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抱っこを教える資格を持つ皆さんへ  その抱っこ、大丈夫ですか?

抱っこを教える資格を持つ皆さん。
赤ちゃんの様子をしっかりと見て、自分が教えている抱っこと同じ態勢で眠ろうとしてみてください。

たとえば、上の写真。どう見ても不安定です。

(この写真は、抱っこの仕方を学びに来た親御さんに、助産師さんが、いつもの抱っこをしてみてください、と言ったときに父親がした抱っこです)

この態勢では、抱っこされる側は緊張してしまいます。

身体がまっすぐです。骨盤が前傾しています。
大腿骨頭が前方に出てきてしまった不安定な姿勢です。
股に手を入れる抱っこは、よほどうまい人がやらなければ、
脚が、骨盤からぶら下がります。不安定な股関節に負担がかかります。
赤ちゃんの骨盤は後傾しているのが生理的な姿勢ですが、それが保たれません。赤ちゃんに負担がかかります。

そもそもハグ(だっこ)していません。

これがいい抱っこですよ、と言われても、あれ?と思いますよね。
その感覚を大切にしてください。

学術的にどうであるか、識者がどう言っているか、海外がどうであるか、
ではなく、
自分の感性で、経験を通して、赤ちゃんを見て、実際に抱っこして、
自分の頭で考えてください。

首すわり前の縦抱きはどうでしょうか?


首すわり前の赤ちゃんを両手を添えずに抱っこひもを使って
縦抱っこした場合、
大人が通常の立位や移動の状態だと、つまり、
赤ちゃんの頭の重さが首から体にかかる縦の状態だと、
重力が下方に働いて、赤ちゃんの身体に大きな負担がかかります。

これは兵児帯でもスリングでもラップでも同じです。
(そもそも、どれも、布、です)

成形型の抱っこ紐だけでなく、兵児帯でもスリングでもラップでも、両手を離して、首すわり前の赤ちゃんの縦抱っこをすることはお勧めできません。

成形型の抱っこ紐は、両手を添えることを前提に作られていませんし、
兵児帯、スリング、ラップの場合も、両手を空けられる、が売りですから、首すわり前の縦抱っこはできないと思ったほうがいいでしょう。

縦抱き抱っこと下記の症例との関係性の研究は、小児歯科医によるものはありますが、それ以外の分野ではあまりなされていないので、下記のすべてが、縦抱き抱っこのみの影響によるものとは言い切れませんが、懸念されている例を記述します(これ以外のパターンにもあります。網羅していません)。今後、加筆修正する可能性があります。

たとえば、
・喉が詰まって、離乳食が喉を通らない赤ちゃんが増えています。小児歯科医たちが、増え続ける口腔機能発達不全症の問題、お口ぽかんの問題、発音の問題などを取り上げるようになりました。口腔機能だけでなく、全身の機能に影響が及んできていると指摘する歯科医もいます。
・体が反っている赤ちゃん(これは胎児期からの問題の場合もあります)、肩こり、首コリ、背中が張っている赤ちゃん、緊張している赤ちゃんが子育て支援の現場で多く観察されています。全身が固まり、凝っているので、抱っこ紐から外して下すと泣きます。身体をゆるめるマッサージなどをすることで、やっとリラックスし、入眠しやすくなることがあります。
・両手足に血が通わず、色が変わって、チアノーゼ状態の赤ちゃんも保健師さんたちから報告されています。
・体が固まっているので、寝返り、はいはいなどの自然な身体運動発達が難しくなっています。逆に、首が据わっていないのに、首が固まって動かないという赤ちゃんが、2か月で首が据わったと誤診されることも出てきています。
・抱っこひもで抱っこして自転車に乗り、脳震盪状態になり、虐待が疑われた事例も出てきています。

げっぷをさせるときのように、抱っこする人の両手と上体で赤ちゃんを支えるような縦抱きは大丈夫です。赤ちゃんは首が据わっていないので、首を肩に載せて休むこともできます。それに、このとき、自然に上体を少し後ろに傾けて、赤ちゃんの重さを受け止め、休み休み、げっぷが出やすいようにしますよね。しかも長時間ではないと思います。そういう縦抱きは大丈夫です。このとき、両手や上体が赤ちゃんを支えますから、布や紐は必要ありません。

