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【読書メモ】罰ゲーム化する管理職

私はいわゆるJTC(ジャパニーズトラディショナルカンパニー、日本の伝統的大企業。主に古臭い体質などについて揶揄するときに用いる)に勤めている。

今のところ順調に昇進しており、管理職一歩手前というところまで来たのだが、今の率直な気持ちは
「管理職になりたくないなあ」
である。

理由は色々あるが、どう考えても大変さが割に合ってないように見えるのである。私のイメージはこんな感じ。

  • 一気に責任が重くなる。会社と顧客の板挟みにあっているのはいつも中間管理職。部下の失敗も上司の責任になる。

  • リモートが普及し会議への参加コストが低くなった結果、信じられないレベルで会議が詰め込まれる。自分の仕事ができるのは定時以降という状況。

  • コンプライアンスの厳しさが増し、部下への接し方にはとんでもなく気を使わなければならない。一発でもパワハラ・セクハラ言われたらオワリ。部下の転職も多い。

  • それでいて、管理監督者になると時間外手当が付かなくなり、時給換算すると昇進したのに給料が下がるという現象すら発生している。

こんな感じである。そんな思いを持っていた中、「管理職は罰ゲームである」と主張する本に出会ったためポチらずにはいられなかった。

では、早速読んでいこう。
なお今回は、いつものように気になった箇所を引用してメモを書いてたら山程あって終わりそうになかったので、自分の言葉で噛み砕いた要約をお届けするというスタイルでやっていきたい。


第1章 【理解編】管理職の「罰ゲーム化」とは何か

 この章では管理職の罰ゲーム化の実態について調査しているよ

  • 業務量が多いと答えた管理職は50%を超えているよ

  • 昔と比べると組織の数を減らした(=組織のフラット化)から管理職のポストの数自体は減っている

  • メンバーとの賃金差は年々縮まっている傾向にあるよ

  • アジアのアンケート調査で「管理職になりたい」と答えたメンバー層は21.4%で日本がダントツで最下位だったよ。TOP3のインド・ベトナム・フィリピンは80%を超えているよ。

  • 2019年の論文で、日本は管理職の方が死亡率が高いという驚きの結果が出たよ。欧米は管理職の方がより健康的な生活ができるから一般職の方が死亡率が高いんだけど、日本の管理職は自殺率が高いからこんな結果になっているよ。罰ゲームすぎるね

第2章 【解析編】管理職の何がそれほど大変なのか

2章ではもう少し掘り下げて分析してみるよ

  • 管理職が管理する部下の数(=スパン・オブ・コントロール)は年々増加しているよ

  • 2020年に施行されたパワハラ防止法が部下のマネジメントを難しくしているよ。会社が指示すればするほど、管理職は、厳しくフィードバックしない、部下をご飯に誘わないなど自己防衛的な行動をとってしまうよ。だから部下に仕事を任せられず、自分で巻き取ることになり結果として業務量が増えるよ。プレイングマネージャーの出来上がりってわけだ。

  • 働き方改革も管理職にとって悪さしてるよ。残業しちゃダメよと労働時間に蓋をするだけの施策は、結局メンバー層だけが早く帰って残った仕事を管理職が巻き取る形になるよ。働き方改革は管理職の犠牲の上に成り立ってるってコトだね

  • 高齢化しすぎた日本では年上部下の問題もあるよ。30代40代の管理職の部下に50代がいるなんてザラでこれが心理的な負担を増やしてるよ。非協力的な老害も多いみたいよ。

  • そんでもって会社はと言うと「管理職のマネジメントスキル不足」が原因だと思ってるから、リーダーシップ向上とかの無駄な研修を増やしているよ。こりゃあ根深い問題だね。

第3章 【構造編】ここが変だよ、ニッポンの管理職

3章ではなんでこんなことになっちゃったのか、世界と比較して見てみるよ

  • 日本では入社した時点で「自らの意志とは関係なく」全員が管理職を目指すレースに参加してるよ。一方欧米では管理職候補は早い段階から選別され、特殊な訓練を受けるよ。あとポストが空いたら手挙げ制でセレクションが行われるよ。ジョブ型の雇用ならではって感じだね。

  • 欧米組織における管理職は、個人を繋ぐ連結ピンとしての役割だけど、日本の管理職はマトリョーシカみたいな入れ子構造になっているよ。例えば欧米の部長は課長にだけ指示を出してその下のメンバ層には指示を出さないけど、日本は部長がチーム全体の代表者として振る舞うことが多いよ。

  • だから日本の管理職は部や課の代表として広すぎる範囲を管理する必要があり、「多忙すぎる雑用係」になっているよ。ただのハンコ押しだね。転職の面接で、「あなたは何ができますか?」と質問され、「部長ならできます」と答えるという定番のジョークもまだまだ現役だよ。

第4章 【修正編】「罰ゲーム化」の修正法

ココからは4つの解決策を考えていくよ

  • フォロワーシップ・アプローチ (= 部下も育成しよう)

