【超短編小説】細(その10)#140字小説
朝の光の中。「今夜も午前様でしょ」陰湿で鬱陶しい家人の繊細さが、ネクタイを整える私の秘める疚しさを突き刺す。破裂寸前の風船のように膨らみ切った疑惑を、宥めようと煩悶する家人を、一瞬憐れんでみたものの。「今夜は戻らない」喉に閊えた言葉を絞り出すと、家人の前に影の女が転がり出そうだ。
朝の光の中。「今夜も午前様でしょ」陰湿で鬱陶しい家人の繊細さが、ネクタイを整える私の秘める疚しさを突き刺す。破裂寸前の風船のように膨らみ切った疑惑を、宥めようと煩悶する家人を、一瞬憐れんでみたものの。「今夜は戻らない」喉に閊えた言葉を絞り出すと、家人の前に影の女が転がり出そうだ。