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残月記

二つ目の短編まで読み終わった。
作者はファンタジーノベル大賞を受賞しているそうで、
確かに、と思える設定と構成と筆力だった。

「そして月がふりかえる」では
主人公は、母が亡くなるまでの15年の間も
多分亡くなってからも
月に見張られているという怯えを持ちながら生きてきた。
幼いときは、自分に影があるという事にも怯えたという。

どこまでもついてくる影を、「悪しきもの」だと思ってしまったら
それは怖い。
そういう子どもの怯えをバカにしたりからかったりする両親。

それでも、大人になって、人生が好転したのに奪われてしまった。
理不尽である。月の裏側には、兎はいないのだ。


二番目「月景石」では
石を集めていた早くに亡くなった叔母がいて
叔母から不思議な石を受け継ぐ。
それを枕の下に入れて寝てはいけない と言われていたのに
久しぶりに見た石の景色が変わっていた事で夢を見る。

夢は夢ではなかった。そして・・・


ラルフイーザウという人に「ネシャンサーガ」という長編がある。
その主人公は、現実社会で病気が重くて
眠っている時に異世界で冒険するのだったが、
「月景石」では、あちらの世界に行った人の痕跡や記憶まで
現実社会から失われていくのである。

こんなに書いても
読んだら「え?」と思う事はあると思う。

変な言い方だけれど、久しぶりに文学を読んだと感じた。
情景描写が重いくらいで、私は時には読み飛ばしたりするのだが
読み飛ばせず引き込まれ、しっかり読んでしまった。

「生きて帰りし物語」がファンタジーだけれど
これはダークファンタジーだ。帰ってこない。
でも、それでよい。



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