雲雀丘花屋敷のみちをゆく #3 一本の桜
みなさん、桜やお花見は好きですか?
雲雀丘花屋敷からほど遠くない、池田市にある五月山は北摂でも有数の桜スポット。五月山公園を整備し桜の名所にしたのが、戦後の池田市長、武田義三(1896-1975)です。
桜を植えたいと思ったきっかけが、なんと雲雀丘花屋敷の桜だったそう。
「雲雀丘の春は全山ピンク色で羨ましいのう・・・五月山もそんなふうにしたいものよのう・・・」
と、言ったのか。
猪名川沿岸から武田義三が見た当時の雲雀丘の山々は美しかったことでしょう。
いま、ちょうど桜の季節。暖かい時間に桜をみて散歩するのがちょうどいいですね。雲雀丘花屋敷は桜を通り見して味わうはぴったりの小さい街並み。
今回桜並木のおすすめスポットを書いていこうと考えていました。雲雀丘の静かで美しい桜並木を見てもらうガイドになるかなと。でもそうではない、違う角度から桜について話をしたいなと考えなおしました。
それはあべのハルカス美術館の円空展をみたのがきっかけ。
円空は生涯に12万体の仏像を彫ると誓い各地を旅した修験僧。その彫り方は鉈で木を彫る、円空鉈彫りと呼ばれるもの。いま残っているだけでも5,500体ほどあるそうです。
円空は木から神や仏、天皇陛下まで作ります。大きな木から小さな木、製材のあとの余った木、さまざまなサイズの木の仏像たち。木一本一本に氣が宿っていると感じていたのでしょうか。
木は命があり、個性がある。
たくさんの桜の木と桜の花が集まっているのがすばらしくて美しいというバイアスにとらわれていないだろうか。桜というかたまりではなく、一本一本の桜と木をながめて、お気に入りの一本を探して行こう。円空の彫った仏像たちをみて、そう思い返したのです。
そうやって桜を見つめていくと、幹のねじれや木肌の色の濃淡、本当に一本一本桜は違っていることを、改めて気づかされました。そしてソメイヨシノだけではなく、他の種類の桜もこの雲雀丘地区にはあったのだ!ということにも。
それはソメイヨシノよりも開花のはやい、アズマヒガンという桜。雲雀丘花屋敷駅からぐんぐん坂を登っていき、大体山の中腹より少し上くらい。ひばりがおかやまぼうし公園というところにありました。桜の花びらはちいさく、淡い色で、葉がなく枝と桜が空に溶け合う感じ。
公園ではおとうさんとちいさい男の子がボール投げをして遊んでいました。その横で、そのうちの一本のこの桜をじんわりと眺めて時間を過ごしました。
そしてこの雲雀丘に植えられたアズマヒガンには、ある物語があったのです。次回は奇跡とも言える桜の物語を書いていこうと思います。雲雀丘の洋館とかかわりの深い、ある偉人が登場します。
次回は4月20日(土)に配信します。どうぞお楽しみに。