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セルフスタディ実践のひろば が始まりました。
すでに、このnote でもご紹介してきましたが、教師教育分野で発展してきた
実践家の実践を研究化することを可能にするセルフスタディという手法があります。
今回、『セルフスタディ入門(学文社 監訳武田信子)』の翻訳(関わったメンバーはなんと20人)を機に、セルフスタディに関心のあるメンバーが集まって共に学ぶ場ができました。どうぞのぞいてみてください。
そしてよろしければ、皆様もご参加ください。
ひろばの世話人(五十音順,2024年11月現在)は、
大西慎也(神戸学院大学) ,岡村美由規(広島大学),幸坂健太郎(北海道教育大学札幌校),齋藤眞宏(旭川市立大学),佐々木恵美子(聖隷クリストファー小学校),西田めぐみ(アイスランド大学),茂木智央 (新渡戸文化小学校 ),山内敏男(兵庫教育大学)です。
私は、ここまでいろいろとセルフスタディを紹介し、仲間を募って仕掛けてきましたが、幸い、みなさんの活動が軌道に乗りましたので、今後は、私は、活動を後方支援するという立場でいたいと思っています。
セルフスタディは国際的に、教師教育の分野で確立してきたものです。
でも、考え方や手法を応用すれば、対人援助専門職の実践を研究化し、この知見を理論化していくことができます。そもそも私が、先の入門書を翻訳したのは、対人援助職の実践の理論化のためでした。
このひろばの名前が、セルフスタディ実践のひろば、というのは、とても象徴的です。セルフスタディという研究を実践する、のです。あくまでも、実践、アクションを起こすことを大事にしています。
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大学3年生の頃から、どうして、研究ってこんなに現場とかけ離れているんだろう?と思っていました。いい悪い、というよりも、とても不思議だなあという感覚がありました。個人的趣味のようになっていたり、研究手続きが緻密ですばらしいかもしれないけれど、現場が見えていなかったり。と思うことがしばしばあったからです。
特にびっくりしたのは、それからずっと後のことなのですけれど、
統合失調症の患者さんの研究をしている東大博士課程の大学院生さんが「自分は統合失調症の患者は怖いから、実際にどんな人たちなのか、会ったこともないし知らない。精神神経科の病棟に行ったこともない。でも、研究チームに入って論文に名前が掲載されている」と聞いたときです。
また、ソーシャルワーカーの資質の研究で、「コンピュータが扱えること」が項目に入っていた論文があって、それにもとてもびっくりしました。専門職として、コンピュータが使えることは確かに必要ですが、それはソーシャルワーカーの資質ではないでしょう。
赤ちゃんを小さな四角い実験台の上に寝かせていた研究にも驚きました。
人間をそんなふうに扱うということ自体が、私にはおかしく思えました。
でも、いずれも、「統計的な研究手続きがしっかりしていて、数値としてエビデンスが出ていて、非常に良い研究である」と評価されていました。
研究としてよい、ということと、現場の実感がかけ離れているということが私にはよく理解できませんでした。だから、大学に職を得るなど、考えたこともなかったのですが、ひょんなことから、大学に勤めることになって、研究をしなければならない立場になって、それなりにやってきて・・・でも違和感をずっと持っていて・・・
そこで出会ったのが、セルフスタディでした。
これをうまく使えば、現場の知見が理論にできる。ということが魅力的でした。私の友人には、学歴が低いけれど素晴らしい実践をしている人たちが少なからずいます。その人たちの現場実践からわかったことが、セルフスタディを使えば、きちんと研究論文にでき、理論にできるのです。
研究の世界にいて現場が見えていない人たちだけが「偉い」とされがちな社会をちょっと変えることができるかもしれないと思います。
学生時代に抱いた学問の世界への疑念を晴らし、本当は研究も学問もとても素晴らしいものだよと、当時の私に言ってあげられるように思います。
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理論と実践の往還、とか、理論と実践の架橋、とか、理論と実践の合一、とか、いろいろなことが言われますが、実際にその方法はこれまであまり示されてきませんでした。でも、セルフスタディという方法論を学ぶことで、その方法が見えてくると思います。
詳しくは『教師のためのセルフスタディ入門』をお読みいただければと思います。そして、このひろばに入って下さる方がたくさんいるといいなあと思います。
この本は、教師のための、となっています。
対人援助職の方は、ちょっと一手間かかりますが、自分の仕事に置き換えて読んでほしいなと思います。対人援助職の方向けの本があればいいのですけれど、それが書かれるまでにはまだ相当に時間がかかると思うからです。
国際的にもまだ、対人援助職用のセルフスタディの本は書かれていないのではないかと思います(私は入門があることを知った時点で、これを対人援助職用に訳したい、と思ったのですが、そもそも、セルフスタディを対人援助職全般に応用したいと考えている人が世界にどの位いるのかわかりません)。
残念ながら、少なくとも私には今、セルフスタディの普及に力を入れる余裕がありません。でも、訳者を始めとする皆さんが、とても頑張って下さっているので、安心です。ひろばに大いに期待しています。
#セルフスタディ #理論と実践 #対人援助職 #教師教育 #専門性開発