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侠客鬼瓦興業 第48話「マライアさんの涙」

「遅いわね、あの子達・・・」

鬼瓦興業の居間では、時計を見ながら姐さんがつぶやいていた。
「きっと道が混んでるんですよ、おばちゃん・・・」
「せっかくめぐみちゃんが、帰りを待っててくれてるのに、まさか、あいつら風呂でも行ったかな、ははは」
座椅子に寄りかかってテレビを見ていた親父さんが、からかうように、めぐみちゃんを見た。

「ちょっとお父さんなんてことを」
「そ、そうですよ・・・、おじちゃん、吉宗君がそんなところ行くわけないです」
めぐみちゃんは慌ててそう言いながらも、心配そうに時計を見つめていた。

(吉宗くん、そんなところに行くわけないよね・・・、だって、朝、約束したものね)
めぐみちゃんは、心でそう信じながら、今朝の
「お風呂やさんには行かないで」
という僕との約束を思い出していた。


ところが、そのころ僕は・・・・・・

マライアさんの蟹バサミから開放されたのは良いものの、再びハメリカンナイトの一室でバスタオル姿でベッドに座らされていたのだった。

目の前にはローションをきれいに流し終えたマライアさんがバスローブ姿で僕を見つめていた。

「もう、お兄さんったら、あんなかっこで飛び出すなんて、信じらんない慌てんぼね」
「す、すいません・・・」
「すいませんじゃないわよ、さあ、どう責任とってくれるの?」
「せ、責任・・・?」
「そう、責任、女の私にあんな恥ずかしい思いをさせて、ただで戻れるとおもったの?」
そう言いながら、マライアさんは再び女豹のような目線で僕に迫ってきた。
そして僕の耳もとで、、
「罰として君の童貞、いただいちゃいます・・・」
そうささやくと獣のように覆いかぶさってきた。

「え、あっ、ちょっと、マライアさん・・・、だ、駄目、駄目です・・・」
「さあ、素敵なハメリカンナイトの続きよ~」
「だから、駄目です、お風呂屋さんは駄目なんですー!」 
「ふふふふふ」
「え?」
「冗談よ、冗談・・・」
マライアさんは急に僕の上で楽しそうに笑い出した。

「よっぽど好きなんだね、その子のこと」
マライアさんはやさしく微笑みながらベッドの脇に下りると、そっと僕にジュースを手渡してくれた。
僕はジュースを片手にめぐみちゃんのことを思い浮かべて、恥ずかしそうにうなずいた。

「その子のこと、裏切れないのはわかるけどさ、まだ時間たっぷり残っちゃってるんだ。今お兄さんに帰られちゃったら、私がマネージャーに怒られちゃうから・・・」
「マライアさんが怒られちゃうんですか?」
「うん、私のサービスが悪くて、それに魅力がなくて帰られちゃったって・・・」
「み、魅力がないって・・・、そんなこと無いですよー、マライアさんはすっごく魅力的ですよー!それにサービスだって・・・」
僕はマライアさんとの衝撃的な体験を思い出し、顔を真っ赤にした。

「ふふ、ありがと・・・」

「でも面白いね、お兄さんって」
「面白い?ですか?」
「今時珍しく馬鹿正直っていうか、何ていうか・・・、ふふふ」
マライアさんはそう言いなが小さなかごの中からタバコを取り出し、口にくわえて火をつけると、やさしく僕に差し出した。
「えっ?あ、いや、僕タバコは・・・」
僕は慌てて手を振った。
マライアさんは再びきょとんとした後、もっていたタバコを笑いながら自分で吸い始めた。

「ほんとに今時珍しく、まっすぐに育ってきたんだね・・・、君って」
「まっすぐですか?」
「うん、まっすぐ」
マライアさんはそう言いながら、急に真剣な顔で僕を見つめてきた。

「え、あの・・・、僕の顔に何か?」
「あ?ごめんごめん、変なこと想像しちゃってさ」
「?」
「私の元彼が、君みたいなまっすぐな子だったら、こんな所で働いていなかったのかな・・・、なんて」
「え・・・?」
「ごめんね、こんなつまんない話」
「いえ、つまらなく無いです、あの、マライアさんにも彼氏いたんですか?」
「失礼ね、彼氏くらいいたわよ」
マライアさんはそう言いながら微笑んだ。

「でも最悪の男だった・・・、調子のいい男で、何度も騙されたんだ」
「騙された?」
「そう、口先ばっかりで、愛してるとか大切に想ってるとか言ってさ」
マライアさんはそういいながらうつむくと、目に涙を浮かべていた。

「ま、マライアさん・・・」

「あー、ご、ごめんね、何だか君のそばにいるとホッとしちゃって、こんな余計な話し」
「いえ、気にしないで何でも話してください、それでマライアさんが楽になれるなら」
「えー?」
マライアさんは僕の瞳をじっと見つめたあと、ニッコリ微笑んだ。

「やっぱり、あいつとは目が違うわ・・・、君の目は本当にまっすぐで、優しくて、綺麗な目だね・・・。幸せだね、君に想われている彼女って」
「そ、そうですか?」
「うん、幸せだよ・・・、どうして私気がつかなかったんだろう、あの時、あの男の汚れた目に」
マライアさんはそう言うと、再び話を始めた。

