シェア
「猫に未来はない」は、1971年の作品だ。 児童文学のような、エッセイのような、ということらしい。 大学の先輩が惚れこんでいた。 それなのに読んでいなかった。 私が長田弘を意識し始めたのは 新聞の日曜版に「黙す言葉」の連載をしている時だった。 切り抜いて壁に貼って自ら励ましていたこともあった。 そういう、ある種研ぎ澄まされたような詩の表現とは違って やさしい、温かみのある文章なのである。 とはいえ内容が明るいかと言うとそうとも言えない。 結婚したら猫を絶対飼う と決め
エレベーターのない団地の四階。 その、3Kの部屋を片付け、部屋を明け渡す。 新聞などの紙類はもちろん 亡くなった舅のスーツも沢山残り 布団や貰い物の食器や、鍋類、電化製品。 それを、いったい何往復すればよいのか。 業者に頼んだらいくらになるかわからない。 そんな経済的な余裕はない。 (せめてそのくらい残してくれたら良かったのに) というところから始まる物語。 部屋の中に誰かが侵入した形跡があったり ウサギの飼い主の本物は誰だ問題があったり 自分の実母とのあまりの違
アイルランドに実在する「アランモア島」が舞台である。 神話上の人物ダグザとモリガンの因縁の争いがこの島で起こり、 魔女モリガンは復活しようとしている。 この島には今でも魔法が生きていて 島の影のリーダーとして「嵐の守り手」と呼ばれている。 現代の設定だ。 主人公フィオンの祖父が「嵐の守り手」であるが、 少しずつ年を取り、記憶が混濁するようになってきた。 その頃フィオンが戻ってくる。 フィオンの父親は救命艇の事故で亡くなっている。 祖父は、魔法の力で、記憶を閉じ込めた
古くからの人間関係のある島である。 「嵐の守り手」は世襲ではなく、いろんな人が勤めてきた。 それは一族にとっては名誉な事であり だから、相手を「力不足」だと貶めたりする人もいる。 その筆頭となっているのが エリザベス・ビーズリーという祖父の世代の人。 彼女は、最後はモリガンに騙されて フィオンを陥れようとする。 いろいろな謎解きがあり その謎を、一番の味方であるサムとシェルビーとともに いろいろなキャンドルを灯して 過去を見ることで乗り切っていくのだが。 モリガンには兄
この作品の中で 主人公たちは50歳。 老後だとか、親の介護とかそれから自分の体調不良など そういったことが起きてくる年代である。 この作品の中では、本人たちはまだ健康ではあった。 作者は、もう十年経った後の、 健康不安の主人公など書きたくないからこれで辞めるという。 主人公の三人は 企業の職員(モーちゃん) 中学校の教師(ハカセ) 市議会議員(ハチベエ) として働いているので、その三者の目線から 立体的に浮かび上がってくる現実を、我々は体験できる。 商業地区の再開発から