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民俗学漫談

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民俗学についてのお話をまとめています。
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記事一覧

【民俗学漫談】人類の黎明

人類の起源と進化の始まり人類の進化の起点は、およそ700万年前のアフリカに遡ります。 この時期、地球の気候は大きな変動を繰り返していました。中新世から鮮新世(約700万~500万年前)にかけて、アフリカの森林が縮小し、広大なサバンナが形成されていきましたが、この環境の変化が、霊長類の進化に大きな影響を与えたと考えられています。 この頃、最古の人類とされるサヘラントロプス・チャデンシス(Sahelanthropus tchadensis)が現れたんですね。 頭蓋骨の形状から、

【民俗学漫談】物語における弱い主人公

物語の主人公というものは、神話自体から、現代の物語までアウトサイダーと言うのが定番である。 多くは、『何かを失った』主人公、もしくは、『何かを損ねている』、『何か逸脱している』主人公が、回復するまでの物語である。 これは、『逸脱』しているにすぎず、『弱い』と言う設定は当てはめられていない。 これはどういうことであろうか。 「弱さ」と「共感」のパラドックス 物語の主人公は、たいていアウトサイダーであるべきだという意見は、フィクションの構造を考えれば納得できる。アウトサイダー

【民俗学漫談】三人組の魅力と物語の力

物語の中で「三人組」という構成は、古今東西を問わず広く見られる。これは、キャラクターのバランスを取りながら、物語に多様な視点と深みをもたらすためである。友情、対立、成長といったテーマが、三者の異なる個性を通して描かれることが多く、読者や視聴者にとって親しみやすく、感情移入しやすい構造となっている。 例えば、「ルパン三世」では、ルパン・次元・五ェ門の三者がそれぞれ異なるスキルと価値観を持ちながらも、互いを補完し合い、緊張感とユーモアを織り交ぜながら物語を進める。ルパンの自由奔

【民俗学漫談】ラスコーの壁画──夜の時代から黎明へ至る闇と狂乱の空間

人類がはじめて自己を測る場としてラスコーが存在した。その岩壁に刻まれた線の一つ一つは、意識が夜の帳の向こうへと手を伸ばし、未知なるものへと触れんとする営みであった。驚異的な形象が浮かび上がるその洞窟の内部は、ただの住処ではなく、人間が自らの世界を形成する場であり、そこには無数の象徴が宿っている。 ラスコーの壁画は、単なる狩猟の記録ではない。それは人間が世界と関わる仕方の表現であり、呪術であり、祝祭であった。共感呪術を実践する場であり、狩りの成功を祈念する場所であり、あるいは

【民俗学漫談】縄文土器

最近、人類の文明以前に興味が出てきました。 石器時代です。 日本で言えば、縄文時代です。 日本の土器の歴史は確認されている限り世界でもっもと古く、1万2千年前には使用されていたらしいです。 土器が日本で最初にできたというよりは、だいたい同じ時期にいくつかの場所で作り出したのではないでしょうか。 現代でもそうですが、竹や木で作った入れ物は造形が少ない。 今はもうプラスチックですが、土でもプラスチックでも、成型して作るものは、形を凝らしますね。 縄文草創期の土器作りは、

【民俗学漫談】生成AIの時代

コミュニケーションの相手としてのAI今、chatgptをはじめとして、チャット型の生成AIが日常どころか、仕事にまで使われていますね。 これがあれば、SNSや匿名掲示板なんかよりも、よほどまともなコミュニケーションができそうですが、実際はそうなっていない。 何ででしょうかね。 匿名掲示板やSNS、そこにあるものは、承認欲求、虚栄心、自己顕示欲ですからね。 情報を交換してるわけでも、挨拶をしているわけでもないんですよ。 それらは手段にすぎません。 何を好感しているのかと言え

【民俗学漫談】スマホを片手に広がる世界で

今も昔もおしゃべりをしたいという気持ちは老若男女変わりはないでしょう。 会話からインターネットを通じてのやり取りに変わっただけですから。 SNSはなくてはならないアプリケーションとなっていますね。 それを見ず知らずの人とできてしまう柔軟性のある人が多くなっています。 あたかもゲームから会話パートだけ独立させたようなものが、ユーザーを引き付けています。 床屋政談と言う言葉がありますが、Twitterなどは、見ていて床屋政談の公開システムのようです。 Twitterは

