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第9章 考え方5 すべての良いことに行う価値がある

効率よりも信念のために

一生懸命やろうとしたら、当然それなりの結果を期待します。大きな労力を伴えば、それだけ大きな結果を求めたくなるものです。結果がささいなものと分かっていたら、わざわざ何かをしようとは思わないでしょう。

行動にどれだけ結果がついてくるか、効率の問題です。私たちは日常生活のさまざまな場面で、効率を考えて行動する傾向があります。しかし、サーバントは、効率を計算して行動を決めることはありません。むしろ、信念に基づいて行動を選択します。

サーバントにとって、人を幸せにするために仕えることは、どうしてもしなければならないことであり、そのためにこそ生きています。どんなに大きな犠牲を払おうとも、どれほど労力を要しても、私は人を幸せにするのだという信念をもっています。たとえどんなに小さな結果しかもたらさないとしても、仕えることをやめないという信念です。サーバントは効率ではなく、信念に基づいてどう行動するかを決めます。

たいていの場合、サーバントが直面する状況は、めざましい結果を期待することができません。人のために犠牲を払っても、大きなプラスをもたらすことはあまりありません。もともとマイナスの状況です。善意の取り組みによって、マイナスをいくらか埋めることはできるでしょう。普通の状況に回復できたら、それだけですばらしいことです。それ以上のプラスに改善したら出来すぎです。

それでも、いやそれだからこそ、サーバントは仕えます。効率を考えたら、他の誰もそれをしません。このままでは手付かずです。だからこそ、そこに自分の使命があるとサーバントはあえて立ち上がるのです。

アマゾンで蝶が羽ばたけば

バタフライ効果といわれる現象があります。アマゾンで蝶が羽ばたくという小さなことが、まわりまわってシカゴに大きなハリケーンをもたらすというイメージです。

私たちの世界はつながっています。世界の片隅で起こる小さな一つひとつの事柄がつながって、大きな世界が成立しています。小さなことでも、まわりに影響を与えることができます。その小さな影響は、さらにそのまわりに影響を与えます。そうして、現実が動いていきます。

今ここで心をこめて人に仕えることが、やがて地球の裏側でどのような結果をもたらすことになるのでしょうか。想像すらできません。すべてを計画し、コントロールすることなどできません。作為的に人を動かしたり、状況を操作することもできません。それこそ、自分の範囲の向こう側のことです。

サーバントは、自分たちの行動が自己満足に過ぎない、無力なものだとは思っていません。一番の力は、人の心に働きかける影響力です。行動を強要することはありませんが、人の心に訴えます。まわりの人の心の奥にあるサーバントの思いを刺激します。共感して賛同する人々が起こされてきます。勇気を出して立ち上がり、行動し始めます。みんなのこととして広がりを見せます。やがて社会全体を、世界をも巻き込むムーブメントになる可能性さえあります。

もちろん今の行動がすぐに結果をもたらすわけではありません。一晩寝て起きたら世界が変わっていたということもないでしょう。時間の流れを理解することはサーバントにとって、とても大切です。長い時間とプロセスがもつ見えない力を信じることです。

川の上流にはゴツゴツした岩が多く見られます。下流に行くほど丸みをおびた石が多くなってきます。流れを下りながらぶつかりあって角が削られた結果です。一週間や一ヶ月で石の形は変わらないでしょう。それでも長い時間とプロセスを経て、固い岩でさえその姿を変えます。

何も動いていないと感じられる長い時を経て、だんだんと育てられていく過程があります。長い間忘れ去られたあと、私たちの知らない未来の世代がその恩恵を受けることだってあり得ます。自分たちが見ることのできる範囲、知ることのできる範囲を超えた影響の可能性があるのです。

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中澤信幸「等身大リーダーシップ」コーチ
ほめられると調子に乗って、伸びるタイプです。サポートいただけたら、泣いて喜びます。もっともっとノートを書きます。