長田弘さんのこと
好きな詩人は何人もいるが
講座にまで行ったのは三人だけだ。
その内の一人が、長田弘さん。
「深呼吸の必要」は映画にもなった。
詩の内容とは違うと思うけれど、題名が良かったんだろう。
「深呼吸の必要」の中で好きなのはこれ。
「童話」という詩の後半部分だ。
お日さまの光を集めて帰って子どもに与えたいと思う親。
日陰に入ったら無くなってしまう、日の光。
初冬の街路。
「空の下」は
この「一日の終わりの詩集」に入っている。
どの詩も好きなんだけど
新聞週間の時に、新聞に載っていた「新聞を読む人」もとてもよい。
わりと長い詩なのだが、後半を読んで欲しい。
マザーグースの曲がった歌のように
曲がった人間が、曲がった道を百年歩き
曲がった石段で、曲がった時間を見つけた。
曲がった猫は、曲がった鼠を追いかける。
曲がったひとつ屋根の下、
そうして、曲がったみんなで一緒に、
曲がった世紀を、曲がって暮らしてきたのだ。
怖くなるくらい、いまは誰も孤独だと思う。
新聞を読んでいる人が、すっと、目を上げた。
ことばを探しているのだ。目が語っていた。
ことばを探しているのだ。手が語っていた。
ことばを、誰もが探しているのだ。
ことばが、読みたいのだ。
ことばというのは、本当は、勇気のことだ。
人生といえるものをじぶんから愛せるだけの。
この詩は1997年のものだという。
私自身は、新聞の紙面でも読んだのだけれど。
今はもっと曲がった世紀になっているのかもと思ったりする。
長田さんの事を語りだすときりがない私である。
詩集はたくさんある。
また今度。
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