運が良い人はどんな人?
日付の変わらぬうちにと気忙しくかけた電話の受話器越しに聞こえる声は、まるで濃厚なクリームで磨いたヴァイオリンの木肌のように艶やかで光る声をしていた。目を瞑り、記憶を消してしまえば、その声は40代前後、働き盛りの男性の声のようにも聞こえる。声の主はその日91歳の誕生日を迎えた私の伯父である。身近な人物の中で「運が良い人」を思う時、私は真っ先にこの伯父のことが思い浮かぶ。
節目を迎える誕生年に伯父は必ず自分で宴を催してきた。会が開かれる行きつけのホテルの一室に駆けつけるのは、私