「お兄さん、私ね、実はこう見えても昔、保母さんだったんだよ」
「えー!保母さん?」
「以外でしょ」
「は、はい」
「女子高を出て専門学校行って、その後資格とって・・・、その彼と知り合うまで、私男の人と手も握ったことなかったんだ」

「それで保育園に勤めたんだけど、そこでその男と出会って・・・、彼の嘘だらけのやさしさにすっかり参っちゃってね・・・。散々お金を騙し取られて、借金だらけにされて、結局はこんな所で働くはめになっちゃったんだ・・・」
「ひ、ひどい!!」
僕はマライアさんの顔を真剣に見つめた。

「私、馬鹿だからさー、気がつかなかったんだよね、最初からあの男は、私の体とお金だけが目的だったって、なのにあんな男に惚れちゃってさ」
マライアさんはそういいながら作り笑いを僕に見せた。しかしその目には大粒の涙があふれていた。

「もしも、君みたいなまっすぐな男に惚れてたら、こんな汚れた体にならなくて済んだのにね、私も」

「マ、マライアさん・・・」
僕はマライアさんの悲しい出来事に胸が熱くなってしまった。

「マ、マライアさんは、汚れた体なんかじゃないですら~!とっても美しい、清らかな体なんれすら~、ぐあうぐ!!」
気がつくと僕は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃに崩れた顔を彼女に向けて、そう叫んでいたのだった。

「えー、ちょっとお兄さん・・・、貴方がそんなに泣かなくても」
マライアさんは僕の号泣におどろいていた。 
「マライアさんは綺麗れすら~!ぜったり、ぜったい、綺麗なのれすら~!!」
僕は何度もそう叫びながら、腰のバスタオルで、ぐしゃぐしゃになった涙顔をぬぐい続けた。

「ありがとう、お兄さんー、でも、そんなに泣かないで・・・、泣かないでってば・・・」
マライアさんは、逆に泣き崩れる僕をその胸で抱きしめながら、やさしくなだめてくれた。

「マライアふあん、マライアふ、ふわあん~、うわあああああ~」
「はいはい、よしよし、よしよし・・・、もう泣かないで、ね、ありがとう、ありがとう・・・、ごめんね変な話しちゃって、もう泣かないでね、でないと私まで悲しくなっちゃう」
「うえーん、うえーーーん」
「うぐわーー、うぐわーーー!」
気がつくと僕とマライアさんはハメリカンナイトのベットの上で子供のように、大声で泣きまくっていたのだった。

それからどれくらい立ったことか、マライアさんは照れくさそうに涙を拭くと、僕の下半身を見て急に笑い始めた。
「ふふふふ、よく見るとなんてカッコしてるのよ、君・・・」
「え?」
僕はマライアさんの目線にそって下半身に目をうつした。
そこには、涙と鼻水をぬぐうためにめくられたバスタオルの間から、ビコーンと姿を現した、ピンコ立ちの僕の一物があったのだ。

「あっ!ごめんなさい・・・」
僕は慌てて節操のない僕の物を隠そうとした。

「いいのよ隠さなくても、ふふふ・・・、それにしても立派なの持ってるね、君」
「立派って?いや、そんな・・・」
マライアさんはやさしく僕を見つめると、恥ずかしそうに笑った。

「ごめんね、お兄さん、私のつまらない愚痴きいてもらったり、一緒に泣いてもらったりしちゃって・・・、人のことなのにあんなに泣いてもらったら、なんだか今までの辛かった思いがふっとんじゃったみたい」

「ありがとう、お兄さん・・・」

「いや、僕はただ、悲しくて泣いちゃっただけで何も・・・」
「ううん・・・」
マライアさんは静かに首を振ると
「ねえ、ねえ、私が気持ちを楽にさせてもらったお礼に、ちょっとだけ、いい子、いい子させてもらってもいいかな、この子」
僕のあそこを指差しながら、少女のように微笑んだ。

「いや、あの、それは・・・」 
「そのくらいで、彼女を裏切ったことにはならないって、ふふふ」
マライアさんはいうが早いか、ベッドから降りて前にすわると、僕の節操のないあそこに手を伸ばした。

「ごめんね君、私が気持ちよくさせてあげられなくて、一人でこんなに元気なままで・・・」

「はーい、いい子、いい子・・・」
なでなで、なでなで、なでなで
「あ、うあ、、マライアさん、そんな・・・あっ!!」
 
ピュッ!ピュピューーー!!ピュ~ーーー!

「あーー!?」

「えー!?」

気がつくと僕の目の前に、ネバネバの白い液体を顔にかぶっているマライアさんの姿があった。

「は、発射・・・、しちゃったんだ・・・」 

「あ~!?ごめんなさーい!ごめんなさーい!!」

「そうか、そうか・・・、発射しちゃったのね・・・」
「あ、はい・・・、発射、しちゃ・・・ったみたい・・・です。」

マライアさんはねばねばの顔で、唖然としながら僕を見ていた。

(ぼ、僕は最低のエロ男だ~!マライアさんのあんな悲しい話を聞きながら、節操もなく発射してしまうなんて、最低のエロ男だ~!!) 

ハメリカンナイトの一室で、僕はショックのあまりお地蔵さんのように固まっていたのだった。

つづく
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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※このお話はフィクションです。なかに登場する団体人物など、すべて架空のものです^^

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