人間の脳に騙されない! 頭の弱点を知り、思考ツールで克服する #マープス
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今回はゲスト回。関西大学・総合情報学部教授の植原亮さんです。科学哲学とその周辺がご専門で、最近はAIの哲学も研究分野の一つで、そうした専門に関わる中、批判的思考・科学的思考も専門領域ということだそう。
今回は、こちらの本(↓)の内容の紹介です。
大学の授業の教科書として使われていて、この本全体の約8割を、90分の講義×14回行っている内容を、です。
非常に楽しい授業でした。例として出されたことは、少しくらい思考ツールを知っている人なら、ちょっと考えれば、間違えることはありませんが、それはクイズだと思って取り組んでいるからです。これが、実際の仕事で出会う事象だと、間違えることはありそうですよね。
★今日のnoteでわかること
人間の頭の弱点を知り、思考ツールを使って弱点を克服し、思考する
スキーマとその呪縛(頭の弱点・批判的思考)
利用可能性バイアス(頭の弱点・批判的思考)
因果関係(思考ツール・科学的思考)
対照実験(思考ツール・科学的思考)
スキーマとその呪縛
スキーマ:問題を効率的に解決するためのひとまとまりの知識。ありがたい反面、思考を縛り、ものの見方を制限する。
例:ある電車に、おばあさんが乗ってきた。足も悪そう。しかし、誰一人おばあさんに席を譲らない。乗客もみな若く健康。なぜ譲らない?
⇒ 席が空いていた。/指定席車両だった など
(この文脈だと、勝手に満員の車両をイメージしなかったか?)
利用可能性バイアス
思い出しやすいものが、重要であると思いがち
例1:溺死は、屋内と屋外どちらが多い?
例2:死亡の発生件数は、殺人と自殺どちらが多い?
例1:直感的に川や海を思い浮かべる
例2:殺人のほうが、ニュースで目にしやすい
※テレビで米不足のニュースを見たら、無くなってしまうと感じ、スーパーの米の棚から米が消える
因果関係
例)
A:ボールが窓に当たった
B:窓ガラスが割れた
AがBを引き起こした。Aが原因でBという結果が起きた。
人は「因果関係」を見つけるのが、得意。問題は得意すぎること!
例)
A:雨ごいをした
B:雨が降った
A:きのこを食べた
B:おなかを壊した
本当にそれが原因か? 本当でない因果関係を見つけてしまう。
例)実話… らしい
・1998年、子どもがジャンクフードを食べる頻度と非行が関係しているという調査あり
・文部省は、「子供をキレさせない食事」の研究を予算化
⇒ 本当の因果関係か? 例えば、ジャンクフードを食べるのは貧困家庭で、食事を作る人が家庭におらず、外で食べるため、非行の機会に出会ったのでは?
※相関は因果を意味しない
対照実験
例)
・納豆ばかりしばらく食べていたら痩せた。
「食べたら納豆にダイエット効果があるか?」
確認するためには、
・2グループを用意
・実験群には、朝晩に納豆を食べてもらう
・10日間続ける
・前後の体重変化を実験群と対照群で比較する
⇒2つのグループの条件を揃える。本人たちの属性(例:年齢、性別、運動歴など)、10日間の過ごし方(起床時間、睡眠時間、消費カロリー など)
プラシーボ効果に注意!
効き目のない薬でも、効果のある薬を飲んだと思うだけで、効果が出る。効果のある薬と、効果のない薬(偽薬)を飲んだ群とも比較する
まとめ
人の頭には様々な弱点がある(スキーマ、バイアス)
因果関係を把握する(人は、因果関係が得意すぎて間違うことも理解)
相関は因果を意味しない
対照実験は因果関係を特定する強力なツール
調べたい条件だけを変え、他を揃える(プラシーボ効果も考慮してね)
Q&Aタイムでの先生のコメント
自分がこれが欲しいから、他の人も欲しがるにちがいない
(希望的観測、願望的思考)その施策がうまくいったのは、その原因が本当だろうか?
ちゃんと検証したか?思い込みを外すには、検証以外にも、他者の視点を借りることもあり。
感想
本当に因果関係を間違えることはよくあります。講義中、雨ごいの例を笑って聞いていましたが、本気で雨ごいした後に、雨が降ったら、施策が正しかったと思うかもしれません。勝手に因果関係を見だしたものが、時系列に並んでいると、本当の因果関係があるように感じやすいです。
テレビCMが流れて売れたら、テレビCMのおかげだったのでしょうか? 別の施策があったから、その施策が実を結ぶきっかけが、テレビCMだったかもしれません。ある施策+テレビCMがうまくいったのであって、次回、テレビCMを打っても売れないかもしれませんね。
もちろん、検証できることは検証し、測定できることは測定しますけど、それができてなくても、自分の頭に騙されたくはないものです。検証が難しい時は、他人の目を借りながら、そうした間違いを減らしていきたいですね。楽しい時間でした!