また、大人と向かい合わせに縦抱きにして、赤ちゃんのからだを大人から少し離して見つめ合うこともありますよね。そのとき、赤ちゃんは後ろに少し斜めの状態で、自分の体の重さを大人の両手に預けていると思います。そういう縦抱きも大丈夫です(ただ、これでは移動はできないですし、長時間では腕が疲れます)。

さらに、大人の上半身を斜めに上げた介護用のようなベッドや、ソファにもたれた状態でのカンガルー抱っこのような状態も、角度が水平にできるだけ近い状態であれば、大丈夫です。大人の体の上に乗っける感じですね。

では、縦になったハンモック?!のように、布でくるまれた状態で、赤ちゃんはリラックスできるでしょうか。

まず、あなた自身で考えてみてください。

飛行機や新幹線の座席で、あなたはゆっくりできますか?ネックピローがあれば問題ないですか?布で支えれば問題ないですか?腰はどうですか?ダンゴムシのように丸くなれば大丈夫ですか。

巨人や仏様があなたをどこかに連れて行くとき、せめてどんな格好で連れていかれたいと思いますか?布で括りつけられた状態の縦抱きで、手の支えもないままで、安心できますか?

もし首が据わっていない状態で、20Kg(コメ袋2つ分)の頭で、縦抱きにされたら、どうでしょうか。
緊張が続いてしまうでしょう? でも、そうされたことしかなかったら、そうされるしかなかったら、それに慣れていくしかないのです。そういうガチガチのからだになっていくしかないのです。そうして、その後、発達の問題が明らかになったときに、もともとそういう赤ちゃんだったんだね、と言われてしまうのです。

********
新生児期の抱っこの基本は、横抱きです。
寝かせてあげましょう。重力を受けて大変なんです。
基本的に、首すわり前は横抱きですから、だっこ紐は不要です。
おくるみや抱っこ布団を使うと、抱っこが不安な方でも抱っこしやすくなるので、必要な場合は使うといいでしょう。
きちんと装着できるならば、スリングなどの布が役に立つでしょう。

だから、首すわり前に縦抱き用の補助具は不要・無用です。
(縦抱き用の成形型の抱っこ補助具の問題点や、横抱きをするにはどうすればいいのかということについては、別の資料を読んでください。出産時にちゃんと教われるといいですね…股の間に手を入れる抱っこが助産師さんたちの間で人気?ですが、それは、最初に書いた理由で「実は助産師さんでも難しい、できていないことがある」ので、ここではお勧めしません)

でも、股関節脱臼が心配?


縦抱きにしないと股関節脱臼が心配であるという説明をしている医師たちもいますので、これについて解説しておきます。

横抱きで首の部分が丸まった状態でスリングで抱っこすると、窒息事故が起きる可能性があるという海外の論文があります。その論文にある3つの図が、しばしば縦抱き抱っこがいいと書いてある海外文献として引用されているようです。でも、その論文に股関節脱臼のことは書かれていません。原文にあたってみてください。

また、スリングに横抱きでも足をM字にすればOKです。股関節脱臼になったという事例報告はありません。

むしろ、縦抱き用抱っこひもの解説に、M字にしましょうと書いてあるのに、写真の赤ちゃんはM字になっていないことはありませんか?
Mではなくて、コの字を横にしたような、中途半端な四股の形になっていませんか?

(「おでこにキスできるように、という海外の基準が書いてあっても、頭にキスの写真のことがある」‥‥と私が書いたら、頭にキスできるように、と写真の説明が変わっていたことがあります… 
「首とお尻に両手を添えて」と書いたら、そういう説明が付記されたこともあって……でも実は、首っていうよりも後頭部を支える必要があるんですが……そのとき私がちゃんと書けてなかったんです。そうしたら、それがそのまま‥‥メーカーがそんなのでいいのかしら……そういうメーカーがうちの商品は大丈夫と言い切っていいのかしら)

そもそも、股関節を保護することだけを考えて、他の部分への影響を考えないというのはおかしなことです。赤ちゃんの全身の発達への影響を考えた上で、どうするかを考えてほしいのです。

