【ショートショート】新しい時代はいつだって/初めての
これの続編です!
前の文を簡単に説明すると、
『パラテラフォーミング前後の火星に住んでいる地球人の話』
です。
今回の作中に出てくる『皮膜』は超軽量宇宙服みたいなものと思ってください(※詳しくは前作参照)
初めての赤い夕日は、僕たちにとてつもない変化をもたらすらしい。
パラテラフォーミングしてから、外に行く時も皮膜を装着する必要がなくなった。ほとんど酸素がなかった火星に、地球と同じ環境が与えられたからだ。
植物の栽培もできないし、動物の飼育もできず、食料はすべて地球からの輸送に頼っていたけど、これからは緑にあふれた星にしていく?……らしい。
学校の先生が熱く語っていた。
僕には何のことだかよく分からないけど、『野菜をこの星で作る』と聞いた。
そんなことができるのかな?
「地球ではそれが当たり前だったのよ」
お母さんはそう言うけど、僕は昼と夕方が逆転したような太陽にすら、まだ違和感を感じている。
昼間の空が青っぽくて夕方の空が赤っぽいなんて……。今までと真逆なんだもん。
「だけどな、まずは腐葉土を大量に撒いて土壌を改良しないとな」
お父さんの言葉にお母さんが首を傾げる。
「腐葉土?なんで化学肥料を使わないの?」
フヨウド?カガクヒリョウ?何を言っているのか分からない。
「生態系がほとんどないこの星では、分解者の存在が必要だからな。理想的な里山一つの生態系を分析して動植物をこの星に移植するらしい」
「まぁ、そんなことができるの?」
何を言っているのか全然分からなかったけど、これだけは分かった。
お父さんもお母さんもすごく楽しそう!
そういえば学校の先生も楽しそうだった。
不確定な要素。
手探りの生活。
それが楽しいみたいだ。
みんなで意見を出し合って色々決めている今の世の中が。
「分からないことばかりだけど、やってみよう!」
そう言いながら、みんな手を取り合って前に進んでいく。
大人たちがワクワクして生活しているように見えた。
今、地球では、世を儚む人、自分が誰かもわからない人、何もしたくない人、人に関心のない人がたくさんいるらしい。
自分の生きる場所を作る。
それが他人の場所にもなる。
自分の働きが人のためになる。
人の働きが自分のためになる。
それが実感できれば、もしかしたらみんな生きがいを感じることができるのかもしれない。
今の火星での暮らしにはそれがあるんだ。
僕はそう思った。
『不可能だ』
そう言って頭から否定する人はここにはいない。
『できるの?』が『やってみよう』に変わる。
僕はお父さんお母さんたち、火星に住んでいる大人がカッコよく見えた。
そして、僕もその一員になれることを誇らしく思った。
新しい時代は『無理』から生まれる。
新しい時代は『できるわけがない』から生まれる。
新しい時代は『可能性を信じる心』から生まれる。
誰だって最初はみんな『初めて』なんだから。
終
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