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パパにも迫り来る産後うつ。「孤立」を防ぐためにできること。




パパの産後うつのリスクはママと同じ!?

産後うつなどのメンタル不調で苦しんでいるのは、ママだけではないことはご存知でしょうか。
国立成育医療研究センターの研究結果によると、産後1年以内にメンタル不調のリスクがあるパパは11%であり、ママと同程度のリスクがあります。

今やママだけでなく、パパにも起こりうる産後うつについて真剣に考える必要があります。


パパの産後うつの原因を考える

① 社会の問題

ママの産後うつや少子化の問題が注目される中で、パパの育休推進が社会的なトレンドとなっています。
政府はパパの育休取得率を2025年までに50%、2030年までに85%とする方針を示しています。
大手企業では育休取得率の公表が義務化され、ますますパパの育休取得が推進されるでしょう。

しかし、パパの育休取得の推進だけが先行し、パパに対する支援が不十分であることが問題であると思います。

平野翔大先生が著書で指摘されているように、育休取得のブームはパパの主体的な行動というより、女性の産後うつや少子化などの社会問題を背景にした受動的なものです。

パパ達が育休を取りたい、取らなくてはいけないと自ら動いた訳ではなく、ママ達が大変なのでパパがんばれと言わんばかりに、パパの育児参画を社会から求められた結果なのです。

社会は支援策もないまま数字だけをどんどん上げようとしています。

ママに対する産後ケアが充実している一方で、パパの支援策はほとんど存在しないのが実態です。
支援策もないまま育休取得率の数字だけをどんどん上げようとしては、メンタル不調をきたすパパが増えてしまうのは当然の結果です。


② 職場の問題

育休取得が当たり前になりつつありますが、いまだに育休を取得できない空気感がある会社もあります。
何を隠そう私も、職場の空気感から育休取得ができませんでした。

「出世できないよ」「帰ってきても居場所がないかもね」などのハラスメントも未だにあるみたいです。

一家の大黒柱であるべきと言う考えを持ったパパはまだ多く、職場から見放されてしまうかもしれないと言う恐怖感は計り知れません。

まだ男は仕事、女性は家事育児という文化が根強い日本社会に置いて、長期の育休取得中には「自分は何をしているんだろう」という虚無感や焦りを感じることもあると思います。
特にSNSなどで、仕事で活躍する同世代のビジネスパーソンを見て、焦りやギャップを感じてしまうこともあるでしょう。

私自身もキャリアブレイクを取得した最初の1ヶ月は、活躍している同世代を見て、「自分は仕事せず何やっているんだろう」と焦ることが何回もありました。
(今は吹っ切れて、育児だけの貴重な時間を楽しんでます)

ママ達はマミートラックと言う言葉にあるようにキャリアアップと出産、育児が同時期にあるという問題に直面してきました。
パパの育休取得は女性の追体験とも言われるように、パパ達も同様の問題に直面していると考えられます。

もちろん育児は育休終了と共に終わる訳ではありません。むしろ本番です。
育休明けにも、ママの育児の負担をパパも肩代わしつつ仕事量はそのまま。
それではパパが破綻してしまいます。


③ 妊娠、出産への関わり方の問題

産婦人科医として声を大にして言いたいです。
妊娠、出産を自分事のように捉えているパパが非常に少ないです!

妊娠、出産は二人で乗り越えるべきイベントなんです!!
そのためにはまず妊娠、出産について知識をつけることが重要であると考えます。

実際にこんな会話日常茶飯事です。

(夫)妊娠わかった途端に家事疎かになってるんじゃない?
→つわりでめちゃくちゃしんどいんです!

(夫)え!!今日から入院??しかもいつまでかもわからない!?
→切迫早産など急な入院や長期の入院は妊娠中つきものです!

(夫)え!もう産まれるの!?準備してないんだけど!
→いつ産まれるかなんてわかりません。5%くらいは早産になります。

妊娠についてはある程度勉強し知識をつけ、奥さんに共感できるようになって欲しいです。
そのために出来ることとして、例えば妊婦健診に同席してエコーを一緒に見たり、医師や助産師の話を聞くだけでも違います。

なぜ自分事のように考えることが必要なのか?
それは、気持ちや知識において、奥さんとの間にギャップができてしまうからです。

(妻)つわり、お腹の張り、腰の痛み、、、
私はこんなに大変な思いをしているのにわかってくれない。

(妻)出生前検査や無痛分娩どうしようか。
大事な話し合いなのに夫は仕事ばかりで忙しそう。自分一人で決めるしかないか。

そんな状態で妊娠生活が過ぎ、育児が始まったらどうなるでしょうか。
奥さんからは見放され、次に述べる家庭からの孤立と言う問題が生じてしまいます。それはすなわち産後うつのリスクです。