【民俗学漫談】習性としてのコミュニケーション

SNSや掲示板と言ったコミュニケーションのプラットフォームができて、『人間がこれほどまでにコミュニケーションをしていたがっていたのか』と言うことが浮き彫りになりました。 しかし、SNSでも動画やいわゆるライブ配信などを見ていると、コミュニケーションと言いつつ、一方的なコミュニケーションにも見えます。 主にテキストベースで、投稿者なり、配信者なりに向かって、多数の人間が、前後の文脈も顧みずに言葉を投げかけています。 自分の言いたいこと、『今日は何をした』、『何を食べた』な

【民俗学漫談】龍

龍の成り立ち龍は、中国の文化では神聖なものとされ、前漢から清に至るまで、皇帝のシンボルでした。 龍はその啼き声によって雷雲や嵐を呼び起こし、また竜巻となって天空に昇り自在に飛翔すると言われております。 姿としては、口辺に長髯をたくわえ、喉下には一尺四方の一枚だけ逆さについた鱗である逆鱗(げきりん)があり、顎下に宝珠を持っていると言われます。 秋になると淵の中に潜み、春には天に昇るとも言われます。 架空の動物ですが、では、いつ頃から中国の文化に登場したのでしょうか。 絵よ

【民俗学漫談】うなっぽ

鰻の特性江戸の三味、と言えば、蕎麦に鮨に天ぷらですが、鰻も江戸っ子の好物でして、今回は、鰻について漫談をいたします。 鰻もまた不思議な生き物でして、鰓も鱗もある立派な魚類なんですが、なんだかぬめぬめしていて鱗(うろこ)はどこだってことですよね。 鰻の鱗なんですが、小さな鱗が皮膚の下に隠れています。 鰻というものは大変古い生き物で、だからこそ栄養があるのですけれども、古い種は鱗が細かくなっていたり、隠れていたりします。 鰻はまた回遊する生き物でして、例えば、ニホンウナギ

【猫文化漫談】ねっこにゃ!

太古の記憶太古の人類は、獲物を易々と取る動物は、世界に調和した存在に見えたことでしょう。 人間が対抗できない動物たちに、超人的な何かを見出していたのです。 その中でも、ライオンや虎をはじめとした大型肉食獣の強さ、躍動感、威力は、威光さえ感じ尊崇の念を引き起こしたことでしょう。 小型のヤマネコでさえ、そのしなやかさ、俊敏性、暗闇で目が光り、その夜を照らす月のように輝く目で、獲物を狩る姿に憧憬の念を抱いた事でしょう。 原始的な道具を使って、ようやく動物を狩ることができる様

【民俗学漫談】ネットストーカー

ストーカーの異常心理しかし、ストーカーと言うものは、どうして不毛な虚しい行為をしてしまうのでしょうか。 ストーカーは自分のことを被害者だと思っています。 自分は悪くない、何も悪いことはしていない、自分は好意的に接していたのに、なぜ連絡をくれないのか、会ってくれないのか、おかしいのは相手の方だ、と思い違いをしているのです。 何なら、自分が正義だし、自分こそが相手を幸せにしてやれるのに、とさえ思い込んでいるのです。 この時点で、すでに我を忘れて、相手のことも考えられなくなって

【民俗学漫談】SNS時代の個性

現実感を求めるイチローが大リーグが頭を使わなくなっているといっていました。 何を使っているのかといえば、データでだそうです。 データを基にして、最も効率の良い方法をとっているだけだそうで、はたして、それは野球なのかという話でした。 翻(ひるがえ)ってみると、この状況は、何も大リーグの野球に限ったことではないようにも見えます。 ゲームの主人公は、もてますね。 放っておいても、ストーリーが進み、成長や解決に導いてくれます。 試練は現実に比べたらまさにゲームであり、現実より

【民俗学漫談】エンターテイメントのリヴァイヴァル

前回の民俗学漫談で、ファッションのリヴァイヴァルと言うところまで漫談しました。 エンターテイメントのリヴァイヴァルで、服装という意味でのファッションがリヴァイヴァル、自分の過去を見るか、服の意味を乗り越えるか、もしくは民族衣装のように、よそから上面だけ引っ張ってくるか、そうなって、今もそれは続いているのですが、特にリヴァイヴァルについては、それがフィクション、エンターテイメントに移った気もします。 人々の行為のバリエーションが固定化されくる。 娯楽や職業の種類ばかりが増