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2024年8月の記事一覧

あとがきはまだ

渡辺祐真さんという書評家が選んだ俵万智さんの選歌集である。 解説付きである。 俵さんはもう九冊も歌集を出しているのだという。 タイトルは 人生は長いひとつの連作であとがきはまだ書かないでおく という短歌から取られたそうだ。 読んでいない歌集もあったので 今回良かったと思った歌をいくつか。 タンポポの綿毛を吹いて見せてやるいつかお前も飛んでゆくから タンポポの綿毛を吹いてやったことはあるけど、こんなふうに思ったことはなかった。 明け方の錯覚たのし一歳の我が隣に寝てい

ある儀式によって、他者の夢の中に入り込めるようになってしまう少年少女の話。舞台はロンドン。 三部作の、これが第一作め。 他者を傷つけることを何とも思わない敵役の少女が現実でとらえられるが、終わりにならなそうな気配である。

言葉の還る場所で

詩人と歌人のそれぞれの分野・作品に対する思いなどが語られている。 どこにでも住めて、引っ越したその日のうちに知り合いを作れるという俵さんのコミュ力はすごい。 谷川さんは基本東京育ちなので、その辺はムリそうだという。 朗読・リーディングについても語っていた。 現代短歌はあの、長く伸ばすような読み方をするのか とか。 谷川さんの講演は二度聞いた。 リーディング込みのものだった。 一度は、谷川さんがまだ73歳の頃 何故覚えているかというと 本人が、「74歳になったら、『ななじ

リメンバーミ―と日本ノ霊異(ふしぎ)ナ話

この本の中に、死者とそのまま暮らす村の話が出てくる。 死体もそのまま、腐ってもそのまま娘を背負っている母親とか。 死体ごと、死者と暮らす村。 そんな村で育った青年は、路傍の髑髏のつぶやきも聞こえるのである。 髑髏は目を貫くように竹が生えてしまって痛くてたまらなかったという。 そして、何故こんなところで野ざらしになっているかを語るのである。 髑髏が語る村は、何かお盆で戻ってくる仏さんを思い出させた。 リメンバーミ―の世界でもある。 よく人は二度死ぬとか言われる。 肉体の死と

ここに素敵なものがある

作者リチャードブローティガンは、芭蕉や一茶を読む人だったそうだ。 この詩集の中の作品は短いものばかりである。 例えばこんな詩 「ばつのわるい思い」なんて、ずいぶん久しぶりに聞いた。 まるで「赤毛のアン」のマシューのようなシャイな人物のようだ。 表題の作品は NHK「理想的本箱」でも紹介された。 訳者の詩人中上哲夫さんの講演を、この前聞いたのだった。