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母の味噌汁に出会うための「味噌汁づくりの旅」がはじまった

ここ一年ほど、味噌汁を作ってみたいと思っていた。
もちろん、小学生や中学生の時、調理実習で作ったことはあるだろう。しかしまったく記憶に残っていない。

子どもの頃、肉とご飯をモリモリ食べていた時には、味噌汁なんて、箸を濡らすためのものだと思っていたし、大人になってからも同じ考えだった。

数年に一度あるかどうかだけど、外で食べる朝食の味噌汁がおいしくてびっくりすることはあった(何かのご縁で高級なホテルに泊まった時など)。でも、そんな時は、他の食事にもっと驚いているので、味噌汁に強い印象は残っていない。正直、街の定食屋や牛丼チェーンで出される薄い味噌汁は、出す意味がわからないとさえ思っている。味噌汁は、ずっと料理としてまともに評価してなかった。

2021年の秋、実家の佐賀に帰る途中、福岡の大衆的な天ぷら屋さん(「天麩羅処ひらお」)で食べた味噌汁にびっくりした。
「めっちゃうまい!!!」
と思ったし、「なんか懐かしい…」とも思った。

母の味噌汁とは違うが、ひらおの味噌汁に近いものを感じたのだろう。ひらおで味噌汁を飲んでから、(あれ? もしかしたら、子どもの頃、飲んでいた味噌汁はうまかったんじゃないだろうか)と思うようになった。

いつまでも中高生男子の食欲ではない、ただの中高年なので、おいしければ、きっと味噌汁とご飯だけで満足できる日もあるはずだ。

おいしい味噌汁飲みたいな…

ここ一年ほど、心の奥にずっと味噌汁がひっかかっていた。

2022年、自炊をするようになっても時々、味噌汁のことを考えていたが、自分が求める味噌汁は遠くにあるもので、うまく作れる自信はなかった。

子どもの頃、母の味噌汁はだしから作っていた。煮干しが食料品がある棚のどこかにあった。時々、つまんでいた記憶がある。ある時からは、だしを取って作ってはなかったようだが、料理に興味がなかったので、実際、何が変わったのか知らずに過ごした。

母が作る料理で覚えているのは、シンプルだが、よその家では出ない独特の味だった。祖母から受け継いだもので、しょうゆの味が濃かった。砂糖やみりんも多く使っていたのではないだろうか。母独特の味の料理の一つに正月の雑煮がある。一番シンプルなバージョンは、ほうれん草と餅だけのすまし汁だ(餅は焼かずに一緒に煮たもの)。一人暮らしをするようになった2020年の正月、シンプルなレシピを参考に雑煮を作ってみたが、母の味には程遠く、どう再現していいかもわからなかった。その経験があったから、きっと味噌汁も絶対においしく作れないだろう、と思い込んでいた。あの味に近くなければ、作る意味もない、と。


2022年になってから自炊するようになって、レシピをよく見るようになったし、料理動画を割と見るようになった。そんな中、先日、土井善晴さんのTwitterでアナウンスされたオンライン講座を見かけ、仕事終わりに見てみることにした。

土井善晴さんは、

「ええかげんに野菜を切って、お椀に一杯の具と一杯ぶんの水、これに火にかけたら、お椀一杯の味噌汁ができるんですよお」

「煮立ったら、味噌をとく。」

と話して、味噌汁を作っていた。

(え、そんなんでいいの?)という俺の心の声を聞いたかのように、

「こんなんでええんですよ。」

と言いながら、トマトやピーマン、季節の野菜をざくざくと切って、椀に入れていた(椀に一杯分の野菜を盛ったら、鍋に入れる)。

あまりに簡単に味噌汁を作っていたので、それならできそうと、自分でもさっそく作ってみた。水の量ととく味噌の量だけ、検索したレシピを参考にした(二人分、水320cc, 味噌大さじ2)。

先日、料理で余った小松菜をざくざくと切って鍋に入れ、沸騰した後、火を止めて、味噌をといた(近くに会ったゴマと塩昆布もちょっと入れた)。驚くほどうまいものではなかったが、これとご飯だけで満足できる日もありそうだ。でもどうせ作るなら、いつか母の味噌汁を作りたい。
(お味噌汁の雰囲気が欲しいので、お椀がほしいな…)



実は、雑煮が再現できなかった後、妹にヒントをもらっている。妹もちゃんと知ってるわけではなかったが、私よりずっと詳しかった。

昔はいりこと鰹節。

その後はほんだしを使ってた。
味噌は合わせ味噌。醤油の味は九州とは違うから、それも結構違いになるかも。

味噌はこだわってなかったと思うよ。
九州は合わせ味噌で売られてることが多くて、大体米と麦の合わせだったと思う。とけ残りが出てたから、濾して使ってた。

母が作った味噌汁には、一気にたどり着けないだろうが、実はおいしいと感じた「天麩羅処ひらお」の味噌は売っていることを知っている。おいしい味噌汁は割と近くにあるかもしれない。

もし、おいしい味噌汁が作れるようになったら、息子にも食べてもらおう。亡くなった祖母の味(に近いもの)、お父さんを育ててくれた味を息子にも教えてあげたい。九州の祖母の料理を一度も食べたことがないので、口に合わないかもしれないけれど。


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のーどみたかひろ
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。

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