ここまで旦那さんばかり責めてしまいましたが、医療機関側にも責任はあります。
両親学級に参加する父親が増えてきている中で、話の内容は母親メインのことばかりです。
旦那さんは、抱っこ、沐浴、おむつ替えの仕方など実践スキルだけを教えられ、本当に大切なことが教えられていません。
パパが妊娠期から関わることの大切さ、パパの産後うつの問題など。
パパの育児が当たり前になりつつある世の中で、医療機関側の教育も変わらなくてはいけないと思います。


④ 家庭の問題

妊娠、出産に関わってこなかったパパは、いきなり育児からスタートになります。
スタートラインからママとズレがある状態から始まってしまうのです。
ママは約40週間という妊娠生活をしてきたのですから、経験や思い入れが違います。

ここでも知識が重要になりますが、産後ママの辛さやリスクを知らない場合には、積極的に家事や育児をしなくてはいけないという自覚が芽生えません。
取るだけ育休なんて言葉があるくらい、まだまだ旦那さんの育児に対する当事者意識は低いのかもしれません。
いない方がマシと言われてしまい家に居場所がない。
産後クライシスが家庭をおそい、パパの家庭からの孤立が始まってしまうのです。

⑤ コミュニティーの問題

長期の育休を取った人なら共感してもらえると思いますが、平日に公園や子供の習い事に行っても、まだまだママが多いです。
私も今は慣れましたが、最初の頃は居心地の悪さを感じてしまうことが多かったです。
ママ同士で話しているのを見ると羨ましくも思います。

育児の大変さを分かち合うって、心の健康にとって本当に大事なことです。
そんな機会がパパにはない。
コミュニティーが作れず孤立は続き、うつ病を発症してしまうのです。


パパの産後うつを防ぐためにできることを考える

ママの産後うつでも話しましたが、「孤立」を防ぐことが、パパの産後うつを防ぐためにも最も大切だと思います。


では孤立しないために何ができるのか?
まずは旦那さんが個人でできることを考えます。

家庭からの孤立を防ぐために、ママから見放されないことが大事になってきます。
そのためには妊娠期からママに関わること。
妊娠について学び、自分事のように考えること。
そして、育児のスタートラインに一緒に立つためにも出産には立ち会うこと。
このNoteでは、妊娠期からのパパの育成を目指し情報を発信し続けようと思うので、是非読んでもらいたいと思います。

次に、育児を手伝うと言う考えを捨て、自分事のように家事と育児に向き合うこと。
そのためには産後ママについての知識をつけること、育休取得が必要になってくると思います。

自分の職場では、育休は前例がないと言う人もいるかと思います。
そんな方にはファーストペンギンになれ!という言葉を送りたいです。
私自身が言われ勇気づけられた言葉です。
氷の下は何があるかわからない、でもひょっとしたらたくさんのご馳走があるかもしれない。
初めに飛び込むのは勇気がいるけど、一匹飛び込めば次々と飛び込んでいく。

自分自身が育休を取ることで、次いで出てくる人がいるはずです。
自分の小さな一歩が職場の雰囲気を変え、大きな一歩になるかもしれません。
職場での理解者が増えてくれば、孤立を感じることは少なくなると思います。

そして新たなコミュニティーに属すること。
なかなか近所付き合いでパパ友を作ることは難しいですが、オンラインでの繋がりなら作れると思います。
私が所属したオンラインのパパコミュニティーを紹介します。
育児の大変さや素晴らしさを分かち合え、大切な繋がりとなりました。


個人レベルで出来ることを話しましたが、本当に辛い時に頼れる場所を作る責任は社会にあります。
パパが育児と仕事を両立出来るような職場や制度作り、パパのメンタルフォローや支援策などなど課題は山積みですね。

パパの支援が当たり前の世の中になることを、願って止まないです。


まとめ

① パパもママと同程度のメンタル不調のリスクがあります。

② パパの育児参画に対する支援なき推進、職場の理解不足、パパの妊娠期からのママへの関わりの低さ、育児家事の当事者意識の欠如、コミュニティーの所属がないことなどが、パパの産後うつのリスクかもしれません。

③ パパの産後うつを防ぐためには、孤立を防ぐことが大事です。妊娠、出産について学び当事者意識を持ってママに接することや、育休取得、新たなコミュニティー作りがキーになってくると思います。

④ パパの支援が当たり前の世の中になるよう、社会も変わる必要があります。

2024/9/6時点のエビデンスを元に作成しています。

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