なお、スリングの横抱きで赤ちゃんが落ちたという痛ましい事故がありましたが、それはスリングを正しく装着しなかった、赤ちゃんをきちんと入れなかった、それなのに、親が落ちるような下向きの態勢をとった、というような状況であって、スリングそのものが危険なわけではありません。
でも、事故があったから「スリングは危険」とうわさが広がりました。
手作りスリングが流行ってしまったら、抱っこ紐売れないですものね。

皆が信じている学術的根拠について

一昨年、「赤ちゃんへの口移しや箸の共用が虫歯を作る」という「間違った学術情報」に対して、私は素人でしたが、おかしいなと思って、一人で文献など調べて調べて、いろいろな方に見解をうかがって、その道の権威の方に否定されても、「やっぱりこれは違う!」と結論を出して、このnoteに書きました。

一年後に、公的専門機関が、私が主張したことを公に肯定する文書を出しました。それについてもnoteに書きました。

今回もいろいろな資料をひっくり返して調べ、いろいろな赤ちゃんの専門家から情報を得て、結論を出しています(後述)。

たとえば、上記の文書は、学術雑誌に掲載され、エビデンスがあると認められ、長年信じられてきた研究結果が、必ずしも正しいとは限らない、ということが次々に明るみになったということが書いてある文章です。

エビデンスベースドでなければダメだと強固に主張する人が少なからずいらっしゃるのですが、私の経験上(私は複数の学会の査読委員の経験と文部科学省科研費の審査員の経験があります)も、上記のような研究上も、学術雑誌の査読を通る論文でさえ、こういう状況が見られるのが実際のところなのです。エビデンスベースドの研究については、最近、いろいろな書籍で問題提起されたり疑念が示されたりしています。

たとえば、こちら。


となると、私たちは何を手掛かりに物事を考えればいいのでしょうか。

たとえば、第二次世界大戦後に、赤ちゃんは生後しばらく目が見えないというアメリカからの情報が日本で信じられていたことがあります。
・・・いや、見えますよ(笑)。親だったらわかります。
でも、実はそうなんだ、見えていないんだ、と信じた人たちが少なくなかったと聞きます。アメリカの偉い学者さんの研究だから、と。

いやいやいや。
赤ちゃんのことは、赤ちゃんに聞きましょう。赤ちゃんを見ましょう。
それが無理ならば、赤ちゃんをたくさん見ている人、今回であれば、首すわり前の赤ちゃん、首すわり後の赤ちゃんを連続してずっと何年間も何百人も見ている人、に確認しましょう!私はそれをしました。その結果があるからこそ、この文章を書いています。

社会にはいろいろなことを自分の専門知識からだけで言う「専門家」がいるし、どの人の言うことももっともな気がしますよね。でも人間は、一つのからだ全体で人間なんです。身体全体を見て語ってほしいと思います。


そして、最終的には、首の据わらない赤ちゃんの抱っこ補助具を使う縦抱き抱っこの影響がどうであるか、そのリスクを赤ちゃんとその親に負わせるかどうかは、抱っこについて学んできた、専門家である、資格があると名乗っている

あなたが自分で判断して下さい。

私だったら、赤ちゃんの様子をよく観察し、自分だったらどうだろう、と考え、情報収集します。だって、専門家、ですから。お金を払って専門家になって、お金をもらって教えているんですから。責任、ありますよね。

私は抱っこの専門家ではないけれど、どこからもお金もらえないけれど、これだけ調べて、これだけ時間をかけて、自分の責任で書いています。批判も受けるでしょう、誤解も受けるでしょう。でも、少子化時代の日本の赤ちゃん一人一人を大切に育てたいから、調べて調べて調べて聞いて聞いて聞いて、ここまでたどり着きました。

どうぞ、ここまでの文章を読んで、自分の体、肌感覚で、赤ちゃんを見て、自分の責任で、判断を下してください。


※ 
ちなみに、成形型の抱っこ紐は、一つ2-3万円します。スリングや兵児帯、ラップでも1万ー2万円します(昔ながらの抱っこ紐なら3000円から)。何本も持つものではないので、メーカーにとっては、自治体の出産支援一時金や、親類からの祝い金を使って、生まれる前に選んで買ってもらうことが販売戦略として大事なことになります。そうするとできるだけ早くから長い時期使えると書いた方がいいわけです。


※ 
情報提供を求めています。質問もOKです。
  takeda@jace-pom.org
 までよろしくお願いいたします。

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