藤が丘から名古屋駅まで歩いた時の話
名古屋市営地下鉄の御堂筋線と言えば何線なのだろうか。路線図を眺めていると、鶴舞線はどうもそういう意味ではパッとしない。いや、人口の多そうな場所は抑えてあるから、便利に利用している人は多いのだと思う。更に言えば名鉄電車とも相互乗り入れをしている路線なだけあって、果ては豊田市、犬山市、と色々な所へ行ける。とは言え名駅にも栄にも行けないとなれば、流石にそれを名古屋版御堂筋線扱いは出来ないだろう。
ならば桜通線はどうか。ううん、これは名駅には行けて良さそうなのだが、栄へ行けないのが問題だ。尤も、久屋大通で降りれば栄までは歩いてすぐだから、実用的な問題はあまり無いのかもしれない。だが、やはり東山線の、名駅、伏見、栄、と並ぶこの強者感には敵わないだろう。
そう思うと、名古屋版御堂筋線は東山線で差し支え無いかもしれない。いや、当然こじつけである。御堂筋線はあの大阪の御堂筋線を以てしか御堂筋線と呼ぶ事は出来ない。とは言え少々のこじつけは許してほしい。お遊びの領域だ。
実際にインターネットで調べてみたら、どうやら名古屋市営地下鉄の中では東山線の利用客が一番多いらしい。成程そうだろう。そうこう色々な事を調べていると一回東山線の沿線風景を見てみたくなって、肌でその雰囲気を感じたくて、ならば一度歩いてみようかという気持ちになってきた。なので今日は藤が丘から名駅まで、昼過ぎから夕方にかけて歩いてきたのである。
藤が丘、本郷、上社、と続く歩き初めは閑静な住宅地が広がる。まさに大都会の少し外、そう云う場所に有りがちな閑静な雰囲気だ。こういう話をしては良く無いのかもしれないが、ここに住んでいる人達の平均所得は恐らくそこそこな数字になるだろう。関西で言う芦屋市とか西宮市とか、そう云う雰囲気とはまた少し違っているのだが。とは言え住みたい街ランキングとかそういう事をやれば、この一帯は間違いなく上位に入ると思う。
星ヶ丘を過ぎて東山動物園を左手に見ていた時分に、北京オリンピックフィギュアスケート団体の日本代表が銅メダルを獲得したという速報が入ってきた。昨夜の小林陵侑選手の金メダルに続く朗報である。我々一般人にしてみれば変わっているのは報道機関のその報道内容しか無いのに、どうもこのオリンピック期間というものは心がそわそわする。やはり四年に一度と云うこの間隔が良い。オリンピックの演出で一番素晴らしいのは、何か特別な映像でも花火でも何でも無くて、この間隔であるように思う。この間隔が、人々に面白さ、或いは感動とかそういうものを与えるのではないか。
昨今、オリンピックを始めとするスポーツ大会に何かと政治的な問題が絡む事が多々ある。しかしこれは今の人類には仕方の無い事だろう。これだけ知名度のある大会だから、何かと政治が絡む事は最早不可避である。いや、理想論的に言えばそんな仕方がないとかそう云う事を言いたくは無い。そう云う意味では私もスポーツ大会に政治的な問題を絡めるのは大反対だ。全くけしからん事だと思う。とは云えそこは人類。愚かなものである。現実は中々そう素敵ではない。そして私個人の力で現実を綺麗に掃除出来るとは思わない。だから私は特別何か憤慨して行動を起こしたりはしない。そんな事をしても疲れるだけだ。
とは言え私は私個人として、その理想を追いたい。そして一人でも多くの人が、そっと、静かに、陰ながら、そういう理想を追ってくれれば嬉しく思う。日本でも、北京オリンピックについて何かと否定的かつ消極的な報道が色々とされていたように思う。あんな報道を真に受けていればすっかり北京オリンピック等白けてしまいそうだが、私はそういう報道の負の影響を受けたくは無い。オリンピックはオリンピックである。私は選手達の健闘を祈り、存分にこの雰囲気を楽しむつもりである。これが一般人としての、オリンピックに対する出来る限りの、いや、何よりの貢献であると思っている。
そんな事を考えていたら早も栄、伏見を過ぎて名駅が目の前に見えてきた。閑静な住宅街から池下、今池、千種…と少しずつ都会が近付いてくるこの感覚は、やはり歩かなければわからないものであったように思う。特にやはり栄の賑わいは流石は濃尾平野一の繁華街だ。車も多いし、歩く人も多い。お店からは音楽が聞こえる。ホストクラブの宣伝トラックが路駐している光景とか、そういうものは田舎では見る事が出来ない。
諸々の地名ももう忘れる事は無いだろう。すっかり東山線博士になった気分である。とは言え名駅から西側は少しも歩いていないのだが。また次何かの機会があれば歩いてみても面白いかもしれない。それにしても大変良い名古屋探検になった一日であった。因みに寄り道を含めた合計の距離は19km。これを長いと思うか短いと思うかは読者の皆様の感性次第である。
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