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大津サービスエリア
父親と祖母の家に行っていた。祖母からも祖父からも伯母からも優しくしてもらい、ゴロゴロとうたた寝をしたり、焼肉を食べたりしていた。そういう時間からの帰り道に、名神高速に乗っていた。夏休み的な雰囲気の漂う今日であるが、世間は平日であり、日本の大動脈であるこの道路には大型車が何台も走っていた。その大型車もまた多様で、ナンバープレートには「宮崎」とか「高知」とか「神戸」とか書いてあった。まだ日は沈みきっていなかったものの、視界には街灯の光や各車両のライトが入った。私は何かのドラマのように、このまま道を延々と進んで遠くまで行きたくなった。家に帰りたい気持ちはある。しかし帰らずに祖母の家にずっと居たいとも思った。そしてそのどちらでも無く、道の続くままに、全く知らない所へ行ってみたいとも思ったのである。
途中で大津サービスエリアに寄った。このサービスエリアには見晴らしのよい場所があり、そこから大津市内や琵琶湖を眺める事が出来る。ここへ来てもまだ日は沈んでいなかった。だが、見えていた景色は夜景であった。多くの建物から多くの光が見えた。その光の数だけ人がそこに居るのだろうと思った。このキラキラした景色も、人が作ったのだろうと思った。しかし、私はこの景色を見ても、一体自分がどこへ行きたいと思っているのかが全くわからなかった。仮にこの名神高速を延々と進んで青森辺りまで行ったとしても、そこでもまたどこかへ行きたいと思うに違いないと思った。キラキラはしているが、全てが危うく見えた。一方でまた、確かに綺麗な景色ではあった。祖母達の優しさも、宮崎から来た大型車も、キラキラしている大津市内の灯りも、確かにそこにあるのに、全てが一体何なのかがわからなくなった。
人という弱い存在が、弱いながらも何が出来るのかを、知りたい。救いを求め、満たされたくて、確かめたくて、今日も生きている。そうやって、この夜景にずっと何かを問うていたら、いつの間にか結構な時間が経っていて、もう日が完全に沈んでしまった。父親が駐車場に止めてある車で待っていたので、そこへ向かう事にした。すると、今更であるが、山から吹き下ろす風の影響か、この高地は随分と涼しい場所なのだと気が付いた。結局何もわからなかったが、この涼しさはちょっとだけ嬉しかった。そして、今日も今日だけの事を振り返ると楽しい一日であったと思った。何より、今日も誰かに優しくしてもらった。全てが危うく思えると書いたし、実際思ったが、こういう優しさや、大津サービスエリアの涼しさを、単純に危うさだとしてしまうのはあまりにも悲しいと思った。確かに、色々な悲しさがある。が、今日もまたとりあえず、このぬくもりを抱き締めながらゆっくり寝ようと思った。
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