    • 2章で書いたように会社側は課題を「管理職のマネジメントスキル不足」と捉えているけど、そうじゃなくてメンバー層もトレーニングをすべきだよ。上手にキャッチボールをするためには両者とも訓練する必要があるのに、現状は片方だけになっているからあんまり意味がないよ。最初は管理者が研修で学んだことを部下に伝えるだけでも効果があるよ。

  • ワークシェアリング・アプローチ (=組織・役割を見直そう)

    • 部下人数(スパン・オブ・コントロール)を調整するために組織構造を見直そう。トヨタはチームを細かく分けて成功したよ。

    • 現場管理職の権限を増やそう。上位管理職へのお伺いが必要であればるほど、現場管理職の負担は増えるよ。

    • 現場管理職の仕事をもっとチームメンバに渡そう。管理職に必要なトレーニングはいかに自分の仕事を手放すか、だよ。

  • ネットワーク・アプローチ (=管理職同士でつながろう)

    • 管理職はつらいよ。だから相談できる相手がいた方がいいよ。追い込まれているのに孤独な管理職が一番やばいよ

    • でも日本人は他人を頼るのが苦手だよ。そしてそれを強制されたら逆に反発しちゃうよ。だから管理者研修のあとの懇親会、みたいに自発的にコネクションを創る仕掛けが必要だよ。めんどうな生き物だね。

  • キャリア・アプローチ (= 昇進の仕組みを見直そう)

    • 全員が幹部を目指そうという日本企業の構造自体が時代にどんどん合わなくなってきてるよ

    • ①幹部候補者だけ早期に選抜しリーダーシップ訓練を行う②それ以外の管理職は特定の業務領域に専念しスペシャリストを育成する、という2つのアプローチが有効だよ。ジョブ・ローテーションは社員の市場価値が下がって転職したくなるから、やめるか範囲を狭めた方がいいよ。

第5章 【攻略編】「罰ゲーム」をどう生き残るか

4章のアプローチは結局会社が動いてくれなきゃどうしようもないのもあったけど、5章は自分でできることを紹介するよ

  • 自分の仕事をたくさん部下に割り振ろう。そうすると「フォロワーシップ・アプローチ =部下の育成」と「ワークシェアリング・アプローチ=役割分担の見直し」の両方が達成できるよ。

  • もちろん「放り投げ」はダメだよ。具体的なタスクの内容、目標、期限を明確に伝えたり、部下の能力と適性を考慮しよう。それには部下のことを知る努力が上司は必要だよ。

  • 「ネットワーク・アプローチ」は積極的に動いて繋がりを作ろう。管理職は昇進のライバルではなくて同じ罰ゲームをプレイしている仲間だよ。きっと力になってくれるよ。社外に繋がりを求めてもいいよ。

  • 「キャリア・アプローチ」は管理職としてやったことをきちんと言語化しておくべきだよ。多忙すぎる雑用係かもしれないけど、ちゃんと棚卸しすると案外価値が高い仕事をやってるよ。

ここからが大事だよ

  • 大原則は「アクションの過剰」を防ぐことだよ。積極的に「やらない上司」を目指すべきだよ。

  • 仕事をうまく振るためには、自分の持っている仕事の成果(=タテの物差し)と仕事のやり方(=ヨコの物差し)の柔軟性が超重要だよ。
    このタテとヨコの物差しがガチガチだと、自分の求めるクオリティと、自分の育ってきたやり方しか認めない頑固な上司になっちゃうよ。
    そういう上司は結局「自分でやったほうが早い」となって、何にも解決しないよ。

終章 結局、管理職になるのは、「得」なのか「損」なのか

  • 「きっとこの本を読んで誰が管理職になんかなるものか」と思った人も多いと思うけど、著者は「損得で考えちゃダメだよ」って言ってるよ。

  • 人間は社会と関わる中で生きていく動物だよ。管理職になるとより多くの人間と関わることになるから、辛いこともあるけどうまくいったときの喜びも大きいよ。

  • 著者は管理職になるということは、与えられる側から与える側になること、「贈与する者」として位置づけ直すこと、と言っているよ。

  • ちょっと結論が厳しい・・?でも難しいよね。著者が分析結果と解決策を提示したんだから後は読者自分で考えようってことだね。


以上である。めっちゃ疲れた。

前半の分析とかすごくちゃんとしてるし、共感できる箇所も多かった。日本の大手企業に務める人が全員読んだら少しは社会がよくなるんじゃないかなと思えるくらいにはいい本でした。
個人的には、メンバ層との賃金の逆転現象に関する解決策が「会社側の制度の再設計が必要である」というだけだったのが若干寂しかった。難しいんだろうけど、お金は大事だと思うんだよなあ。

結局これを読んで管理職になりたくなったかと言われると、
「管理職になりたくないなあ」
の気持ちはあんまり変わらなかったのが正直なところではある。

しかし、この本で得た処方箋があるから、
「なんとかなるかもなあ」
という気持ちが少しだけ芽生えたことだけ、付け加えておく。


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