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京都に咲く一輪の薔薇

ヒロインの名はローズ。フランスに住んでいる。
京都に住んでいた父親が亡くなり日本に呼ばれた。
一週間と定められ、いろいろな寺を案内される。

母のことを彼女は「メランコリーと不在しか感じなかった」という。
母は自殺し、その後祖母も亡くなり、ずっと苦しんでいた。

私はきっと無から生まれたのだ。だから誰にも愛着を覚えないし、誰も彼女につながろうとはしない。

妻を亡くした案内人ポール
家族全てを戦争や、何度もあった地震で次々失ったケイスケ
息子を亡くしたベス
「はかりしれぬ苦しみ」の中で生きている人々が京都で生きている。

亡くなった父は、娘に「慰め」を残したかったらしい。

失った人、失い続けた人たちが集まる空間として
京都のさまざまな寺が提示される。

日が経つうちに
ここではいつも誰かがいてくれる という気づきから
寺巡りの庭の中で
ここでは誰もひとりにしないと感じるようになる。

一人ぼっちで不機嫌で「人をうんざりさせる」のが得意なローズ。

それでも
「三日見ぬ間の桜」のように、彼女は生まれ変わる。

章ごとに、小さな挿話のような伝説のような話が始めに語られる。
歴史のこぼれ話かと思うような内容なのだけれど、
すべて作者の創作であるという。
訳者も、いろいろ調べて作者に問い合わせたのだという。

比喩に満ちた詩のような文章はとても味わい深く
読み飛ばしたりさせてくれなかった。

本物の教養を感じさせられ、ちょっと背筋を伸ばしてしまった作品だった。





「人生にはふたつだけ、愛すること、そして死ぬこと」


作中に出てくる
「世の中は地獄の上の花見かな  小林一茶」
一茶の俳句もちゃんと読んでみようかと思わされた。



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nobuko fj
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