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【ショートショート】「夏休みの自由研究」~古蓮町物語シリーズ⑥~

今回の登場人物

迫沼美森さこぬまみもり
 今回の主人公。小学5年生。お父さんの都合で夏休み中、古蓮町のおばあさんの所に預けられている。おばあさんの家は駄菓子屋『羽屋商店はねやしょうてん』。小畑琉と友達。詳しくは『当たり付きアイス』の回を参照。

小畑琉おばたりゅう
 小学5年生。お母さんの都合で夏休み中、古蓮町こはすちょうに住むおじさんの家に預けられている。迫沼美森と友達。詳しくは『当たり付きアイス』の回を参照。


 おばあちゃん家に来る前に、夏休みの宿題はだいたい終わらせてきた。あとは自由研究を残すのみだ。

 何をしようかな?

 ずっと考えていたが、おばあちゃん家に来て色々見ているうちに思いついた。

 おばあちゃん家にはたくさんの不思議なものがある。
 これを自由研究の題材にしよう。


夏休みの自由研究 

5年1組 迫沼美森

 夏休みに行った田舎のおばあちゃん家にあった、めずらしいものを紹介します。

①ブラウン管テレビ

 すごく古いテレビです。画面は小さいのにすごく厚いテレビでした。
 昔はテレビが見れたそうですが、今はつけてもザラザラの画面が見えるだけです。おばあちゃんは『砂あらし』と言っていました。
 右側にあるつまみの上に『VHF』と書いてあって、ガチャガチャ回してチャンネルを変えることができたそうです。下のつまみには『UHF』と書いてあって、なめらかに回ります。こっちもうまく合わせると番組が見れたそうです。

②黒電話

 数字のとなりに穴があります。押しても何もなりません。
 受話器を持って、穴に手を入れ、ぐるっと右に回転させ、0のとなりにある金具にぶつかるまで回してダイヤルするそうです。はなすと勝手に元に戻ります。でも、おばあちゃん家の電話はこわれていて電話できませんでした。

③ラジカセ

 ラジオが聞ける道具です。あと、音楽とかも聞いたり録音したりできるそうです。まんなかにあるブタの鼻みたいなところに、カセットテープというものを入れてボタンを押すと音楽が流れます。

④カセットテープ

 これをラジカセに入れます。中にグルグル巻いてあるテープに録音されるそうです。入れて聞いてみたら、すごくザラザラな音でしたが、音楽が聞こえてきました。

感想
 見たことがないものばかりでびっくりでした。もっとたくさん色々なものがありそうなので、また探して研究したいと思います。

「みーちゃん、お友達が来たよぉ~」
 おばあちゃんの声が聞こえた。

 そうだ、今日は琉くんと町の商店街を探検しようって約束していたんだ。

「はーい、今行くー」
 私はノートを閉じてお店の方へ向かった。
「琉くん、おまたせ!」
 琉くんは日焼けですごく真っ黒な顔をしていた。

 海にでも行ってきたのかな?
 いいなぁ。私も海行きたいなぁ……と思ったら、おじさん家の畑仕事を手伝っていたそうだ。

「これ、みんなで食べてって。おばさんが」
 琉くんは袋いっぱいにトマトを持っていた。
「あららら、なんとなんと」
 おばあちゃんは誰かから物をもらうと、だいたいこう言う。

 この前はトウモロコシをご馳走になったし、今日はトマト。琉くんのおじさん家の畑は、食べ物がたくさんある巨大な冷蔵庫みたい。
 黄色、赤ときたから、次は青い野菜かな?

 そんなことを考えながら、私は靴を履いて外へ飛び出した。
「ほれ、みーちゃん、帽子かぶって行きな」
 今日も太陽の光が降り注いでいる。真っ青な空だ。
「はーい」
 おばあちゃん家にあった麦わら帽子。夏っぽくて大好き。今は私のお気に入りアイテムだ。
「気を付けて行って来るんだよ」
 笑顔で手を振るおばあちゃんに、私も大きく手を振り返す。
「はーい。行ってきまーす」
「じゃあ行こっか!」
 生き生きした琉くんの笑顔。
「うん!」
 私も負けないくらい元気に返した。

 ワクワクしながら歩いていると、琉くんが話しかけてきた。
「ねぇ、美森ちゃん家の中で何してたの?」
「夏休みの自由研究だよ」
「……僕……夏休みの宿題やってない。一つも……」
 琉くんのテンションは一瞬で地の底へ落ちていった。

 あ……言わない方が良かったかな?

 静かになってしまった琉くんを心配していたけど、商店街に着いたら一気に戻った。

「わぁ!店がいっぱいあるよ!早く行こ!」

 変わり身速すぎでしょ!
 そんな琉くんが可笑おかしくて、私は思いっきり笑った。

「どうしたの? 何か面白いことあった?」
 不思議そうにしている琉くん。
「うん。ありまくり」
 笑いすぎて涙が出てきた。
「なになに? 教えて~」
 私は何も言わずに笑っていた。
 そのとき、首をかしげていた琉くんの顔が、突然パッと明るくなった。
「あ!自由研究、この商店街にしよっかな」
 琉くん名案!それいいかも。

 この町の商店街は珍しい店ばかりだ。
 私も自由研究商店街編を作ろっかな。

 それならなおさら気合いを入れて……

「よおし!探検開始ぃ~!」

 目の前に広がる商店街。
 これから始まる冒険が、キラキラ輝く宝石箱のように感じた。


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