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上田誠さんの創作論。機能デザイン、骨格、先輩に学ぶ姿勢

「ほぼ日の學校」アドベントカレンダーです。

今回視聴した授業

"よそ者"でもギリ勝つための裏ワザ創作論!
上田誠 (脚本家、演出家、ヨーロッパ企画代表)

未知の大舞台で、ギリギリ"勝つ"にはどうすりゃいいのか。劇団ヨーロッパ企画の上田誠さんに裏ワザを教えてもらいました。演劇、アニメ、映画、ドラマ、大喜利ーー。場所を選ばない上田さんの軽やかなゲリラ戦。キーワードは京都、デザイン思考、任天堂、理系の頭、大きく間違う、変な骨格、です。まずは、日本語版台本を手がけた『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のお話から。

とてもいいインタビューでした。はじめのうちは、創作に関する話が、日本語として理解できるものの、どう作品に落とし込まれていくのか、よく理解できませんでした。しかし、上田さんの子どもの頃のお話、これまでの実績に触れられた後、映画、ドラマ、演劇への活かされ方を聞いて、納得できた気がします。一気見すると疲れるかもしれませんが、特に最後のほう(「役との向き合い方」)は、なるほどこうやって作品に結実するのか! と思えます(作れるわけじゃないですが)。

ほぼ日乗組員のインタビュアーの方は、上田さんと「ヨーロッパ企画」に詳しいので、深掘りできたインタビューになったんだと思いますが、上田さんのことを知らなかった私が見ても、とてもおもしろいインタビューでした。

授業で学んだこと

ゲームに学んだ機能によるデザイン

子どもの時には、一年中、『スーパーマリオブラザーズ』のことばっかり考えていたことがあったそう。自由帳にステージのマップを描いたり、ビデオデッキ2台で、自分で録画編集して裏技集を作ったり。そうした経験は、劇の機能面からのデザインにも活きているそう。

(任天堂の宮本さんに聞いた話)
とにかく右に行くゲームだ
というルールを徹底して
ゴールテープを縦にしたら
旗になって
クッパも倒すんではなく
クッパの向こうにある斧を取ったら
その斧で橋が切れて落ちる
ようは徹底して
右に行くというルールを
一番右が優位
一番右に行くのが目的
マリオは左から始まるというのを

(中略)

舞台の場合 窓の外が未来で
未来がだからなんとなく
上手というか右の方にあって
「グラウンドに行こうぜ」と
グラウンドは下手の方にあって
過去と未来の方向を
一致させているんですよ

マリオがゲームが
だいたい左から右に進むし
音楽の再生ボタンも
右向いているし だいたい物事が
右に進むかというなかで
未来はそっちにあったほうが
なんか...というデザインを
実は裏でやっていると
たぶんお客さんは気づいてないけど
整理されて見ているような
気がするんですよね

多ジャンルに取り組むこと

上田さんは、扱うジャンルごとに特徴をつかむ。まずジャンルについて勉強するそう(ここをもっと聞きたい!)。どういうメディアなのか、ジャンルごとの特徴、制約をしっかりおさえる。さらに細かく、映画なら、邦画、洋画の違い。ドラマなら、放送時間帯の違い、配信とテレビの違い。

インタビュアーの質問に、答えにくそうな場面もあるけど、何を参考にしたか、何に驚いて理解したかということをしっかり記憶されているあたりがすごい。創作を行う場、ジャンルについて、その周りの環境や制約をものすごく意識されてる。

新しいものは、これまでに見たことがない "骨格" をしている

この話がまさに創作する上での骨格でもあるわけですけど、現時点では、私が自分の言い方に直せないところ。そういうものを上田さんは、言語化して、目指してる。骨格を意識できているから、演劇の他のジャンルとの違い、見せ方、見え方、の違いがあっても、おもしろいと感じる部分、変えていい部分がぶれないのだろう。

表層だけ見ちゃわないように
最後 仕上げなきゃいけない
なんかその表層をちゃんと面白く
バランスよく整えようとすると
骨がまともになっちゃうんですよ
なんか骨格が異常じゃないと
見たことないものにならないんで
っていう
だからその理想はそうですね
表面の飾りは
非常に楽しくにぎやかで
でも骨組みよく見てみたら
「めちゃくちゃ変じゃない?これ」
っていうのが
一番僕はやりたい形ですけどね

「世の中にないものを作りたい」という動機は、新しい骨格を見つけること、作ること。

言語と行動原理

言葉があれば、キャラクターもそう動くという話。ヤクザものだと、「ついてこい」って言えば、「誰がついてくかこのやろう」と反応する。逆に「ついてこれねーだろ!」っていうと、「余裕だ、バカ!」となる。

『ビルのゲーツ』っていう
これはビジネスもので
もう本当に横文字をすごく使うような
IT系のスタートアップ
みたいな人らが主人公なんですけど
そういうビジネス語の言葉遣いって
全てをリソース化するっていうか
例えばなんかヤンキー語でいうと
「気合」みたいな
ことだったりするんですけど
それを「モチベーション」
っていう言葉に言い換えられ
「モチベーションコントロール」とか
資源としてそれを
コントロールしようという
全てをプラスに資源化して捉えて
コントロールできるものとして扱う
というのがビジネスの用語なんだなと
例えばなんか罰ゲームみたいなので
バッて手がしびれた
みたいなシーンがあるんですけど
「この経験をさ
次にどうやって生かすか考えようよ」
みたいな(笑)

茶化されてるけど、まぁあるあるですね。

後輩であること

インタビューを見ながら、上田さんが、新しいことを学ぶ時のことを聞きたいと思っていたら、そのヒントがあった。

先輩って
先輩と見なすから先輩なわけで
先に別にすごいから先輩
ってわけじゃなくて
その人を先輩と見なすから
その人のすごさが生み出される
みたいなことも当然あって
だからなんかできるだけ
いろんなものを先輩と見てた方が
なんか自分のインプットの量が
増えると思うんですよ

人だけの話じゃない。過去の自分たちの作品も、超えなきゃいけないと思うと大変だし、自分たちも観客も、思い出補正された作品を超えることはできないこともある。これを先輩が作った作品として受け取れば、参考にできるところは参考にしつつ、今の自分たちでもっとおもしろくできる箇所を探せばいい。

この話は、自分のキャリアを見てもそういうことが言えるかもしれない。過去うまくいったこと、その栄光にしがみつくのではなく、過去の自分の実績も、先輩がやったことと思って客観的に見れば、見習うところは見習えばいい。環境も時代も違うので、同じような線上で成功はできない。

ただ上田さんは、年齢的にも、キャリア的にも、後輩です、って顔して縮こまってもダメになってきたそう。

バッファロー吾郎A先生が
それも僕の大切な先輩なんですけど
やっぱり割とはすに構えたというか
そういう立ち居振る舞いを
されてたけど
ある時期に後輩ができてきて
後輩が弾けるためには 自分が負担に
なってちゃいけないって気付いて
もうわざとぐらい
一番おどけるふうにしたって

後輩が過ごしやすいよう、でも、周りの人に敬意を示しつつ、仕事をしていきたいと思った。

感想

とても勉強になるインタビューでした。自分が取り組む分野について、しっかり知ること。骨格・構造を見極めて、変えるべきところと変えないものを見定めること。それを学ぶ時、すべてのものは、先達・先輩だと思えば、いいところに気づける。年齢や立場じゃなく。学びの多い回でした。上田さんの作品、見ようと思います。

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のーどみたかひろ
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。