時に、今のモードを知る上で外せない人物なんだなと思いました。


セリーヌの財布を買っている子たち全員がエディ・スリマンのことを知っているとは思えません。
でもエディ・スリマンの名前を聞いたことがなくてもみんないつの間にかエディ・スリマンの影響を受けている。


あのカール・ラガーフェルドが影響受けるぐらいですから、今のインフルエンサーたちが影響を受けないはずがないですよね。


こんな風にやっぱり流行って源流があるのです。


ガブリエル・シャネルにカール・ラガーフェルド、そしてエディ・スリマン。


偉大なデザイナーたちのことを知るのが私はとても楽しいです。


似たようなお話でこんなことも書いています。


最後までお読みくださりありがとうございました。



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noi
\\ 読んでくれてありがとうございます// これからもより良い投稿ができるようにがんばります(^ ^)